A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

阿呆船/愚弁/水晶の舟/Guignols Band@高円寺 ShowBoat 2013.1.14 (mon)

2013年01月16日 01時28分07秒 | 素晴らしき変態音楽


deep inside
阿呆船
愚弁 (谷口和仁 うた・からだ / 狩俣道夫 fl.ss.vo / 北 陽一郎 tp / 石塚俊明 drs)
水晶の舟 ( 紅ぴらこ g.vo / 影男 g / 松枝秀生 b / 原田淳 drs )
Guignols Band (福岡林嗣 vo.g / 浦邊雅祥 as. etc / 諸橋茂樹 drs. Per )

昨年末に陰猟腐厭(以下陰猟)のメンバー原田淳氏にメールを送った。30年前に入手した陰猟のソノシート「妥協せず」は常に心の何処かに引っかかっていた。19/JUKEやサボテンのように愛聴していた訳ではない。ターンテーブルに乗せることもそれほど多くなかったと思う。強烈な衝撃ではなく後からジワッとくるフラッシュバックのような音楽だった。ミニマルな繰り返しを淡々と奏でるバンドの演奏に学生運動家のアジ演説が絡む。エコーマシーンで変調された演説が嵐のように吹きすさぶ。ジャケットには「曲中に於けるアジテーションはコンサートの時のハプニングであり、彼らは陰猟腐厭とは一切関係ありません。」との注意書きがある。そんな音源を作品としてリリースしたのは何故だろう?と不可解な謎が浮かんだ。かなりの策謀家か相当の捻くれ者に違いない。実際に彼らのライヴを観る機会が無かったので謎は謎のまま月日が流れた。

陰猟のソノシートをリリースした横浜のロック喫茶“夢音”のレーベル「クラゲイルレコード」が1990年代末に様々なアーティストの80年代夢音でのライヴ音源を一挙に100枚CDRでリリースした。その中に陰猟も含まれていて興味を持ったが音質・内容や録音データもハッキリせず価格も通常のCDと同じなので買うのを躊躇した。2002年に出版されたドール増刊「パンク天国4」で陰猟のLPがリリースされていたことを知り驚くと共に猛烈に聴きたいと思ったが手書きジャケットの見るからにレアなLPで聴くどころか現物を見ることも適わなかった。

陰猟の名前も忘れていた昨年春何気なく見たキッドアイラックホールのスケジュールに陰猟の名前を発見しおおおっ!と興奮し早速予約。7月7日「ドキュメント灰野敬二」の公開日だった。朝灰野さんの映画を観て夜陰猟とは完璧と楽しみにしていたが、前日岐阜の叔母の見舞いに行ったところ様態が急変し東京へ戻れなくなり断念せざるを得なかった。

以来陰猟がまた何処かでライヴをやらないかと頭の片隅にライヴハウスのスケジュールをチェックする日々。年も押し迫りなかなか巡り会えない状況に意を決して「幻のLPの音源を聴かせてもらえないか」と無理なお願いを原田氏に送った。年明け早々に返事がありOKとのこと。「1月14日に高円寺でライヴがあるのでそこで手渡しも可能」と添えられていた。音が聴けるだけでも昇天モノなのにライヴが観れるとは!と狂喜乱舞。原田氏は水晶の舟のドラムとして出演、対バンはOverhang Party~魔術の庭の福岡林嗣氏、浦邊雅祥氏、狩俣道夫氏、石塚俊明氏と何度も観たことのある蒼々たる顔ぶれ。特に水晶の舟と浦邊氏はここ5年くらいご無沙汰している。陰猟との縁から地下音楽家の響宴に導かれるとは何と運命的な。。。。

Inryou Fuen - Dakyosezu


ご存知のように当日は東京は大雪で交通網が麻痺。無事辿り着けるか一抹の不安があったが中央線に乗り込む。案の定電車は断続的な運行で高円寺に着いた時にはとっくに開演時間を過ぎていた。ぐしゃぐしゃの雪道を四苦八苦して歩きショーボートに到着。雪など知らぬが如くいつものように看板が出ていて階段の下には受付の女性が座っていた。外界と遮断された地下の秘密倶楽部へ足を踏み入れる。

