窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

ニッカ 宮城峡蒸留所③

2010年05月05日 | BAR&WHISKY etc.


  ニッカウィスキーの創業者、竹鶴政孝は本格的なウィスキー作りを学ぶため、1918年に単身スコットランドに渡りました。今ではほとんど行われていませんが、かつてはウィスキー作りが盛んだったキャンベルタウンで修行したかと記憶しています。上の写真は竹鶴が学んだことを克明にメモした、いわゆる「竹鶴メモ」("Whisky Magazine Live! 2010"で展示されていたもの)です。



  さて、竹鶴の本物に対するこだわりを如実に示すのが、この連続式蒸留棟と言えるでしょう。ウィスキーには、これまで述べた大麦だけで作るモルトウィスキーと、大麦以外の穀物(主にとうもろこし)で作ったグレーンウィスキーをブレンドして作るブレンディッドウィスキーがありますが、このグレーンウィスキーは連続式蒸留器という先ほどの単式蒸留器よりもよりアルコール純度の高い原酒を作る蒸留器で作ります。このため、一般的に単式蒸留のモルトウィスキーに比べ、個性に乏しいといわれていますが、グレーンウィスキーはブレンディッドウィスキーの滑らかさや飲みやすさ、ロックで割ったときのバランスの良さなどに重要な役割を果たしていると思います。



  宮城峡蒸留所では、この連続式蒸留器に、世界でも数少ないカフェ式蒸留器を使用しているのが大きな特徴です。カフェ式は扱いが難しく、生産効率も劣るといわれていますが、一方で香気成分を適度に含んだ、個性的なウィスキーを作ることができるそうです。これも理想的なウィスキーにこだわった竹鶴の職人気質でしょう。なお、上の写真はカフェ式連続蒸留器の10分の一模型です。



  貯蔵庫。ここでウィスキー原酒は樽の中で何年間も熟成されます。写真の手前に、大きさの違う樽がいくつか置いてありますが、樽の大きさ、使用している木材の種類、ウィスキーをつめる前にその樽を何に使っていたか、など様々な条件がウィスキーの個性に大きな影響を与えます。また、貯蔵庫の気温や湿度、貯蔵の位置、下か上か、壁に近いか遠いかなどもウィスキーに影響します。



  樽の内側は、チャーといって真っ黒に焦がしてあります。これによりウィスキーが樽に触れる表面積が大きくなり、樽材に含まれるエキスが抽出されやすくなります。余談になりますが、今回仙台で拝聴したバイオエタノールの講演によれば、樹木を樹木たらしめているリグニンというフェノール化合物を分解するとバニリンというバニラ成分が抽出されるそうです。ウィスキーのバニラ香もこれと関係があるのかもしれません。



  蒸留段階では透明だったウィスキー原酒は、樽の中で樽に含まれる様々な成分が時間をかけて溶け出すことにより、次第にわれわれのイメージするウィスキー色に変化していきます。上の写真は左から、樽詰めしたばかりの原酒、5年熟成、10年熟成の変化の様子です。3年以上の熟成を経て、晴れて正式にウィスキーとなります。



  さて、いよいよお楽しみの試飲です。左からシングルモルト宮城峡10年、ブレンディッドの鶴17年、それからアップルワインです。順番としては、先に鶴17年を試すべきでした。シングルモルトは個性が強いため、宮城峡10年を先にしてしまうと鶴17年のよさが損なわれてしまうからです。これは失敗したと思いました。それでも、宮城峡10年はほのかなピート香とモルト由来の甘みのバランスが良く、なめらかで若さを感じさせない良いウィスキーでした。個人的にも好きなタイプのウィスキーです。

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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ニッカ 宮城峡蒸留所②

2010年05月04日 | BAR&WHISKY etc.
  ウィスキーの蒸留所見学について書くのは、これが初めてではありません。しかし、現在のブログに至るまでに実は二度ほどブログを閉鎖しているため、過去の蒸留所巡りの記録が残っていません。そこで改めて、ウィスキーができるまでの工程を順々にご紹介していきたいと思います。



