A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

麗しのガールズ・ロック特集 Vol.5~21世紀の精神攪乱者たち

2012年05月19日 00時44分49秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界
最近昔のロックのノスタルジーに浸っていたので、気分も新たにYouTubeや海外の音楽サイトで見つけた女性中心のユニークなバンドを紹介したい。懐かしロックを振り返るのもいいけど、現在進行形のダイヤモンドの原石の発掘には堪えられない発見と喜びがある。


2:54(twofiftyfour)とはユニークな名前だが、ロンドン出身のColetteとHannah Thurlowの姉妹を中心とするバンド。Queens of the Stone AgeやKyussを好み、ロックやパンクの影響を見せるも、よりダークで独特の雰囲気を持つサウンドで知られている彼女たち。10代の頃よりギターを始めた2人だが、初めて制作したデモをインターネットで公開したのは、2010年のこと。それがきっかけで様々なアーティストのサポートに抜擢されツアーを重ね、昨年Fiction (The Cure、Crystal Castles)と契約し、『Scarlet』EPでデビュー。「You're Early」を先行ストリーム配信したところ、24時間で1万回再生され話題になる。Mercury 音楽賞受賞プロデューサーRob Ellis (PJ Harvey)と、ミキサーにAlan Moulder (Smashing Pumpkins、Nine Inch Nails)を迎えて制作された待望のデビュー・アルバムは、食べごろの「デンジャー」や「ビューティー」といった要素がふんだんに含まれている。その邪悪で妖艶なサウンドは、レーベルの先輩のThe Cureを彷彿させるギター・アンサンブルとパンクやオルタナといった使い古されたジャンルに収まりきれないスケール感を持っている。





メリーランド州のボルチモアにて、2004年に結成されたBeach Houseは、ヴォーカル&オルガン担当のVictoria Legrandと、スライド・ギターやキーボードなど最低限の楽器を操るAlex Scallyの美男美女によるUSインディー・ロック/ドリーム・ポップ・デュオ。日本でも、前作『Teen Dream』の収録曲「Zebra」が、映画『八日目の蝉』の劇中使用曲として使われたり、フジロック出演を果たしたりと、すでに知る人ぞ知る存在の彼ら。NME’s の“Best albums of the Year”トップ3に選出された前作から2年、4作目となるニュー・アルバム『Bloom』を発売する。コードやメロディひとつひとつの役割を尊重して作り上げたというアルバムについてVictoria は、「『Bloom』は旅なの。人生で得る様々な経験を反映している、つまりは置き換えることのできない、イマジネーションの力そのものなのよ。Bloom(花)って儚いもので、人生も同じなんだけど、どちらもそこに含まれる色や深みっていうのが、たとえ一時的なものであっても美しいのよね」と話す。正に現在満開(Full Bloom)の彼らの浮遊する幻想的なサウンドには中毒性がある。





アイスランドのフォーク、スカ・バンド、Of Monsters And Men。メンバーは、ヴォーカル/ギターNanna Bryndís Hilmarsdóttir、同じくヴォーカル/ギターRagnar "Raggi" Þórhallsson、ギターBrynjar Leifsson、ドラムArnar Rósenkranz Hilmarsson、ピアノ/アコーディオンÁrni Guðjónsson、そしてベースKristján Páll Kristjánsson。 楽曲「Little Talks」が、アメリカのシアトルやフィラデルフィアのラジオ局でも好反応を受け、ヘヴィー・ローテーションされた。各レーベルでの争奪戦になり、最終的に米Universal Republic が契約。本作での世界デビューを前に、SXSWにも出演済。今作『My Head Is an Animal』は本国アイスランドにて2011年9月にリリースされ、NO.1を獲得している。男女ヴォーカルの掛け合いに弾けるビートが楽しいお祭りバンド。ぜひライヴを観てみたい。



英米アイスランドのタイプの違った3バンドを紹介したが、いずれも現代ロック・シーンの新鮮な息吹を感じさせる期待のニューホープだ。世の中全体で女性の活躍が目立つ今、背筋を伸ばして堂々と”自分の音”を奏でる彼女たちが新世代のロック・シーンを牽引していくことに期待したい。

女たち
いつの時代も
輝いて

女子力の炸裂に男たちは振り回されっぱなしだ。
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キッチン・オーケストラ+広瀬淳二、高岡大祐etc.@六本木 Super Deluxe 2012.5.15 (tue)

2012年05月17日 00時26分57秒 | 素晴らしき変態音楽


ノルウェー出身の即興音楽集団キッチン・オーケストラが5日間に亘ってスーパー・デラックスで公演を行う。日本では無名だが2010年ノルウェー西海岸の都市スタヴァンゲルで地元ミュージシャン22人で結成され、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ、エヴァン・パーカー、キース・ティペットなどヨーロッパ即興界の重鎮と共演を重ねてきた新進気鋭のアーティスト集団。リーダー不在の回転体という形態のユニークなオーケストラである。今回はそのうち10人のメンバーが来日し、日替わりで日本のミュージシャンと共演を繰り広げる。招聘にはノルウェー大使館を始めヨーロッパの文化団体が協力している。理想的な文化交流スタイルである。

初日は毎月第2火曜日フリーチャージにて開催されているイベント「Test Tone」に出演。日本から鈴木學 (electronics)、広瀬淳二 (sax)、高岡大祐 (tuba)、Kelly Churko (guitar)、鈴木郁 (drums)が参加、入れ替わりでトリオ&カルテットで共演を繰り広げた。無料のイベントなので多数の観客が集まり入門編として最適だった。

第1部は鈴木學氏+トランペット+トロンボーンのトリオからスタート。鈴木氏の手製の電子楽器によるエレクトロ音響に自在に絡むホーン陣。とても気持ちいい。そこにベースが参加し、パルスビートを奏でる。二人のホーンは退場し、アルトサックス、広瀬氏、鈴木郁氏が登場、火花飛び散る丁々発止の演奏が繰り広げられる。広瀬氏のテナーはいつも通りアブストラクトなタンギング奏法から太く豪快なブローまで個性的なプレイ。初共演とは思えない息の合った素晴らしいインプロヴィゼーション。ここまで50分で第1部終了。



第2部はKelly Churko氏+女性トランペット+ベースのトリオでスタート。アヴァンギャルドなChurko氏のプレイに堂々と挑む女性トランペッターが見事。ドラムが加わりロック的なダイナミズムのある演奏に。Churko氏が退場すると高岡氏が登場。殆どチューバは吹かず、マウスピースを使ってのヴォイス・パフォーマンスが中心。ユーモラスな演奏に客席から笑いが起こる。ツイン・ドラムに女性トランペッターも参加し第1部とは違ったリラックスした演奏で50分。



日本人側の演奏が面白過ぎてキッチン・オーケストラとしての全体像は見えなかったがいずれのメンバーも柔軟性のある感性を備えたテクニシャン揃いであることを実感した。ミシャ・メンゲルベルク率いるICPオーケストラの初来日から30年。現在進行形のヨーロッパのフリー・ミュージック・シーンを象徴する珠玉の職人集団である。まだ3日間あるので観に行かれてはいかがだろうか。

5/17(木曜日)Morgan's Organ meets Kitchen Orchestra
Morgan Fisher + Nils Henrik Asheim DUO/Morgan Fisher + Kitchen Orchestra
チケット:予約 0円 / 当日 1000円 開場 19:00 / 開演 19:30

5/18(金曜日)ニューシャンバラデイ∞Kitchen Orchestra
出演:プリミ恥部、平岡 香純、白井多有、千住宗臣、朝日太一、植野隆司、長谷川真子、G10Z、大河原明子、KenOkami、メガネ、Mingo、東野祥子、BING a.k.a. TOSHIO KAJIWARA、MARUOSA、DJ 成浩一、and Kitchen Orchestra
チケット:予約 1800円 / 当日 2000円 開場 19:30 / 開演 20:00

5/19(土曜日)振動「PULSE」
出演:KITCHEN ORCHESTRA+永戸鉄也+鈴木ヒラク
スペシャルゲスト:パードン木村+菊地成孔 with HAIR STYLISTICS
チケット:前売り2800円 / 当日3300円 (ドリンク別) 
開場 19:00 / 開演 20:00

会場:
スーパー・デラックス
東京都港区西麻布3-1-25 B1F
Tel 03-5412-0515

北欧の
響きが光る
楽団員

自由っていいね!
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麗しのガールズ・ロック特集 Vol.4~バブル時代への道

2012年05月15日 01時01分34秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


今日ディスク・ユニオンの100円均一セールを漁っていたら懐かしいガールズ・ロックのCDを見つけて買い込んできた。なかなか素晴らしかったので、昨年3回に分けて特集したガールズ・ロックを再度取り上げてみよう。

スティッフ・レーベルから79年にデビューしたロシア生まれの女性シンガー、リーナ・ラヴィッチ。毛糸で編んだベールやシフォンのショールをまとい、ジプシーのようなファッション。時には蜘蛛女のようで、時には修道女のようにも見える。何通りもの声色の使い分けた歌唱力はドイツのニナ・ハーゲンとも共通する。実際にニナとは友人同士で「チャチャ」という映画で共演したこともある。



セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズとポール・クックが使っていたリハーサル・スタジオの上の部屋に住んでいたことがきっかけで1981年にデビューした3人娘。ストック・エイトケン・ウォーターマンとのコラボレーションにより「ヴィーナス」(全米1位)などのヒット曲を得たことで時代の寵児となった。日本ではバブル景気絶頂期の1980年代後半のディスコブームと時を同じくして大ブレイクし、「マハラジャ」などではバナナラマの曲がかかると「お立ち台」が満杯になるという現象が起きた。



ゴスロリの元祖とも言われるファッションで1980年代前半一世を風靡したグラスゴーの二人組ストロベリー・スウィッチブレイド。1984年「ふたりのイエスタデイ」が大ヒットし、日本でもアン・ルイス、ちわきまゆみ、戸川純などに影響を与えた。