ステージにはヒョロッとしたギタリストとドラマー。酔っ払ったようにふらつきながらチューニングの狂ったギターを掻きむしり破調の歌を唄う。時折割って入るドラムの不定形なフィルインが狂気の道化師の踊りに祝祭色を加える。阿呆船は以前は元リザードの塚本カツ氏や元裸のラリーズ・不失者・割礼・静香の三浦真樹氏が在籍したバンド編成だったが昨年メンバーが脱退し解散した筈。この日の出演者に名前があり何者かと興味を惹かれた。その正体はVo.Sax.Gの鈴木峻氏と女性ドラマー栗原優嬢のデュオだった。バンド時代の阿呆船は観たことはないがPSFのコンピ「Tokyo Flashback」に収録された「枯葉」の気狂いカヴァーが印象的だった。それを継承しつつさらにパーソナルな色を濃くした演奏には故・金子寿徳氏に通じる廃墟の美学がある。


(撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

続いて愚弁。メンバーはともかくこの名前には覚えがあった。2004年8月27日高円寺20000Vでの狩俣道夫氏のバンドBINARY SCALE主催企画に灰野さんと対バンで波流乱満という女性ギタリストとのデュオで愚弁=谷口和仁氏を観ている。波流乱満のユニークなギターと横で独特の爪先舞踏を踊る谷口氏のパフォーマンスが印象的だった。実に8年半ぶりに観る谷口氏は鍛え上げた筋肉質の痩身も素晴らしい柔軟な舞踏と止めどなく流れ出す言葉が呪術的な世界を描き出し、卓越したハードコアジャズを展開するベテラントリオの演奏を異次元にワープさせる存在感に満ちたものだった。印象的な爪先の動きにも心奪われた。先日のグンジョーガクレヨン園田氏の舞踏の求心力にも痺れたが「踊り」「からだ」の持つ無言の説得力には感心するばかりだ。



水晶の舟は2000年代前半灰野さんとの対バン・共演で何度か観た。当時は紅ぴらこと影男の二人以外は流動的でドラマーがいたりいなかったりその時々で形態が異なる"高円寺の不気味なサイケデリア"という印象だった。最後に観たのは2006年1月26日吉祥寺Forth Floorでの灰野さんと金子寿徳氏との対バンだった。その頃先述したPSFコンピに参加し海外で高い評価を得て海外ツアーを何度も行い日本サイケデリック界の新世代としてカルト的な人気を誇る。長尺の曲2曲のステージだったがゆったりした美しいメロディが徐々にスケールを増して幽玄なハルシエーションへ導くドラマティックな展開は素晴らしい陶酔感を醸し出す。私が観た頃はドラムはテールという人が多かったがHPのバイオによれば2005年頃から陰猟の原田氏が参加している。そのバイオによると結成間もない1999年ドラムにMEWが参加したとある。MEW氏は昨年私が参加したアルトー・ビーツのワークショップの主催者である。またそのワークショップで出逢い昨年12月"マサカー繋がり"の一端を成したユミ・ハラ・コークウェル・セッションのベーシスト浅野淳氏と原田氏は20年前に同じバンドで活動していたという事実も判明。まさかマサカーと陰猟が繋がるとは。。。。恐るべし東京地下シーン。水晶の舟の活動歴には他にも有名無名の地下生活者の名前があり水脈を辿るには好都合である。



最後に福岡氏+浦邊氏+諸橋茂樹氏(魔術の庭)による新ユニットGuignols Band。魔術の庭は昨年10月に新大久保Earthdomで観たが、浦邊氏の演奏を観るのは2006年4月28日六本木SDLXでの灰野さん+高橋幾郎とのトリオ以来。その1年後に新宿裏窓で飲んでいるのを見かけたがライヴは7年ぶりである。何を始めるか判らない不敵な笑みはそのまま。セッティング中からコラージュノイズを流し浦邊氏が鼓笛隊のようにスネアを叩きながら客席に乱入、テーブルを蹴り倒したり脚立を振り回したりハプニング的なパフォーマンス。福岡氏はパーカッションを叩いたりテーブルギターを金属で擦ったりノイズを奏でる。Overhang Partyの1stアルバムでの即興ノイズ演奏を彷彿させる。そのまま行くのかと思ったら途中でマイナーコードのギターストロークで哀感溢れる歌を唄う。浦邊氏の"気配"と呼ぶしかない殺気漂うアルトと諸橋氏の非リズム打撃音。最後は浦邊氏が引き裂くようなギターを奏で福岡氏の歌と拮抗した亀裂を産み出す。これが初ライヴで今後も継続活動して行くそうだ。流石の手練による即興ノイズと哀愁歌謡の融合は地下音楽の芳醇な果実に違いない。



陰猟に始まった無限回廊の先には旧友に再会するような眩しい宴が待っていた。

集まった
陰猟所縁の
幻術者たち

雪でお客さんがいないので出演者が吸うタバコの煙でもうもうとしていて実はかなり辛かった。地下の住人にタバコ好きが多いのは必然なのだろうか?




コメント
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