グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

小山真人先生講演会

2014年07月15日 | 火山・ジオパーク
7月12日開催の、小山真人先生による「伊豆大島の噴火史と土砂災害」の講演会の様子を簡単に報告します。

6月に予定していたものが大雨で中止、7月11日に予定していたものが台風で順延。
ようやく開催できた講演会でした。

参加者数32名。

(写真は開始前です。)

大島での講演会の開催動機
「1986年の大島の噴火時は、東大地震研究所の学生だった。恩師である故・中村一明氏の全島避難のひとつとなった噴火予測根拠は外れたが、なぜ外れたかを示せず急逝。氏への恩返しのため大島を歩いて火山地質を研究した。」

「また2001年、大島で開催された「地震火山世界こどもサミット(地震火山こどもサマースクール)」には、講師の1人として参加。この取り組みは学者が子ども達に直接語りかけ、災害と恵みを知り、どう生きていくかを考えるもので、全国で開催し今年で15回目。大島の大会にはホテル椿園の娘さんが参加していて、2006年からスタッフの1人として活躍。彼女にきちんと何が起きたのか説明する義務があると感じ、同時に島の方達にも話しをしたいと思い、機会を設けてもらった。」

火山島の生い立ち
伊豆大島の火山の歴史を、わかりやすく説明してもらいました。

その中で印象的だったのは「山に大きな凹地(カルデラ)が空いた時には、山体が崩壊し、その直前には地層大切断面まで大きな火山弾がめり込むようなことが起きた。1986年噴火もここまでの事態に発展するかもしれないと結論を出し、全島避難を決断する根拠のひとつとなった。」ということ。前回の噴火では割れ目噴火だけではなく、山が崩れるような大きな出来事が考えられていたのですね。
 
「大島に平らな所と急な崖があるのはなぜ?」という問いかけからは「溶岩流や火砕流が海に流れて平らな地形を作る。海外でもそこで人が暮らしている。噴火は嫌だけど、噴火が作ってくれたものは長い間恵みとしてのこる。」という「火山の恵み」のお話しへ。

では、小山先生が考える「火山の恵み」とは?
「なだらかな山麓と平野。風光明媚、湖、豊富な地下水、美しい造形、肥沃な土壌(火山灰は栄養有り)、鉱物。」…いっぱいありました!

その他、火山の噴火が天然の良港を作ったり、港の桟橋の土台になったり…という人と火山の関わりの話もありました。

大島の噴火パターン
「大島の噴火はパターンがある。スコリア、溶岩流、火山灰が島中につもる、噴火終了して土ぼこりがたまるという順番。だが、このパターンの噴火は24回のうち12回だけ。火山灰だけ降る、スコリアだけ降るという中規模噴火があることがわかってきた。」

「大噴火は安永(西暦1777~1778)が最後。島中に火山灰を厚く積らせる大噴火はいずれやってくる。」という言葉が印象的でした。

大島の土砂災害
「台風26号土砂災害の崩壊のメカニズムに関しては、4学会と意見は一致している。」

「神達地区を上流まで追っていったが、ラハール(泥流や土石流の総称)は出てこなかった。少なくとも西暦1300年代の元町溶岩流以降、神達地区には大規模なラハールは来ていない。一方、大金沢では今回を入れて3回あったようだ。ラハール後100年経たないうちに植生が回復している。」

「伊豆大島志考には16世紀末のビャクのあと3回、土砂災害が文字記録で見つかっている。うち1つは狩野川台風。」

「地層を調べた結果では、ビャクに対応しそうなものは今のところ大金沢でしか見つかっていない。神立地区には19世紀前半以降とみられる小さなラハールがあるが、文字記録にある3回のうちの1回かもしれない。」

質疑応答(抜粋)
Q 御神火スカイラインや、砂防施設が影響したという考えをどう思うか?
A 道路の排水処理はしてあると思うが、土木の専門家に尋ねた方が良い。あそこは元町溶岩の上で、道路を造りやすかったと思う。それ以上はわからない。

Q 溶岩は風化していけば粘土になるか?
A スコリアが粘土になるまでには数万年かかる。大島の溶岩は丈夫なので、何10万年かかる。

Q カルデラ噴火予測できるか?
A 難しい、ある程度は観測からはわかるが、どこまでいけば噴火かというのは難しい。準備が着々と進んでいるのはわかっている、

Q プレート運動と噴火の関係は?
A プレート運動の力は島にかかっているので、影響はあるが噴火のタイミングはプレート運動よりも近くで起きる大地震に影響されることがある。

Q 御神火スカイラインの湧水について昔はキレイだったが最近汚くて飲めないとう話しを聞く。噴火と影響があるのか?民家ができた影響ではないか?大島の浄水場が地下水くみ上げていると湧水は減ってくる…そういう影響ではないか?
A 大きな地震や噴火で力のかかり方が変わり、温泉が枯れたり出てきたりする。割れ目噴火は地面をむりやり割り、押し広げたりするので、力のかかり方がが変わることはありえる。

Q 東海岸は津波で削られてないのか?
A 調べられていないのでわからない。可能性はある。

Q 86年噴火後10年ぐらい立ち入り禁止だったのはなぜか?
A 火山ガスの影響では?

Q 赤禿の上に住んでいるが、防災上どういうことに注意すれば良いか?
A 赤い火山は火口の近く。島のどこにいても長い目で見ればどこも危険。だが溶岩が地盤をしっかり固めているので、地震には比較的強い。島には高台が多いので、津波は海岸に近づかなければ大丈夫。

質問以外にも参加者からは昔の土砂災害の体験談などの話しが出て、小山先生が聞き役になりました。

…あっという間の2時間でした。

最後に…今年5月に開催された地球惑星科学連合大会で小山先生が発表された、土砂災害についてのポスターが、公開されています。もっと詳しいことが知りたい方は、以下のページをご覧ください。
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/onlinepaper/JPGU2014oshima.pdf

(カナ)
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