1980年代末に登場しバナナラマのガレージ版と呼ばれたお茶目なロンドンのポップ・ロック・バンド5人組ファズボックス。ルックスを見れば分かるようにバブル時代を象徴するような弾けぶりが何ともサイケだった。



88年にBow Wow Wowに憧れてアメリカからイギリスへ渡った2人のカリフォルニア・ガールズと3人の英国人男性によるグループ、ボイス・オブ・ザ・ビーハイヴ。こちらもカラフル&キューティー。



今や忘れられているバブル時代だが、音楽シーンでも景気のいいムーヴメントがいろいろ起り華やかな時代だった。

あの時代
踊りまくった
ギロッポン

私は何の恩恵も受けなかったけどね。










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「灰野敬二/不失者~光となづけよう・第一章」@DOMMUNE 2012.5.13 (sun)

2012年05月14日 00時38分44秒 | 灰野敬二さんのこと


5月9日(水)にDOMMUNEにてUstream配信予定だった「灰野敬二/不失者~光となづけよう・第一章」語り:灰野敬二 合いの手:松村正人の再配信。ちょうどその時間にロシアでUstreamに対するサイバー攻撃が発生し、全世界的に接続障害が発生したためライヴ配信は出来ず、収録したものが当日夜に配信された。

DOMMUNE宇川直宏氏による経緯説明 via Twitter
< #DOMMUNE 緊急再配信の顛末>5.09当日の接続障害の原因は、ロシアのプーチン大統領就任に関するデモが(モスクワ経由の裏番組として)USTで中継されていて、その中継をプーチン派がDDos攻撃し、USTハンガリーのオペレーションセンターのサーバーをダウンさせた模様!→当日は灰野さんの念波でサーバがダウンし、闇を呼び覚ましたに違いないと一部で騒がれてましたが、真相はポリティカルな理由でしたwしかし、配信時間ぴったりに画面に動画が映らず黒い闇と静寂が訪れたことは、単なる偶然だとは思えません!滲有無!→なお、当日のロシアのDDos攻撃(分散型サービス拒否攻撃)については読売オンラインに詳しくレポートされています!必読DEATH!→「ロシアのサイバー攻撃とUstream、息詰まる戦いの結末は?」

私は当日は別の予定が入っていたので観る事が出来なかったが、読者のOZさんがこのブログの5/6不失者CDレビュー記事のコメント欄で詳細にレポートして下さった。

その番組が5月13日(日)19:00~録画再送信され、今度はじっくりと視聴出来た。番組の流れはOZさんのレポートに詳しいので参考にしていただくとして、言葉をひとつひとつ吟味しながら丁寧に話をする灰野さんの発言はまさに金言の連発だったので、思いつく限り語録を辿ってみたい。

「僕が求めるのはハードで繊細でキレがあるサウンド」
「本当にやりたいことがまだ出来ていない。でもちょっとずつ進んでいるからやり続けている」
「不可能だから楽しい」
「音楽が好きです」
「僕は曲が出来ると飽きちゃう。今回はちゃんと録音しておいてくれたからよかった」
「何をやるかではなくて誰とやるか、が重要。つまり信頼関係。自分の音楽が楽器が活かされるのは誰だろう」
「不失者(の練習スタジオ)は道場に近い」
「ほんとの意味でのポリフォニックなものをやりたい」
「こんなはずじゃない、といつも思っている」
「一音一音作っていきたいので、言葉もひとつひとつ話したい」
「即興は学芸会だから」
(還暦の自分に言いたいのは)「よくぞ生きているな。まだやっているぞ」
「僕は歌手です。歌が一番好きだから音楽が好きで楽器が好き」
「(将来の夢は)自分の一音一音を大切にするという事を意識した映画を作ること」
「視覚を、聴覚に、錯覚させていくような、ことを、考えています。混乱させよう、とか、そういうことではなく」
「パーカッションを始めたのは、観ることと聴くことが同時に出来るから」
「法政大学学生会館は遊び場だったから、やりたいことを全部やったらどんどん長くなっていった」

今回が第一章だから、第二章・第三章の配信も楽しみにしていよう。







灰野さん
音も言葉も
至高です

6月16日(土)に高円寺HIGHで映画「ドキュメント灰野敬二」の前夜祭をやるとのこと。私はその日の昼間アルトー・ビーツ(元ヘンリー・カウのメンバーの新ユニット)のワークショップに参加するが、夜は高円寺へ駆けつけたい。

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幻覚マイムの思い出~乞CD化!

2012年05月13日 00時33分34秒 | ロッケンロール万歳!


