A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

驚愕の日本サイケデリック秘宝発見物語~Be-2(ハーツヴァイス)と及川禅の世界

2013年01月20日 00時21分53秒 | 素晴らしき変態音楽


先日D.D.Recordsの話題でTwitterで盛り上がった時にレコード棚で見つけたソノシートが表題のBe-2(ハーツヴァイス)の「やさしさ」だった。不思議なのがどう考えても80年代のものなのに同封してあった「及川禅の世界」というフライヤーは最近のもので2008年のライヴ・スケジュールが書いてある。このソノシートをいつどこで入手したのか判らず「これ何時のものか判りますか?」とツイートしたところ「80年代当時の作品。及川さんがデッドストックを販売していたのでは」との返信。そこにBe-2のCD+おまけが及川さんのサイト「及川禅の世界」で販売されているとの情報も添えられていた。陰猟腐厭→D.D.Records→Be-2という80's地下音楽水脈紀行に心が震えつつ早速「人類生存可能最小単位」とタイトルされた限定特殊ボックスをオーダーした。

Be-2の名前は当時「宝島」「フールズメイト」といったニューウェイヴ誌でしばしば目にした。1stソノシート「Be-2」もレコード店で見たことがある。だが音を聴いたのは1983年リリースの「Case Of Telegraph Product 2」が最初だった。EP-4、すきすきスウィッチ、アレルギー、AUTO-MODなど癖の強いバンドに交じって収録された「CINERARIA」という曲はそのシンプルさと静謐さ故に逆に目立っていて印象に残った。しかしヴァイオリンの練習曲のような小品1曲では彼らの全体像は掴めなかった。





Be-2はZEN OIKAWA(G,Per,Tape)とPSYCHO(Violin,Tape)の男女デュオ。"テープループやスライド、ヴィデオ等を多用したコンセプチュアルなパフォーマンスを展開:ユニークなトータルアートを提供している"(「Case Of Telegraph」クレジットより)。2ndソノシート「やさしさ」にはイーノの環境音楽やロバート・フリップのフリッパートロニクスを思わせるゆったりしたアンビエントサウンドが収録されている。Twitterのやり取りでPSYCHOが私の大学のサークルの後輩の友人のお姉さんだった(平たくいえば他人だが)というちょっとした縁も判明。もう一方のZEN OIKAWA=及川禅の経歴は知られざる日本のサイケデリアの人生遍歴である。

70年代カルトバンド、「スペース・マンダラ」で年間100本ライブをこなし、インドのゴアに住んでライブ。フルムーンの夜は必ずライブ。ヒッピー。80年代東京「Be-2」では長髪をばっさり切りテクノカット。ニューウエィブでインディーズ。美術館、ギャラリーで映像と演劇的パフォーマンス。その後、ロス、シカゴ、ニューヨーク、シドニー、、音楽仲間を辿って、演奏三昧。30代はレコード会社でディレクター~プロデューサーに。 縁あって宮崎駿さんと久石譲さんとスタジオ・ジブリで5年間音楽創り。日露合作映画「おろしや国酔夢譚」で日本アカデミー音楽賞受賞。いろんなアーティストのCDも創ってみたが、、、やっぱり自分のやろうとしていた音楽こそが今の世界に必要!と思い起こし、演奏活動再開。2000年からライブ、作曲と自分のための音楽復活!「サイケデリック・ソロ・ギター・ワークス」で、今、思うことは、、、、「生きてるうちは、ギターを弾き続け世界中のみんなと喜びを、わかちあいたい」
MUSIC- LOVE- PEACE- FREEDOM- HAPPINESS
Color-Music HPより抜粋)

スペース・マンダラというバンドは数ある日本ロックヒストリー本にもジュリアン・コープのカルト本「ジャップロックサンプラー」にも登場しないが、インドでヒッピーとは本格的なサイケデリックバンドに間違いない。ヒッピーがニューウェイヴに触発されて髪を切るというのは東京ロッカーズやP-Model、ヒカシュー等日本ニューウェイヴ聡明期のバンドと同じである。Be-2が美術館、ギャラリーでパフォーマンスしたことは限定ボックスに封入された当時のフライヤーでも明らか。「SCANNING POOL」「SPOON」と題された映像と音楽のジョイント・パフォーマンスでビデオ作家と共演している。対バンは立花ハジメ、ヒカシュー、EP-4、スポイル、ヴァージンVS、LIBIDOなど当時ファッション/アート的な活動をしていたアーティスト達。Be-2解散後は「ギター・オブジェ」やギターシンセとビデオデッキを使った「ZEN-TRONICS」というビジュアル・ミュージック・パフォーマンスを展開。「ギター・オブジェ」は大竹伸朗のダブ平の元祖そのもの。80年代半ば~90年代プロデューサー活動を経て2000年から演奏活動を再開。「サイケデリック最後の伝道師」としてロック/トランス/アンビエント/テクノ/ノイズ/即興/ダンス・映像音楽などジャンルを横断した幅広い活動を続けている。静岡在住で日本各地の野外フェスや音楽祭に出演。スティーヴ・ヒレッジやマニュエル・ゲッチングに勝るとも劣らない強烈にサイケデリックにトリップするギタープレイには驚愕する。こんな凄い音楽家に誰も言及しなかったことは日本ロック界の盲点といえる。






「人類生存可能最小単位」は12曲収録CDRと「やさしさ」ソノシート、数々のオブジェ、ポストカード等が封入されたまさにコレクターズアイテムと呼べる豪華盤。収録曲の半分はPSYCHOとのデュオ、半分は及川のソロですべて1982~84年の録音である。この時代に現在のアンビエント~トランスミュージックと変わらない先駆的なサウンドをクリエイトしていたことは驚きである。当時の共演者達が解散/路線変更していく中、音楽活動開始から40年に亘ってぶれない活動を続ける及川の歴史は灰野敬二にも匹敵する日本ロック史の隠された広大な水脈といえるだろう。それを掘り当てたことは何という幸運だろう。偶然の連鎖が生んだ輝かしい発見に違いない。


及川禅CDオンラインショップはコチラ

知られざる
サイケ仙人
見つけたよ

<及川禅ライヴ・スケジュール>
1月26&27日(土・日) 千葉県館山白浜フラワーパーク 安房音楽祭ナチュラルスマイル
5月17~19日(金~日) 静岡県伊豆銀河キャンプ場「ダンスオブシバ




コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする