A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ロボットが歌うノイズ歌謡~非常階段 starring 初音ミク「初音階段」

2013年01月14日 00時32分45秒 | 素晴らしき変態音楽


2009年の結成30周年記念30枚組BOX「THE NOISE」リリース以来活動が活性化している非常階段の最新コラボ盤「初音階段」が完成した。リリース元のU-Rythmix Records(ユーリズミックス レコーズ)はボーカロイド専門レーベル。コラボ実現の経緯はJOJO広重氏のコメントを待ちたいが何かとお騒がせの非常階段とバーチャルヒロインの共演は"NOISE"を新たなファン層に広げることは間違いない。

機械=ロボットが歌を唄うという発想は20世紀初頭サイエンス・フィクション(以下SF)がジャンルとして勃興した頃から既にあったと思われる。寡聞にして余りSFに詳しくないので初めてロボットが唄ったのがいつかは断定出来ないが、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックによるSF映画「2001年宇宙の旅」(1968)で人間に逆らったコンピューターHALが死(停止)の間際に歌を唄うシーンは象徴的である。



ピエール・シェフェールとピエール・アンリが1950年に制作したミュージック・コンクレートの代表作「ひとりの男のための交響曲」は人間の声だけを素材として作られている。ノイズの元祖=電子音楽に於いて"ヴォイス"への関心が初期段階からあった事は強調しておく必要がある。



電子音楽をポップシーンに適用したクラフトワークはヴォコーダーで変調したヴォーカルをフィーチャーした機械的なサウンドで世界的に大ヒット。その後イエロー・マジック・オーケストラやDEVOが「テクノポップ」として継承した。






80年代にはマシーナリーなヴォイスとビートはポップ音楽のひとつの要素となりエレクトロやテクノとは無関係なロックバンドもロボットを主題にした曲をヒットさせた。



1978年に登場したテレビゲーム「スペースインベーダー」のヒットは電子音楽であるゲーム音楽を一般に浸透させ、1983年のファミリーコンピューター、1990年のスーパーファミコンの登場で完全にお茶の間の必需品となった。



90年代のインターネットの普及によりネット上にバーチャルリアリティ=仮想現実が生まれその世界の出来事が現実世界を浸食する事となった。そこに生まれたのがボーカロイド(以下ボカロ)である。VOCALOIDのプロジェクトは「DAISY」というプロジェクト名で2000年にヤマハが開発。「DAISY」は「2001年宇宙の旅」でHALが断末魔に唄った曲名である。一般的にボカロというと美少女キャラクターを連想しがちだが、あくまで音声合成技術の事であり、アニメキャラは声に身体を与えることでより声にリアリティを増すという観点から作られたバーチャルアイドルに過ぎない。

▼初音ミクの正体


2007年に"発売"された初音ミク以降登場した様々な萌えキャラはコンピュータープログラマーが本質的にヲタクである事の証しだと言えよう。無償であればキャラクターの二次使用はフリーであるため無数の関連音源・動画が制作されYouTubeやニコニコ動画で提供されている。キャラを使ったCDやDVDが販売されている例も多い。「初音階段」のような正規の商品は権利者(ヤマハ)との契約の上発売されているが、アキバ系コミックショップ等で販売されている同人誌的作品に関しては事実上著作権無法状態と言っていいだろう。

ボカロへの各界からのラヴコールは発売当時から模索されてきた。音楽面のコラボとして読者の関心を呼ぶのはシンセの巨匠冨田勲とジャズの鬼才菊地孔成であろう。






歴史を辿ればボカロとノイズのコラボが登場するのは必然であり恐らく地下シーンでは既に行われていると思われる。しかしノイズの帝王=非常階段がコラボしたことはボカロおよびノイズにとっては記念碑的ランドマークと言えよう。肝心の音であるが最初の2曲緑魔子「やさしいにっぽん人」・じゃがたら「タンゴ」のカヴァーはノイズ音源をサンプリングした初音ミクトラック、3曲目広重氏の書いた詩をミクが朗読する「不完全な絵画」は両者対等のコラボ、ラスト「hatsune-kaidan」はノイズの嵐の中に防空サイレンを思わせるミクのスクリームが鳴り響くノイズ音響、と聴き進むにつれ非常階段色が強まる流れが面白い。ラインナップにはJUNKOさんや岡野氏がクレジットされているが数回聴いた限りでは絶叫もドラムも聴き取れなかった。近年の非常階段のライヴでは岡野氏の骨太ドラムが果たす役割が大きいのでこのCDに収録された演奏はむしろインキャパシタンツに近いという印象。ミクが電子音に過ぎないことを考えれば美川氏のエフェクター群に中にボカロをインストールしたPCが並んでいても不思議はない。



▼緑魔子の原曲



大いなる興味を惹くのは電子音合成で制作されたようなこのCDのレコ発ライヴが開催され生演奏で再現される事である。電脳(バーチャル)世界の現実(リアリティ)化という冒険的な試みであるが、ヲタの世界では二次元(コミック&アニメ)の三次元化(コスプレ)が普通に行われている訳で音楽の具現化は不可能ではあるまい。美川氏がアニメコスプレで登場する事は恐らくないと思うが蓋を開けてみなければ判らない。会場はヲタのメッカ=アキバなのでこのCDをジャケ買いしたヲタの皆さんも是非遊びに来て欲しい。

▼初音ミク最大のヒット曲らしい。ようつべやニコ動に様々な動画があるので検索いただきたい。



観てみたい
JUNKOとミクの
歌合戦

広重さんはヲタへのアプローチの重要性を判ってらっしゃる。流石である。

▼テレビで真逆のコンセプトのバンドが紹介されていた。これぞ正真正銘本当のヘヴィメタル。




コメント
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