90'sヴィジュアル系バンドの幻覚アレルギーじゃなくて「幻覚マイム」。このバンドを知っている人はかなりの80'sインディーズ通だと思う。自己の作品は1986年に太陽レコードからEP「幻覚マイム」を1987年にトランス・レコードから12インチ・シングル「Butterfly」をリリースしたのみで、あとはいくつかコンピに参加した程度。サディ・サッズやアレルギーのようにメディアに大きく取り上げられることもなく、マニアックなファンの間で支持されたバンドである。メンバーは幽太郎(vo,g)、Bin(b)、Taka(ds)の3人。幽太郎君は1996年に本名の羽原裕太郎の名でプロペラというバンドを結成、メジャー・デビューしかなりの人気だったという。

1980年代半ば私が大学4年で就職も決まった冬に、どういう経緯か覚えていないが誰かの紹介で吉祥寺で幽太郎君に会い、自宅まで連れて行って好きなレコードやギター演奏を聴かせた。気に入ったようで次の練習の時試しにギターを弾いてくれと頼まれ、幻覚マイムのデモ・カセットを渡された。ヴォーカルに専念したいのでギタリストを探しているとのことだった。私は自分のバンドが解散し特に演奏活動をしてなかったのでいいよと応えた。

その時私は銀縁メガネにボサボサ髪にどてらを着ていたので「スタジオに来るときは出来るだけパンクかニューウェイヴっぽい恰好で」と釘を刺された。また翌年2月にヨーロッパへ卒業旅行に行く予定だったが、もしバンドに入ったら合宿があるので行けなくなるよとも言われた。何だかな~と思いながらカセットを聴くとギャング・オブ・フォーみたいな硬質なギターにエイリアン・セックス・フィーンドやジーン・ラヴズ・ジザベル風のネオ・サイケなメロディのポジティヴ・パンクで結構カッコいいなと感じた。

練習当日古いコンタクトレンズで充血した目をして黒いシャツにカシミアのコートを着込んで新代田のスタジオに出向いた。ベースとドラムの二人は如何にもロッカー然としたブラック・レザーに身を包んでいて、幽太郎君もメイクをして気合いが入っていた。2時間程一緒に演奏。完コピではなく自分なりにフレーズやエフェクターを工夫した。久々にマジでギターを弾いたので右手が切れて血が噴き出した。そんなに悪くないじゃん、と思ったが、あとで幽太郎君に聞くと他の二人が「全然別のバンドみたいだ」と不満だったらしく参加の話はなくなった。その数日後に中野Plan Bで彼らのライヴを観た。ギターがギブソン系のハムバッカー。私はアクリルボディのストラトだったのでそりゃギターの音が全然違う訳だと納得。トリオとしての一丸となった演奏は他者が入り込む隙がないくらい堅固なものだった。

それ以来彼らに会う事もなく、インディーズでレコードが出た事もロフトやラママで筋肉少女帯やアサイラムやYBO2などの名の知れたバンドと共演し熱心なファンを集めた事も知らないままだった。

ググってみるとさすがにwikiは無いがいくつかのインディー系ロック・サイトに紹介があり、結構高い評価をされている事がわかる。掟ポルシェ氏が新宿ロフトの30周年記念メッセージで書いている。『汗だくになるまでヘッドバンギングした幻覚マイムのラストライブが終わった後、客として来ていた同じく汗だくの大槻ケンヂさんに「カッコ良かったですね」と声をかけたら「これで終わりなんてもったいないよね」と残念そうに、でも充実感に満ちた笑顔で返してくれたこともあった思い出のライブハウス』。

私はどうしてもヨーロッパ一人旅をしたかったので加入出来なくて幸いだったのだが、彼らがずっと3人組で活動したことを考えると、色々セッションしてみてトリオが一番という結果に落ち着いたのかもしれない。






あのバンド
参加してたら
どうなった?

年寄りの昔話はこれでおしまい。お付き合いありがとうございました。
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贋作と再創作~フェルメール光の王国展@フェルメール・センター銀座

2012年05月11日 00時43分57秒 | アート!アート!アート!


先日銀座ヘ行く機会があったのでフェルメール・センター銀座で開催されている「フェルメール光の王国展」を観てきた。

17世紀オランダの人気画家ヨハネス・フェルメールの全37点の作品が一堂に会した作品展として話題になっているものである。GWという事もあり会場はかなりの人手で、この展覧会の為に制作された宮沢りえと小林薫による音声ガイドが聴けるヘッドフォンを耳に展示作品をゆっくり観て回る人が多かった。

もちろんオリジナルではなく監修者である分子生物学者の福岡伸一氏により"リ・クリエイト"という最新デジタル技術を駆使して蘇らせた作品である。ホームページの解説によれば"「re-create」とは、複製でもなく、模倣でもない。あるいは洗浄や修復でもない。「re-create」とは、文字通り、再・創造である。作家の世界観・生命観を最新のデジタル画像技術によって翻訳した新たな創作物である。"とのことである。

しかし!"リ・クリエイト"には「本物=オリジナル」のありがたみが全くない。所詮はやはり複製なのである。例えば油絵特有の絵の具の匂いがしない。美術展を観に行く理由はただ単にその絵画を鑑賞するだけではなく、本物にしかない「重み」を味わうことではないだろうか。例えそれが観る者の自己満足的な思い入れであっても。絵を見るだけだったら画集やCD-ROMやDVDで充分である。主催者のフェルメールの全作品を展示したいという熱意には敬意を払うが、お金を払って偽物を観せられるのには納得がいかなかった。