 まず最初はキルン棟。モルトウィスキーの原料である発芽させた大麦(二条大麦)をこの建物の中で乾燥させます。



  その際、乾燥させるのにピート(泥炭)を焚きます。このピートの煙が作用することにより、ウィスキーに煙やヨードのような独特の香りが付加します(ピートを使わない場合もあります)。



  こちらがそのピート。植物が堆積して炭化したものなので軽く、乾燥した馬糞のようです。ピートそれ自体からは、いわゆるピート香はほとんどしません。当蒸留所では日本国内の泥炭層として知られた石狩平野のピートを使用しています。



  糖化槽(マッシュタン)。大麦にお湯を加え、粥のようにして糖化します。糖化槽は軽井沢蒸留所のように木製のものを使う場合もありますが、ここではステンレス製を使用しています。



  発酵槽。糖化した麦汁に酵母を加え、発酵させます。この酵母の働きにより麦のジュースが水とアルコールと二酸化炭素になります。ちょうどビールと同じようなものと考えればよいでしょう。この酵母の種類によりウィスキーに付加される香りなども異なってくるため、各蒸留所ではそれぞれ独自の酵母を使用しています。



  ウィスキー製造のシンボルといえば、この単式蒸留器(ポットスチル)でしょう。タータン、バッグパイプと共にウィスキーがアイデンティティともいえる存在のスコットランドでは10ポンド紙幣にポットスチルが印刷されているほどです。ポットスチルは蒸留所によってそれぞれ形や大きさが異なり、このこともウィスキーの個性に大きな影響を与えます。



  例えば、上の写真はニッカウィスキー創業時に、北海道余市で実際に使用されていたポットスチルです。下から上にかけて円錐状にまっすぐ伸びているのがお分かりいただけると思います(ストレート型)これに対して、宮城峡蒸留所のポットスチルは、首の付け根部分がまるく膨らんでいます(バルジ型)。科学的なことは不明らしいのですが、この部分の他働きにより、重い香りの成分が釜に戻るため、すっきりとしたソフトなウィスキーになると経験的に言われています。

  ウィスキーは通常この単式蒸留器で二度ないし三度蒸留を行いますが、宮城峡蒸留所は二回蒸留です。こうしてできる透明のウィスキー原酒をニュースピリッツといいます。なお、宮城峡蒸留所のポットスチルにはしめ縄が飾られていますが、これはニッカウィスキーの創業者、竹鶴政孝の生家が造り酒屋だったことによるそうです。<つづく>

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ニッカ 宮城峡蒸留所①

2010年05月03日 | BAR&WHISKY etc.


  仙台に到着してチェックインの時間まで少し間があったので、ニッカウィスキーの宮城峡蒸留所を訪ねてみることにしました。ウィスキーの蒸留所めぐりは軽井沢(当時はメルシャン)、山崎(サントリー)、富士御殿場(キリン)、白州(サントリー)に次いで5回目です。



  ウィスキーの蒸留所は、その製法上、きれいな水と豊かな森に囲まれているケースが多いので、結構ヒーリングに適しているのではないかと思います。敷地内に漂う、おからを思わせるモルトの匂いが好きな方ならなおさら。ウィスキーに興味がない方でもヨーロッパの田舎道を散策しているような気分を味わっていただければ楽しいのではないでしょうか。



  さて、宮城峡蒸留所は仙台駅から仙山線で約30分ほどの作並という所にあります。駅から歩いて30分位と聞かされていたのですが、



  10分ほどであっさりと蒸留所の入口、通称「ニッカ橋」まで到着してしまいました。しかし、実は敷地に入ってからが遠かったんですね。受付まで歩くことさらに10分、結局20分はかかると見て差し支えありません。



