戦時期からなぜ朝鮮人の渡日に法的外皮が必要であったのか。それを簡単に書いておく。
それまでは、日本国内の労働力が不足している時には、朝鮮人の流入が円滑にいくように制限を緩め、過剰な時には流入を防ぐよう制限を加えて流入を抑えた。
しかし戦争が始められると、日本男性は戦場へと駆り出され、国内の労働力は決定的に不足するようになった。労働力の不足は戦争能力に大きく左右する。
そのために、朝鮮半島の労働力に目をつけた大日本帝国政府は、有無を言わさずに朝鮮人労働力を導入しようと決意した。法的外皮を整えたのは、つまり強制的に導入するためであったのだ。法的な裏付けをとれば朝鮮人労働力の導入を、計画的にかつ強制的に導入できる。
ネトウヨらが、法的な整備をおこなって導入したから「強制連行」ではなく「労務動員」なのだという言説は、逆なのだ。「強制連行」するために法的な整備を行ったのである。
こんなことは少し考えればすぐわかることなのだ。法とは国家による強制力を発動するために存在する。われわれが法に基づき税金を納めるのは、強制力のある法があるからだ。
朝鮮半島からの労働力導入を強制的に行うために、募集、官斡旋、徴用という制度をつくったのである。法的な整備が行われたから「強制連行」ではない、という言説は誤りであって、「強制連行」するために法的に整備したのである。
私は、だから一応「労務動員」ということばをつかうが、そこにはかならず強制的な、をつける。それでないと史実と違えることになるのだ。
「強制連行」を「政治的」だとする言説は、史実を隠す言辞というしかない。ネトウヨはそれを狙っているからまだ理解できるが、行政や裁判所がそうしたネトウヨの言説に乗るというのは、どうにもわからない。もし無理に理解しようとするなら、行政も裁判所もネトウヨだとするしかない。もしそうなら、日本国は「ネトウヨ国」であるということになる。
国会議員や地方議員も、そして官吏や裁判官も、そうしたネトウヨ程度の理解力しかないから、仕方がないか。