日本国家の支配層が総体となって推し進めている政策の基調に新自由主義がある。コストをできる限り下げ、経営者や株主の利益を最大限に尊重するという、暴力的な資本主義のあり方だ。
だから政府や自治体も企業も、コストと見做して労働者を減らすことに血眼になっている。できるだけコストをさげるために、正規従業員を減らし、非正規の低賃金で働いてくれる人を雇う。
浜松市の行政区の再編(区を7つから3つに減らす)も、自治体労働者を減らしてコストを下げるという目的から行われる。市民へのサービスよりも、コスト削減なのだ。マスコミも含めて人びとはコストを下げることがどういう意味を持つかを考えない。コストをさげることによって生じるカネは、どう使われるのかについては、カネには何も書けないから、自治体のトップ(そのトップにみずからの利益確保をさせる経営者)は、はっきりとはさせない。ところがよく調べてみると、そのコスト削減によって生みだされたカネは、企業への様々な補助金として流れていく。
今の社会は、経営者や株主にとって、これほどおいしい社会となっている。
さて、羽田で起きた日航機と海保機との衝突事故。
まず乗客乗員全員が助かったことが、世界から奇跡だと言われている。乗員たちの冷静な対応が賞賛されているのだ。しかし、その賞賛を導いたものは、日本航空という会社ではない。日本航空の労組である。
日本航空は民間企業であるから、他社と同じようにコスト削減を行っている。コスト削減の最大の手段は、労働者の削減である。会社は、客室乗務員を減らしたくてたまらない。そのようにしようとしていた。その前に立ちはだかったのが、労働組合である。組合は、客室乗務員の数は、脱出口の数プラス1は必要だと主張していた。事故機には、その数がいた。だから適切な対応ができた。
また日本航空会社は、コスト削減につながらない避難訓練を何度も行うようなことはしたくない。しかし日本航空の組合は、自主的に避難訓練をやっていたという。
「日本、素晴らしい!」といわれる快挙をなし遂げたのは、労働者の組合であった。決して会社ではない。今や会社は、利益追求だけが目的となっている。しかし安全を守る役割は労働者の組合が担っている。素晴らしいのは、日本の労働者(組合)なのだ。
そしてもう一つ。管制官が離着陸する機と連絡をとりながら飛行機の安全を守る。ところが、羽田のように離着陸機がとても多いのに、国土交通省は管制官の数を減らし続けている。安全よりもコスト削減である。しっかりと海保機の動きを見ていれば、この事故は防げたのではないか。しかしそれを見る人間(管制官)がいない。
この事故は、国土交通省の管制官削減が引き起こしたものだと理解すべきである。
メディアは、こういうことをしっかりと報じるべきである。