  宮城峡蒸留所は、その名の通り、新川(にっかわ)川(写真左)と広瀬川(写真右)に挟まれた、緑豊かな峡谷の地にあり、この地形がウィスキー作りに必要な、適度な霧を発生させます。なお、ニッカウィスキーのニッカは創業時の社名である「大日本果汁」の略称であり、この新川とは関係ありません。名称は似ていますが、全くの偶然です。

  さて、明日はウィスキーができるまでの工程を順々に追っていきたいと思います。

ニッカウィスキー宮城峡蒸留所

宮城県仙台市青葉区ニツカ1



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手作りハンバーガーのお店~COCOCHI BURGERS

2010年05月02日 | 食べ歩きデータベース


  正直に告白すると、僕は滅多にハンバーガーを食べに行くことがありません。あるとすれば、出張でフィリピンに行ったとき位です。そうなのですが、たまたまツイッターでフォローして頂いたcocochimariさんが、青葉区の藤が丘で手作りハンバーガーのお店をされているとのことで、お店のHPを見て少し気になっていました。

  気になったら、とにかく行ってみるのが僕の流儀。横浜在住ながら、田園都市線沿線にはほとんど縁がなく、もちろん藤が丘も初めてです。初めお店の場所が分からず、駅前のロータリーをうろうろしながらも、最後は携帯で検索した地図を頼りに辿り着きました。分かれば駅から1~2分のところです。



  さて、気になっていたというのはこれ、ベーコンチーズバーガー(1,250)。その理由は、1週間かけて手作りするという自家製ベーコンです。ホテルの朝食で出てくるカリカリベーコンをベーコンだと思い込んでいる僕にとって、ほのかなスモーキーさと旨みが広がるベーコンは全く否なるものです。チーズとの相性もさることながら、上の写真を見てお分かりのように、この手作りベーコンの味わいを単体でも楽しめるよう、あえてベーコンを長く、はみ出すように切ってあるのだそうです。

  ベーコンばかりでなく、ハンバーガーのハンバーガーたる所以であるところのバンズとパテにもこだわりがあるようです。詳しくはお店のHPをご覧いただきたいのですが、バンズは胚芽や玄米など特注の4種類から選べるほか、パテはつなぎを使わない100%ビーフです。パテを焼く前に下味をつけない方が良いというのは、どこか有名店のシェフも言っていました。滅多にハンバーガーを食べない男がいうのも生意気ですが、やっぱりパテはハンバーガーの命だと、食べてみて実感しました。

  また、忘れられがちなフレンチフライとオニオンリングもカリカリの揚げたてで美味しかったです。これ単体でビールのつまみになりますね。



  店内は普通のレストランのような感じで広く、アメリカの西海岸、またはハワイを感じさせる雰囲気になっています。お酒もあるのでちょっとしたパーティーもできそうです。また、トイレには英会話教室、書道教室、チョークアート教室、マッサージなどの案内が置いてありました。この広めなお店を使って英会話やチョークアートの教室などもされているようです。そういう「場」を通じた、地域とのつながりを大切にしているお店、これまでもいくつか出会ったことがありますが、素敵だと思います。

COCOCHI BURGERS

神奈川県横浜市青葉区藤が丘2-3 桂ビル1F



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2010年4月アクセスランキング

2010年05月01日 | 人気記事ランキング
  2010年4月にアクセスの多かった記事、ベスト10です。

  4月は幅広い話題にアクセスが分散しました。

1 エコノミーとエコロジーの語源
2 信玄餅の「桔梗屋」、工場見学
3 活魚 浜んこら
4 有限会社 正華 工場直売所「好」
4 江戸の古着屋
6 クリアフィールドウォーター
6 台湾のウィスキー、カバラン(KAVALAN)
8 NHK「古着は世界をめぐる」を観て
8 リサイクル軍手の工場見学
8 海鮮料理 魚春ととや
8 自由貿易の罠 覚醒する保護主義

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