フェルメールは贋作事件で有名でもある。ハン・ファン・メーヘレンという男が敵国ドイツにオランダの至宝を売却したことが1945年に発覚して国を挙げての大スキャンダルになった。しかもメーヘレンはそれが自分が描いた贋作だと告白したのである。彼の手による贋作「エマオのキリスト」はオランダの美術館に過去最高額で購入されていたともいう。また1970年以降は度重なる盗難事件にも見舞われており、この類い稀な才能を持った画家の作品は幾多の試練を経験してきた。そんな伝説的な作品群であるから"再創作"による作品展というのが成り立つのだろう。

ロックやポップスではアマチュアによる「コピー=贋作」とプロによる「カヴァー=再創作」は別次元のものと受け止められる事が多い。それならば初音ミクなどボーカロイドによるカヴァーはどうなのか、というとそれはそれで別のジャンルと呼べる創作物だ。

美術の世界では森村泰昌氏による自らが有名な絵画や有名人に成りきるセルフ・ポートレイトは手法的には音楽で言えばカヴァーだが、森村氏のオリジナルな表現法として高く評価されている。

デジタル技術の進歩によりどんなものでもクローン的なコピーが可能な時代に本当のオリジナルを表現する事は難しくなった。コピペやリツイートにより本来誰の創作だったのかが限りなく不明瞭になっていく。



捏造と
贋作に満ちた
この世界

このブログだってどれが本物でどれが偽物なのか分かりませんよ!



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JOJO広重、穂高亜希子@渋谷 Bar Isshee 2012.5.8 (tue)

2012年05月10日 00時22分09秒 | 素晴らしき変態音楽


JOJO広重さんを最初に観たのはいつだったか記憶を紐解いているのだが定かではない。
初めて挨拶したのは2003年6月代官山クラシックスでJunkoさんとのデュオを観た時である。買ったばかりのMDで初めてライヴを録音したのがそのデュオだった。そのころ既に坊主頭にがっしりした身体で近寄りがたい雰囲気を持っていたJOJOさんに恐る恐る「相談があるので連絡先を教えて下さい」と声をかけたところ、快くメールアドレスを教えていただき感激した覚えがある。

同じ年の8月に吉祥寺Manda-la2でJOJOさん+故・小沢靖さん(不失者)+トシさん(頭脳警察、Vajra)のセッションがあるのをたまたまメルマガで当日知り会社を早退して観に行った。当時はTwitterなどSNSはまだなかったのだ。小沢さんが不失者以外でベースを演奏するのは初めて、という貴重なライヴだった。三つ巴の硬派なインスト即興に大いに感銘を受けた。

ソロで一番印象的だったのは2005年11月の東京大学駒場祭での野外ライヴだった。焼きそばやクレープの屋台が並ぶ中メイン・ステージに現れたJOJOさんは、それまで学祭で何度も揉めてきた思い出を語った後、轟音ノイズ・ギターに「生きている価値なし」「みんな死んでしまえばいいのに」「俺も死ぬから君も死ね」などという絶叫ヴォーカルを大音量で演奏し、平和ボケした大学祭の空気を暗黒の混沌に塗り替えた。隣で観ていたサックス奏者の浦邊雅祥氏がしきりに「ジョー!」っと掛け声をかけていたのを覚えている。学生有志の企画で開催された第1回のイベントだったが残念ながら第2回が開催されたという話は聞いていない。

その後もいろいろなイベントで非常階段以外のJOJOさんの演奏を年に数回のペースで観てきた。最後に観たのは昨年末新宿ピットインでの大友良英氏とのデュオだった。

非常階段での鬼畜演奏に比べ、ソロで歌ものを聴かせるJOJOさんはホントに気のいいおっさん(失礼!)という風情で、単行本「みさちゃんのこと-JOJO広重ブログ2008-2010-」としてまとめられた彼のブログやTwitterのつぶやきでイメージされる優しい雰囲気そのままである。非常階段ではいつも途中でギターを放り出して客席へ突入してしまうので、JOJOさんのギター・プレイを落ち着いて聴けるのも嬉しい。

今回はJOJOさんがプロデュースした女性アーティスト・コンピCD「日曜日のうた」で紹介された穂高亜希子嬢との2マン・ライヴである。私のライヴ友達には穂高嬢のファンが多く、皆からいいから聴いてみろと言われていたのでいいチャンスだった。案の定会場には熱心な穂高ファンの知人が数名来ていた。観客は10名程度で真正面でゆっくりと観ることが出来た。二人の椅子が並んでセットされているのでデュオをやるのかと聞いたら最後に少しやるとのことだった。

