4月4日の“リス村”を取材したブログのあと、八丈島のネイチャーガイドIさんから「大島の動物園はズーストック計画で、島の希少動物の保護繁殖を行っているはず」との情報をいただきました。
「なるほど。人間と動物との関わり方を模索するひとつの取り組みを、修学旅行の中学生達に知ってもらうのも良いかも!」そう考えて、一昨日動物園に行き、話しを聞いてきました。
ズーストックとは「複数の動物園・水族館などが協力して、希少動物を計画的に繁殖させる取り組み。絶滅の危機に瀕した動物を飼育下で保護増殖させ、動物園等で展示する動物を確保するとともに、野生復帰も目指す」ということのようです。
東京都が平成元年(1989)から実施し、上野動物園、多摩動物公園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園、大島公園動物園の5カ所で50種類の動物の繁殖を試みているとのこと。
大島では以下の3種類の動物が対象になっているのだそうです。
その1・ハワイガン。
ハワイ諸島で狩猟や外来種の捕食者の影響で激減。
保護活動によって数が回復しているようです。
その2・アルダブラゾウガメ。(眠そうな目が可愛いです・笑)
セーシェル諸島の固有種。
アシタバが好物なのだそうです。
こちらは、飼育下では未だ繁殖に成功していないとのこと。
こんなにいっぱいで雑居生活しているのに、不思議ですね。
その3・大島の野生種、カラスバト。
国指定の天然記念物です。
名前のとおり、カラスみたいな鳩です。
沖縄北部の海岸では、カラスバトが海岸におりて、海水、砂、小石、二枚貝などを摂食 する行動が報告されていますが、大島ではどうなのでしょう?私は聞いたことがありませんが、もしかしたらカラスバトには塩分を体外に出す仕組みがあるのでしょうか?
彼らは1回の繁殖で、たったひとつしか卵を産まないそうです。鳥の卵はヘビやその他の動物に食べられる危険も多そうなのに、なんで1つしか産まないのでしょうか?
カラスバトは日本の中部以南の海岸や島に暮らし、現在の生息数が減少して絶滅が心配されているそうです。(そりゃそうかも…1回の繁殖で1個の卵じゃ、効率悪すぎます。)
面白いことに、大島公園動物園では、繁殖目的のケージに入れたものは繁殖に成功していないのに、野生の状態に近い巨大鳥ケージに入れたものが産卵し、雛が孵ったそうです。
やはり、狭いケージの中はストレスがかかるのでしょうか?
自然に近い状態で、ライバルや敵がいてこそ“子孫を残す”必然性が出てくるのかも?
森の中で静かに暮らすカラスバトの姿は威厳に満ちていて、とても格好よいです。
それに比べて…
餌箱に群がるカラスバトの姿は、野生の状態とはかけ離れているような気がします。
でも餌の時以外は、こんなふうに木陰でのんびりするカラスバトの姿を見ることができます。
良く見ると、カラスバトが止まっているヒメユズリハは、オオシマザクラの根の隙間からはえていました。
そしてオオシマザクラは溶岩の上に根を張り、巨体を支えています。
通路に張り出した桜の幹を、そのまま伸びさせるためにこのような工夫も。
透明のアクリル板(?)が、桜の幹の形に合わせて上手にカットされています!
(今まで何気なく見ていたんですね。この日初めて気がつきました。)
周りを見渡してよく観察したら、ヤシの木以外は全て地元の木でした。
ヤブツバキ、ヒメユズリハ、スダジイ、オオシマザクラ、ガクアジサイ…
元から生えていたものを上手に利用しているようです。
噴火で山腹を流れ下った溶岩地形をそのまま活かした猿山の向こうには、青い海が見渡せます。
よく考えてみたら“海の見える動物園”って、そんなに多くないのではないでしょうか?
海、溶岩、そして海岸や島に生きてきて今や絶滅を危惧されるカラスバトが、ケージの中で自然繁殖をした動物園。
動物園という人工的な施設の中も、大島らしい個性を持ったジオがいっぱいです!
福島から修学旅行で大島を訪れる予定の中学生たちにも、伊豆大島ジオパークらしい動物園を楽しんでもらいたいなぁ、と思います。
なお、伊豆大島ジオパーク・データミュージアムには島外記者の方が、素敵な文章を載せてくれています。記事を読むと、島で暮らしているうちに当たり前になってしまっていたものの価値を、あらためて見直すことができます。
お時間のある方は、ぜひご一読ください。
http://oshima-gdm.jp/都立大島公園動物園
(カナ)