A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

灰野敬二withやくしまるえつこ&菊地成孔@東高円寺UFO CLUB 2013.1.27 (sun)

2013年01月29日 01時49分39秒 | 灰野敬二さんのこと


【U.F.O.CLUB 17周年記念 灰野敬二ワンマンライブ】
LIVE:灰野敬二 [ゲストミュージシャン: 菊地成孔, やくしまるえつこ]

19日にDJ灰野敬二としてのイベント出演はあったが演奏家としての灰野さんの2013年初ライヴ。昨年12月発表と共に大きな話題になり早々にソールドアウト。DCPRGを始め様々な音楽ユニット及び執筆家として八面六臂の活躍をする菊地成孔と相対性理論等のヴォーカルだけではなくイラスト・朗読など幅広い芸術活動でサブカル系の圧倒的人気を誇るやくしまるえつこ。世代の異なるふたりのポップ・アイコンとの共演が話題にならない筈がない。それぞれイベントでの対バンはあったが四つに組んでのガチンコ対決は初めて。楽しみな一方でふたりの高い知名度と個性の強さが灰野さんの世界と相容れるのかどうか一抹の不安もあった。

二日連続のU.F.O. CLUB。開場40分前に行きギリギリロビー内の列の最後尾に入れた。私より後の人は寒い戸外に並んでいる。前日よりも客足が早いのはやくしまるがトップに出るからだろうか。男性客が多くキノコホテルの実演会を思わせる。前日同様最前列を確保。この日はDJがおらず意図的に無調の電子音楽が流れている。その中で開演まで1時間じっと待つのはある意味苦行。お一人様の客が多いのか話し声も殆どないシビアな空間だった。開演時間になると灰野ライヴでお馴染みのヴァイオリンのSEに変わる。カーテンの向こうに人の気配がする。

15分後カーテンが開く。左にPCを前に座ったやくしまる、右に譜面台とギターを持った灰野さんが立っている。灰野さんの微弱音のギターと呟くような歌とやくしまるの聴き取れない囁き。手にしたdimtaktが光る度にノイズが発せられる。灰野さんが譜面を覗き込んでいる。ふたりが呟き歌っているのはやくしまる作の詩(物語?)らしい。♪~何故かネコとカエルが多い~♪♪~3分の2をお返しします~♪といった言葉が聴き取れる。深いリバーヴの海に沈み込むギターは波のように次第にうねりを増しやくしまるの電子ノイズと重なり合うが爆音には至らず再び沈殿する。折り重なる波間に溺れるまま深海魚に飲み込まれるように20分のセットは終了。両者の世界がどちらも遮蔽されることなく共存した演奏は見事という他ない。



続いて菊地成孔とのデュオ。DCPRGでは指揮とサンプラー担当なので菊地のサックスを聴くのは久々。元々はテナーだが今回はアルトを吹く。ファッション誌にモデルとして登場する彼らしくU.F.O. CLUBには珍しくシャレオツな服装。やくしまるのいた位置にマイク一本立てて演奏。灰野さんはギター。オクターバーをかけたギターと流暢なサックスからスタートするが、すぐにギターが鋭く切り込み高密度の爆音セッションに突入。菊地は音階の上から下まで自在に駆け巡るプレイ。美しく澄んだ音だからギターがどんな轟音で迫ろうが埋没することなく屹立している。「解体的交感」での阿部薫と高柳昌行の集団投射を思わせるお互い一歩も引かないピーンとした緊張感に満ちた演奏だが"1+1=10"に拡張された交感は単なるセッションを遥かに凌駕した魂の絡み合いそのもの。灰野さんのギターが次々表情を変え演奏の色彩を変化させるが、それに歩み寄らずかと言って離れもせず見事にリアクションする菊地のプレイが素晴らしい。彼が優れているのはどんなに激しく演奏しても安易なフリークトーンに走らず一音一音丁寧にフレーズを紡いでゆくことである。今まで何度か菊地のサックス演奏を観てきたがこの日ほど激しく吹き捲くるのは2009年山下洋輔トリオ復活祭ゲスト出演時以来かも。激しいバトルは60分にも亘った。



最後に灰野ソロ。照明を落としハーディーガーディー~エアシンセ~ブルガリ~ギター~ヴォイス・パフォーマンスという流れで灰野ワールドを90分に亘って繰り広げる。ShowBoatでのワンマン・ライヴを短い時間に凝縮したようなステージ。セッションの時から気がついていたがU.F.O. CLUBの音響は素晴らしい。アコースティック楽器の微細な生音から耳を圧する爆音までどんな音も澱みなくクリアに再生する。特に灰野さんが産み出すサウンドはどんなに重厚なノイズの壁であっても聴き手を優しく包み込む音だから会場の音響の善し悪しが重要な鍵になる。今まで意識したことはなかったがU.F.O.のPA機器の性能及びエンジニアの腕は都内のライヴハウスではピカイチではなかろうか。終演後灰野さんも音の返りが良くてとてもやり易かったと満足げな様子だった。


(撮影・掲載については出演者の許可を得ています)

2013年灰野さんの初ライヴは3つの場面がそれぞれ違った魅力に輝いていて一粒で3度おいしい素晴らしい夜だった。

やれること
やってみようよ
この一年

前日にムッシュかまやつを観た話をしたら「今度共演したいな」と灰野さん。ライヴハウス関係の方やプロモーター/オーガナイザーの皆様、ご検討をなにとぞ!!!

<灰野敬二ライヴ・スケジュール>
2月上旬 スペイン、ポルトガル・ツアー(判明した公演のみ掲載)
-2.3 (日) La Casa Encendida, Madrid, Spain ソロ
-2.5 (火) Sala dos Espelhos do Palacio Foz, Lisbon, Portogal  ソロ
-2.8 (金) Tanned Tin 2013, Teatre Principal, Plaza Paz, Castellón, Spain ソロ

2.23 (土) 六本木SuperDeluxe ギャスパー・クラウス「序破急」リリース・パーティー
出演:ギャスパー・クラウス (cello)/石橋英子 (vo,pf)/西原鶴真 (薩摩琵琶)/SachikoM (sinewaves)/ジム・オルーク/友川カズキ (vo,gt)/灰野敬二 (gt,vo)/レナード衛藤 (和太鼓)/梅津和時

3.11 (月) 代官山 晴れたら空に豆まいて Flags Across Border 20130311 プロジェクトFUKUSHIMA!自主連動企画 vol.ii 3.11後の世界、音楽の虹の橋
灰野敬二×スガダイロー

3.17 (日) 六本木SuperDeluxe 灰野敬二+ジム・オルーク+オーレン・アンバーチ
コメント (3)
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