最初にJOJOさん。Bar Issheeは2度目の出演で、マスターのイッシーさんと昔のロックやプログレのレコード話が弾んだと言う。レナード・コーエンの「ハレルヤ」からスタート。生音に近いサウンドだったのでこの会場ではノイズ・ギターはやらないのかと思ったら途中でファズを踏み込みかなりの音量の歪んだギターを聴かせる。譜面台の歌詞の束からランダムに選びだして唄う。先週ライターの岡村詩野さんのラジオに出演した時、JOJOさんの女性の好みが昔から変わっていないことを指摘されたという。森田童子、佐井好子、エンジェリン・ヘヴィ・シロップ、Doodles、とうめいロボや穂高さんまで一貫してブレがない。そんな話をしながら森田童子の「淋しい雲」「逆光線」を、昨年名古屋で早川義夫さん(+山本精一氏)との共演の夢が叶ったと語り早川さんの「サルビアの花」を、自分の曲とコード進行が同じことに気が付き驚いたという山本精一氏の曲のさわりを、と次々カヴァーを披露。後半は新曲を含む自作曲を聴かせ、最後はINU(町田町蔵)の「メシ喰うな」に続けてオリジナル「神を探しに」という圧巻の流れで1時間強の演奏は終了。かつてJOJOさんを始めとするアルケミー・レコードの作品をメジャー発売したテイチクのディレクターが久々に連絡をくれたので年内には7年ぶりの新作をリリースするかもしれないとのこと。



続いて穂高亜希子嬢。フォーク・ギターで静かな弾き語り。とうめいロボの近藤千尋嬢に似た儚げながらしっかりした歌を聴かせるところがJOJOさん好み。その清浄なメロディと歌声は工藤礼子さんや渚にての竹田雅子さんを思い出させる。穂高嬢も2度目の出演だがBar Issheeはとても雰囲気が良く演奏しやすいと語る。お疲れの方もいるから短めに、と言いながらも新曲を含む1時間の演奏。皆がいいというのが十分納得できる素晴らしい演奏だった。今週土曜日には四谷喫茶茶会記で石橋英子嬢との2マンでピアノの弾き語り。昭和初期のムードたっぷりの古風な会場で聴くとまた違った魅力が味わえるに違いない。そういえばピーター・ハミルもギターよりもピアノの弾き語りの方が味があったなぁ。お時間のある方はぜひ足を運んでみてはいかがか。



そのままJOJOさんが加わりデュオ演奏に。森田童子の「みんな夢でありました」、続いてアンコールに穂高嬢のオリジナル「いつか」の2曲を演奏。穂高嬢の天使の歌声に絡みつくノイズ・ギターが聴く者を天上へ導くような極上のデュオだった。



美女と野獣
そのままかもね
今宵のふたり

4月のJAZZ非常階段が好評だったので9月に再び新宿ピットインへの出演が決まったらしい。さらに強力なゲストが参加するようなので大期待。3列目だけは避けて(笑)観戦したいと思う。4月のライヴCDと非常階段としての新作も合わせてリリース予定。ますます盛んなJOJOさん周辺の活動から目が離せない。
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灰野敬二+HIKO/ENDON/Dave Phillips etc.@新大久保 Earthdom 2012.5.6 (sun)

2012年05月09日 00時38分01秒 | 灰野敬二さんのこと



ENDON主催TOKYODIONYSOS 2012
初めてENDONを観たのは約1年前震災の2週間後同じEarthdomで開催された「Between Silences」というSutcliffe JugendやPainjerkが出演したノイズ系イベントだった。ステージにTVセットで壁を作り、凄まじい轟音ノイズとスキンヘッドのヴォーカリストの客をどつく暴力パフォーマンスが展開され、最後はTVを全て破壊しステージが瓦礫の山と化す、という傍若無人ぶりは、震災の後遺症が色濃く残る中、不謹慎極まりなく痛快なものだった。

ENDONはエフェクター・メーカーM.A.S.F.に関わっており、そのエフェクターを灰野さんが使っている縁で、昨年末のオールナイト・ライヴを観に来ていた。暴力ヴォーカル氏と知り合いENDONの初CD「ACME APATHY AMOK」をいただいた。その音は彼らのライヴそのもののノイズ/グラインドコア/ハードコアが混ざり合った超弩級の激音ノイズだった。その後もヴォーカル氏は灰野さんのライヴに現れ、TOKYODIONYSOS 2012への出演交渉をしていたようだ。

そのGW最終日のイベントには来日中のスイスのノイジシャンを加えた7組が出演。この前に目白で宮下省死さんの舞踏公演を観たので、最初のバンドJADOO は観れず、2番目のRUNZELSTIRN&GURGELSTOCKからの観戦。名前からてっきりデュオだと思ったらソロで、長髪の男性が手にコントローラーを兼ねたグローブをはめ、椅子に座ってパソコンの音源を操作する。手の動きでサウンドが変化する。最後は立上がって激しい身振りで爆音を響かせる。会場で会った知人に聞くと彼はハナタラシとの共演LPも出しているRudolf EB.ER氏その人でここ10年間京都に在住しているとのこと。長髪はかつらで実はスキンヘッドだという。



3番目はSWARRRMという日本人4人組グラインドコア・バンド。比較的コード進行のはっきりしたサウンドとデス声で絶叫するヴォーカルは悪くない。この日の出演陣の中では最も聴きやすいバンドだった。



4番目がENDON。ds,g,noise×2,voの5人組。ギタリストの目の前で観ていたのだが、前髪をたらしたシューゲイザーっぽいルックスにも関わらず演奏が始まるとド派手なアクションで容赦ないノイズを巻き散らす。”容赦なし”というのが彼らの特徴で、ドラムはハードコア風、ギターはグラインドコア風、ノイズの二人はインキャパ/メルツバウ直系、ヴォーカルはヴァイオレント・シャウターだがこれらが渾然一体となって混じり合ったサウンドは過激な騒音の塊である。ヴォーカル氏は前回程暴力的ではなかったが、最後に一番前でノッてた客につかみかかり客席で乱闘するという挙に出て面目躍如。やられた客がどつき返すやりあいは果し合いの様で面白かった。若い女性客が数人最前列で踊っていたのが意外だった。



続いて灰野さんとGUAZEのドラマーHIKO氏のデュオ。灰野さんとHIKO氏の共演は昨年1月亀川千代氏を加えたトリオ編成で観ているが、今回は完全なガチンコ勝負であり、ハードコア・ドラムに真っ向から挑む激しいギタープレイが炸裂。アクションも3日前の生誕記念公演の時より数段激しく、突っ走りまくりの演奏に惚れ惚れした。灰野さんの世界にどっぷり浸れるソロや不失者は最高だが、このような、特にハードコア系のミュージシャンとセッションする時の灰野さんの気合いの入り方は尋常ではない。殺気漲る演奏は世界中の意識的なミュージシャンからリスペクトされる所以である。共演したミュージシャンが口を揃えて「Hainoは凄い」と言うのはこの一発触発の気合い故なのだろう。先日の非常階段との共演の時にも感じたが、HIKO氏のドラムは共演者の本気を引き出す誘発力に満ちているため、灰野さんの意識はいつも以上に研ぎ澄まされたに違いない。素晴らしくシャープで緊張感に溢れた30分間だった。このデュオはいつかまたもっと長い時間観てみたい。



次はSDLXの「ド・ノイズ 5」にも出演したスイスのFRANCISCO MEIRINO aka PHROQ 。照明が真っ暗になりラップトップ・ノイズが流れ出す。FRANCISCOは時々客席へ降りてきて出音を確かめているのか、自分の音に聴き惚れているのか、その表情からは何とも読みとれない。



トリは同じくスイスのDAVE PHILLIPS(ex,FEAR OF GOD)。「ド・ノイズ 5」ではASTRO氏とデュオで演奏した人だ。スクリーンに日本語の警告と動物虐待の映像を流し、その中で電子雑音を奏でながら息の音や囁き声、絶叫と電気加工されたヴォイスが響く。映像とのコラボレーションがピッタリでまるでノイズ版ドラびでおといった風情が興味深かった。



ノイズ・イベントとはいってもバンド有りセッション有りピュア・ノイズ有りの楽しめるイベントだった。ENDONの企画力/プロデュース能力には今後も注意を払っていきたい。

暴虐の
果てに見えるよ
永遠の光

ドリンク・カウンターのある別室では各アーティストが物販を行っており、じっくり見たかったが、喫煙室でもあるのでタバコ臭くて耐えられないのが辛い。




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鼠派演踏艦Ω公演・宮下省死「人間・魔苦辺主」@目白庭園内・赤鳥庵 2012.5.6 (sun)

2012年05月08日 00時42分58秒 | アート!アート!アート!


昨年12月に続く鼠派演踏艦Ω-舞踏シリーズ・百八の煩悩ソノ弐-「人間(ひとま)・魔苦辺主(まくべす)」(赤鳥版)。
61歳の舞踏家、宮下省死さんの108回予定されているシリーズ公演の第2回目である。原作はウィリアム・シェイクスピア、音楽は何と阿部薫だという。フライヤーによれば宮下さんが土方巽さんのもとで舞踏を始めた19歳の頃、街路で踊っていた時に阿部さんと知り合い、20歳の時早稲田大学の屋上で阿部さんがバスクラリネットを吹き、牛の生首を背負って踊ったのが宮下さんの最初の公演だったという。写真は1971年の三里塚幻野祭で阿部さんのハーモニカ演奏中に牛の生首を背負って舞台で踊る宮下さんである。終演後宮下さんに聞くと、三里塚でのパフォーマンスは予定されていたものではなく、知り合いだった阿部さんのステージに飛び入りしたのであり、この写真も宮下さんとは知らず撮影されたものだそうだ。このフェスティバルの模様を収録した『幻野 幻の野は現出したか~’71日本幻野祭 三里塚で祭れ』というアルバムには阿部薫の名前はクレジットされているが演奏は収録されていないのでこの写真だけでも日本のロック/ジャズ史上とても貴重なものである。

シェイクスピアの四大悲劇のひとつである「マクベス」は勇猛果敢だが小心な一面もある将軍マクベスが妻と謀って主君を暗殺し王位に就くが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政を行ない、貴族や王子らの復讐に倒れる、というストーリー。宮下さんの演出はマクベスの人間的な内面に焦点をあてており、その心境の変化に応じて阿部さんの7種類の楽器の即興演奏が使い分けられ、衣装もその度に着替える。前回の同じくシェイクスピア原作による「瓦礫の森のリア」では石と木の枝と急須を小道具に使った舞台だったが、今回は仮面と刀がマクベスの狂気の象徴として使われた。場面展開のための着替えもうすら赤い光の中で観客に見せるという曝け出し方が宮下さんらしい。最後に閉めてあった雨戸を全開にし、まぶしい陽光の中断末魔の絶叫を聞かせるシーンでは例えようも無いカタルシスに恍惚となった。



