「根来」 大倉集古館

大倉集古館港区虎ノ門2-10-3 ホテルオークラ東京本館正門前)
「根来」
10/3-12/13



朱色の玉手箱は大倉集古館をかつてないほど魅力的な場へと変化させました。大倉集古館で開催中の「根来」へ行ってきました。

私は今回の展示に大いに感銘を受けましたが、長々と書いてしまうにはやや時が遅過ぎたかもしれません。(既に会期末間際です。)ここは簡潔に、全体から特に印象に残った3つのポイントを挙げておきたいと思います。

1.「根来」とは何ぞやを体感的に味わえる。
百聞は一見にしかずという言葉が身に染みます。根来とは「黒漆を塗った上に朱漆を塗り重ねた漆器」(目の眼2009年11月号より)を指しますが、大倉の会場に一歩足を踏み入れただけで、その朱という色の美しさと、盆や器などの多様な形を楽しめること間違いありません。古くは室町にまで遡るというそれぞれの器は、長い歳月の中で歪み、また色を落としながら、まさに用の美と言われる独特な味わいを獲得していました。赤楽、また黒楽を愛でているような気分にもさせられます。

2.朱から広がる多様な表情の魅力。
元来、仏具や什器として使われたという根来は、そもそも実用品ではありますが、そこから広がるイメージは無限大と言えるかもしれません。ひび割れから覗く黒はまるでブラックホールのように深い闇をたたえ、逆に煌煌とともる朱は太陽の輝きを得て力強く放たれていました。朱と黒のコントラスト、色のムラから生まれる表情は、単なる工芸を通り越した何らかのメッセージを伝えるのに不足ありません。霞む雲、ざわめく水の流れというような自然を前にした時のような感覚から、ロスコ、さらには色こそ異なるものの、ザオなどの抽象絵画を見た時のような印象さえ受けました。

3.展示の妙。魅惑的な「根来インスタレーション」。
根来の繊細な表情を伺える環境が整っています。凝った仕掛けはありませんが、器の下に畳を敷き、時に経典と取り合わせた展示構成は、失礼ながらもこれまでの大倉にはない稀な空間を作り上げていました。また控えめなライティングも効果的です。剛胆でかつ押しの強い忠太の建築は、意外なほど根来の美しさを引き出しています。特に横一列、碗や杯などが、それこそ山の雄大な連なりのように並ぶ二階展示室正面のケースの美しさには体が震えました。

「目の眼2009年11月号 - 特集 根来」

私の拙い言葉をこれ以上に重ねても殆ど意味をなしません。根来に魂を吸い取られました。

13日までの開催です。お見逃しなきようご注意下さい。
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