若い政治家の中には、今の政治が「高齢者偏重」だとして、高齢者への様々な予算措置を攻撃する者がいる。
私は、今の政治が「高齢者偏重」だとはまったく思っていない。豊かな老人もいるが、そうでない老人もたくさんいる。老人は、現在の落ち目ではあるが日本の経済を支え、日本の発展のために尽くしてきた人びとである。そういう人びとを攻撃すべきではない。
若い政治家は、「高齢者偏重」をやめて現役世代にもっと様々な援助をせよと主張する。
現役世代に対する施策を、政府はあまりにも軽視し、ないがしろにしてきたことは確かである。90年代半ばから、経済界、政府は足並みを揃え労働者の賃金を下げるような施策をしてきた。派遣とか請負とか、非正規労働者の出現を後押しし、小泉政権下では製造業でのそれを許した結果、非正規労働者が爆発的にふえた。若者が高校や大学を卒業しても、低賃金の労働現場しかないようにした。したがって若者は結婚もできず、将来の人生設計をたてる余裕すらなくなった。
また正社員として就職できたとしても、給与は上がらず、労働は過酷、そして税金だけではなく、給与から多額の社会保険料を納めなければならなくし、正社員の可処分所得も低位のまま推移させてきた。
だから、若者をはじめとした現役世代にたいして、結婚して子どもを育て、将来設計をもつことができる生活ができるような施策をすべきであったのだ。
ところが、今の政治を見ればわかる通り、国家の予算や地方自治体の予算も、政治家の「お友だち」や「利権につながる人びと」、官僚にとってはその天下り先などにカネが回るようにつかわれている。
自民党政治家の裏金問題にみられるように、政治家に多額の不正なカネが集められる。それは今回の政治家に対する不起訴措置にみられるように、そのカネは所得とみなされず、完全に自由なカネとして彼らの懐に入るのだ。政治家に集められたカネは、企業などがパーティー券を購入したものであるが、当然そのカネは見返りを前提とした支出であろう。見返りのカネは、「公金」があてられるのだ。
こういう政治を改めれば、若者をはじめとした現役世代にも、たとえば出産費用をタダにするとか、子どもの教育費などを無償としたりして、多くの「公金」がつかわれるようになるはずだ。
「高齢者偏重」として、高齢者への様々な「公金」の投入を非難するよりも、年齢を超えた、庶民に対する貧困な施策を批判するべきなのだ。
いじめられているのは、若者など現役世代だけではなく、日本に住む庶民全体なのだ。いじめる奴に対して怒りをぶつけるべきなのだ。