マチネとソワレの昼夜2回公演で私が観たのはマチネだが、夜はまた違った感動のある舞台だったに違いない。私はそのまま新大久保で灰野さんの出演するイベント(明日のブログでレポ予定)ヘ行ったのだが、宮下さんと阿部さんと灰野さんという同時に幻野祭に出演していた三者を一日で体験するのも何かの符号だろうと思い感慨ひとしおだった。

四十年
踊り続けて
留まらぬ

宮下さんの次回公演は11月に「子規の四季の死気と、S骨とM肉の奇妙なる恋愛関係。」というタイトルのオリジナル舞踏になるとのこと。



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ロックの本質ここにあり~不失者「光となづけよう」

2012年05月06日 02時11分02秒 | 灰野敬二さんのこと


不失者としての直近のアルバムが2001年の「Origin's Hesitation」だから11年ぶりの新作の登場である。「Origin's Hesitation」は灰野さんがヴォーカルとドラムス、小沢靖さんがベースというギターレスのデュオによる変則的なアルバムだったから、ギター、ベース、ドラムのトリオによる作品は2000年フランスのParatactile labelからの2枚組「I saw it! That which before I could only sense... 」以来である。小沢さんとのデュオでの不失者は2005年まで活動。2007年のバースデイ・ライヴと年末オールナイト・ライヴ(どちらもソロ公演)は「不失者」名義で行った。2008年2月には小沢さんが肺がんのため還らぬ人となる。その後2008年11月に新宿JAMで高橋幾郎氏とデュオをした際「今後はこのデュオで不失者として活動していく」と述べたこともあった。2010年9月の新宿JAMでの工藤冬里さん(b)、高橋幾郎氏(ds)とのトリオが直前に「不失者」名義のライヴとなり、翌年1月には同じトリオで大阪クラブクアトロ公演を行い、不失者復活の兆しが現実の物となった。

様々なバンド/ユニットを組んできた灰野さんにとって1979年に結成した不失者は特別な意味を持ったバンドであり、ソロ活動と並ぶ2本柱であることはこれまでインタビューでも表明してきたし、ライヴ後の楽屋話でも語っていた。ライヴ前にお香を炊いてヴァイオリンのSEを流し独特の空間を演出するのはソロと不失者のワンマン公演の時だけである。

2011年7月アメリカのAKRON/FAMILYというバンドのサポートでナスノミツル氏(b)、高橋幾郎氏(ds)とのトリオの不失者で出演、今年1月にはUFO CLUBでワンマン公演、3時間の濃厚な演奏を繰り広げた。

レコーディングの話は実は2011年7月にBo Ningenの東京公演に出演した時、楽屋で灰野さんから聞かされていた。まだ発売元は決まっていないが近々スタジオ入りするとのこと。同じイベントにLSD Marchで出演していた高橋幾郎氏と日程の確認をしている現場も目撃した。その後のライヴの際デザイナーの北村卓也氏と度々ジャケットの打ち合わせをしており、さてレーベルは何処だろう、と思っていた矢先に4月27日に新作「光となづけよう」の発売が公表された。レーベルはiLL、フルカワミキ、宇川直弘氏のUKAWANIMATIONなどが所属するHEARTFAST

全7曲入35分。長尺の曲の多かった不失者としては異例のコンパクトな作品である。確かに2010年以降の不失者のライヴはかつてのように延々とインプロヴィゼーションを展開するのではなく、灰野さんのヴォーカルを中心とした楽曲がひとつひとつまとまり、ギターがここぞという時に効果的に鳴り響くというストイックな緊張感を持った演奏になっている。収録楽曲は長くて7分、3分台の曲もあり、全曲「ロック」ナンバーとしてとても単純明快なサウンドである。その中に灰野さんならではの象徴主義的な情念の歌がたっぷり籠められていて35分が数時間にも聴こえる内容の濃い作品。とても聴きやすく単純にロックとしてカッコいいアルバムなので、灰野敬二入門編としてもおススメである。無駄を削ぎ落として研磨を重ねてきた末に辿り着いたロックの本質を明らかにする孤高の境地。驚異的なのはこのサウンドが完成型では決してなく、灰野さんと不失者はまだまだ進化(深化)していく余地が充分残っているということだ。今後の不失者の動きには最大の注目が必要である。



「光となづけよう」不失者(灰野敬二、ナスノミツル、高橋幾郎)
HEARTFAST HFCD-013
曲目:
1. まだ光となづけられない者
2. 俺の分け前
3. 「知れる」ということ
4. あれだけは
5. 中心の決意I
6. とどめ やり方
7. 中心の決意II

ロックから
失われることの
ない者たち

アメリカのSPIN誌が発表したSPIN's 100 Greatest Guitarists of All Timeに灰野さんが唯一の日本人として選出された。
コメント (13)
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