グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

ダンダン復興計画

2014年07月01日 | 火山・ジオパーク
6月29日(日)建築学科の早稲田大学大学院生が考えた「元町の復興計画」の説明会が、ジオパーク研究会主催で開催されました。

参加者数は70名近かったように思います。(正確にはわかりませんが…)

学生さん達は、昨年の土砂災害1か月後に15名で大島入りし、ボランティアをしながら調査を行って「ダンダン復興計画」を考えたそうです。

そして結果を大島の人に伝える機会を持ちたいと言うことで、今回の発表になったとのこと。

学生さん達が考えた復興計画は、手作りの模型を使って紹介されました。


では、その復興計画とは…?

砂防ダムから海までを3つの区域にわけ、砂防ダムで止められなければ次、そこでもダメなら次というように、段階的に土砂を受け止めよう…ということのようです。

一番上の「大ダンダン」には砂防ダムがあります。

平常時には水を溜めて、農業用水などに利用できるように設計したようです。

下図の左側が平常時のイメージで、水を溜めておく池を設計。

防災施設を日常の暮らしに役立てる、という発想がスバラシイと思いました。

「中ダンダン」は、観光や椿のタネ採取用の椿林と農地に。


それぞれを石垣で区切って段々を作り、土砂流の流れを受け止める設計に…。


最下部の「小ダンダン」に集落があります。
今回、道路より低い位置にあって被害にあった家が多かったことから…


家は道路より高い位置に建て、境に大島の溶岩を積んだ石垣を配置。


海から山を見上げた時のイメージは、こんな感じになるようです。

厚紙や細かい溶岩、木を利用して、とてもよくできた模型を作ってあって感心しました。

そして集落の中の建物モデルとして“御神火ハウス”が提案されていました。

建物の山側と海側に、溶岩の石垣を配置。元町橋にせき止められて溢れた土砂を回収し、木や瓦礫だけを濾し取って水を沢に戻す構造。

海側から見ると、こんな感じ。

平常時はレストランや野菜の直売所として、観光と農作物販売の拠点とするそう。

そして、高床+土間で、溜めつつ流す=免流する家。

建築を浮かせ、土砂を床下と土間で流し、石垣で溜める。
それぞれの家で少しずつ土砂を溜めて、下のダンダンにある家への被害を減らしていく…という考え方。

大島の昔の家の間取りを参考にして作られているようですが、現代風でとてもオシャレでした。

学生さん達の理想の復興計画に対し、色々な質問・意見が出ていました。
いくつか抜粋します。(回答してくれたのは、学生さんと指導教官の方々です。)

Q 津波はどうなのか?
A 今回は津波は考えていないが、石垣のダンダンは上からの水にも下からの水にも有効だと考えている。

Q 橋で流木が詰まる構造をなんとかできないのか?
A 土砂が来たとき橋が上がる、または崩れるなどして流木を流すことも考えたが、現実的には難しい。そこで橋をそのままにして何かできないかと思い“御神火ハウス”を考えた。橋だけ、砂防ダムだけでは、土砂を止められない。平常時も災害を考えた構造にする必要がある。

Q この計画は、不可能なのではないか?
A 不可能ではないと考えている。農地全部、石垣全部ではなくても、一部からだけでもやっていくことはできると考えている。(学生さんが自信を持って語る姿が爽やかでした。)

指導教官の先生からは「学生のプランの中で一番大切なのは“免流”という考え方。リスクはゼロにはならない。リスクを受け入れつつ、それを最小限におさめるという考え方を学生は提案している」と話しがあり、

学生さんからは「砂防ダムの大きさだけで土砂に対応するのではなく、個人レベルでできることを考えた。」と話しがありました。

実際には町の復興計画は既にほぼ決まっており、畑や椿林にと学生さんが考えた場所は複数人の所有地であり、この計画は“理想論”に見えるかもしれません。

でも確かに「免流」という考え方は、これからも台風、津波、噴火、地震と、つき合いながら生きなければいけない私たちに、1つのヒントを示してくれたように感じました。

何よりも自分たちの研究をそれだけで終わりにするのではなく、私たち島民に「伝えよう」として来てくれたことが、とても嬉しいです。

学生さんと教員の方々の姿勢に暖かいものを感じて、その暖かさの分、パワーがもらえたような気がしました。

学生さん達は6日(日)まで大島に滞在し、町役場の総合開発センター1階で展示と説明を行っています。

島内在住で時間のある方は、ぜひ行ってみて下さい。
そして学生さんに、話しかけてみてください。

大島の皆さんの声が、これからの他地域の災害復興に役立つかもしれません。

互いに学ぶために…ぜひ!

(カナ)







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