浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

小選挙区制

2023-04-28 12:06:38 | 政治

 昨日届いた『週刊金曜日』は、「憲法特集2023」。5月になると、多くのメディアが憲法に関する特集を行っていた。最近はそれが下火になって、「憲法なんてあるの?」という状況もある。そういう中で『週刊金曜日』が憲法特集を行うことは価値がある。

 さて、河野洋平と中島岳志の対談が主要記事となっている。自民党の中でも良識派であった河野洋平が、現在の政治状況を憂えているのだが、そうした状況をつくりだす契機はあった。河野がこう言っている。

 私はこの制度の導入に直接かかわりましたから、責任も感じていますし、いま思えば、小選挙区制は取るべきではなかったと思います。小選挙区制によって、世論が段々反映されなくなってきていて、「民主主義」の名のもとに独裁とまでは言わないけれど、独りよがりの政策がどんどん進んでいます。悪い状況になっていると思います。

 「政治改革」をしなければならない・・・という叫び声とともに、小選挙区制の導入が図られた。はっきりいって、その中心にいたのは小沢一郎ではなかったか。「二大政党制」をつくる、ついては日本社会党はつぶすという目論見をもって進め、メディアも大いにそれに協力した。久米宏など当時のキャスターたちはその尻馬に乗って、「政治改革」に賛成しない奴はろくでなしであるかのように叫んでいた。ほとんどの政治学者もそれに唱和した。だが、朝日新聞の政治記者・石川真澄だけが強く反対した(それ以外のほとんどのメディア関係者は、小選挙区制導入に積極的であった)。

 私は小選挙区制の危険性を指摘していた。しかし小選挙区制に反対する人たちは、多くはなかった。「政治改革」ということばにだまされ、そのなかの毒饅頭である小選挙区制をまるごと呑み込んだのだ。

 政党では、日本共産党が反対した。私はこの点について、共産党を大いに評価している。日本社会党は、小選挙区制では議員を当選させられない現状があるにもかかわらず、これに賛成した、バカな政党である(このころ、社会党に対して抱いていた期待は無残にも消えてしまった)。

 日本社会党については仲良くしている人たちが社会党であったことから、批判は抑えてきたが、最近かれらも社会民主党を離れたので、自由に批判できるようになった。社会党の国会議員の多くは労働組合からの「上がり」として議員にまつりあげられたので、話をしていても、きちんとした定見を持っている人は少なかった。日本社会党の内部で、「烏合の衆」として浮遊していただけである。唯一一定の定見を持っていた議員(若くして亡くなられた)も、自民党からのプレゼント攻撃に負けて所信を捨てて小選挙区制に賛成していった。

 当時社会党の議員であった某氏には小選挙区制に賛成したことがいかに日本社会党を破滅へと導いたのか、その後の社会党議席数などをそえて説明し、近年やっと「間違いだったかもしれない」という発言を導き出した。

社会民主党は、細川内閣時のみずからの行動を振り返るべきであり、また同時に村山政権時の変質も点検すべきであるにもかかわらずいっさいしていない。

 いずれにしても、現在の劣化した政治の起点は、小選挙区制導入にある。その責任を負うべきは、まずもって小沢一郎である。彼はいま、何を考えているのだろうか。

 今週号で、元議員の尾辻かな子が「大阪で維新圧勝を招いたからくり」を書いている。「大阪維新の会」は、知らなかったが、府議会議員の数を112(橋下徹府知事就任時)から、79に減らしてきたのだそうだ。そうなると、選挙区の多くは小選挙区、一選挙区から一人の議員選出という具合になったのだという。一人区の割合は68%で、全国一になっているようだ。そうなると。大阪のメディアに後押しされ、大阪市民の大阪ナショナリズムとあいまって、「大阪維新の会」が圧勝するという結果になったというわけだ。小選挙区制は、多様な民意を削いでいく、民主主義とは逆行するのである。

 私は大阪とは縁がないので、大阪市民が「大阪維新の会」の悪政の被害を受けても、同情する気持ちは一切ない。大阪府や大阪市の税金がIRにつぎ込まれ、社会福祉や教育の予算が大幅に削減され、市民がみずから「身を切る改革」に賛成するのであるから、遠くから「がんばれや」と「声援」をとりあえずしておこう。

 しかし善良なる市民は、どういう選挙制度が民主主義を支えるのか考えるべきだと思う。

 おそらく荒廃した日本の姿は、関西から現出してくるのではないかと予想している。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする