グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

オビカレハ幼虫のテントの謎

2020年05月17日 | 
今日の主役は、私がずっと成長を追ってるこの虫です。

毛虫の苦手な方は、この先へ進まない方が良いかもしれません(笑)
でも読み進めば、毛虫がぬいぐるみのように愛おしく感じられるようになるかもしれず、楽しみが増えてお得だと思います(笑)

実は4月3日に初確認し、このブログにも載せたオビカレハ(天幕毛虫)の幼虫に…

1ヶ月半で8回、会いに行きました。

ある疑問を解決するためにです。
その疑問とは…

大島のオビカレハ幼虫は、なんのためにテント状の巣を作るのか?です。

以前ネット上で「昼は巣の中で群生し、夜間に活動する」という記述を見たのですが、私は一度も、巣の中に入っている毛虫たちを見たことがないのです。

4月16日
毛虫の成長とともに、巣も少し大きくなりました。


でも彼らは、上の写真裏側の巣の表面に集まって、のんびりしていました。

隠れるために使わないのなら、いったい何のために労力をかけて、こんな巣を作るのでしょうか?

そうだ!もしや雨をしのぐためでは?
…と思ったので雨の日に調べに行ってきました。

4月20日
現地に着いた頃には雨は小降りになっていました。


巣の中には誰も入っていません!

そして…

毛虫たちは巣の1mぐらい上の葉の陰で、雨を避けるように身を寄せ合っていました。

しかも自分の体の毛で雨粒を弾いていました!(驚)
そうか〜!そもそも外敵や雨から身を守るための毛ですものね!

4月29日 
毛虫の成長とともに、巣はますます厚く大きくなっていました。


少し離れたところには、葉を中に巻き込んだ巣もありました!

食べ物を持ち込んでスティホーム?^^;
でも、巣の中の毛虫は確認できませんでした。(巣が厚くて中がよく見えない)

次に思いついた“巣を作る理由”は大島のオビカレハ達は、昼夜逆転してしまって夜、巣の中で休んでいるのでは?ということでした。

なぜなら昼間はいつも巣の表面で休んだり、葉っぱをかじったりしているので「どこかの時間帯で巣の中に入って寝ているのでは?」と思ったのです(でも捕食者の鳥は夜眠るので、この仮説は当たらない気もしましたが…)

で、夜行ってみました。

5月4日
暗闇に浮かび上がる巣の怪しくも美しいこと!!(笑)

そして予想どおり…

毛虫たちは巣の表面で、まったり休んでいました!

結局毛虫にとって巣は、ソファのようにふかふかで居心地の良い休憩場所なのでしょうか?!

この日、少し離れた場所の別の巣は…

毛虫は1匹もおらず、脱皮殻だらけ!(驚驚)
一大脱皮会場として使われたのでしょうか??

5月15日
最初の観察から約1ヶ月半が経過して、毛虫たちは随分大きくなりました。


葉っぱもいっぱい食べたようです(まだ多少残ってるけれど)


大きさに差が出て、色や模様もバラエティに富んできました。

食欲が個体によって違うのでしょうか?

中には、濃いオレンジ色の鮮やかな配色に変身したものもいました。

蛹になる前の、ラストスパートの美しさかな?

よく見ると、サクラの幹には毛虫の糸がたくさん着いてました。

脱皮の時に古い体がひっかかり、殻を脱ぎやすいのかもしれません。
ってことは、糸でできている巣も脱皮時に便利なのかも??

火山の噴火が一度焼け野原を作り、捕食者である鳥も少なく、オオシマザクラの若い木が点在し、国立公園特別保護地区で農薬散布もない場所は、彼らにとって天国なのかもしれません。

そして私たち人間にとっても、地球や生き物のありのままの姿を観察できる貴重な環境なのですよね。

来年この毛虫たちに会いたい方は、ぜひツアーをリクエストしてください(笑)

(かな)

追記(5月18日)
北海道の白滝ジオパーク 丸瀬布昆虫生態館の学芸員の喜田和孝さんに、このブログを読んでいただいたところ以下のメールをいただきました。
とても興味深いのでほぼ全文に近い形で追記します。以下いただいたメールです。

「基本的にテント越冬は寄生・捕食を避ける目的が強い気がするのですが、中に入らないのであれば、少なくとも寄生には効果がなさそうです。僕がお写真を見させて思ったのは、脱皮がらをつけて捕食者を避けているのでは?ということで、これはアメリカシロヒトリが同様の戦略を採るので、どちらも全く毒性がないにもかかわらずやっているという面で似ている気がします。

根拠論文は示されていませんでしたが、「テントの上で日光浴」というのがネット情報ではあり、なるほどと思うところはありました。春の体温?上昇は死活問題ですから。テントは光を受け止めて保温する構造になっているとのこと。他にも既にご承知かもしれませんが、鱗翅目幼虫は雨が苦手で、口からの消化液をうまく止められないため、水が幼虫の下面にビチャッとついてしまうと、消化液が気門まで回って、自己消化を始めて死んでしまうことが割とあるのだそうです。ネットは通水性は悪そうで、どちらかというと撥水の方ですが、べったり枝についてるより安全そうに思えます。

最近の研究では、模様の地理変異や多様性がもたらす意義について検討がされている要で、派手な模様で集団を形成するのは、捕食者に対する何らかのアピールになっていそうです。あと、糸をかなり出しながら移動しているのも群れで生きる虫ならではの気がしますね。基本的に鱗翅目は糸を吐いて休憩用(腹ごなし)の台座を作るのが基本で、糸もわずかですが吐きながら移動しているようです。が、それにしても多すぎる気がするので、ホストの樹皮の状態に足があっていなくて、落っこちやすいのかも知れませんね。これは他の地域のものとの比較をしてみたいところです」









コメント
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