都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「国宝 土偶展」 東京国立博物館
東京国立博物館・本館特別5室(台東区上野公園13-9)
「文化庁海外展 大英博物館帰国記念 国宝 土偶展」
2009/12/15-2010/2/21

東京国立博物館で開催中の「国宝 土偶展」のプレスプレビューに参加してきました。

(会場入口。DOGUの文字が目立っています。)
ずばり土偶展示の決定版となりうる展覧会です。その類い稀な魅力を前にすると、今更私の能書きを云々しても仕方ありませんが、以下に会場の風景を交じえて見どころを挙げてみました。ご参考いただければ幸いです。
・土偶インスタレーション
会場は本館の特別5室です。室内の様相はちょうど法隆寺宝物館の1階に似ています。照明の落とされた暗がりの中、360度の方向から見渡せるガラスケースにおさめられた土偶は、スポットライトの効果的な明かりを浴びて美しく輝いていました。その光景はまさに一つのインスタレーションと言えるのではないでしょうか。

(全景。ややゴージャスなムードが展示への期待感を高めます。特5ならではの演出です。)

(踊る土偶たち。ステップも軽やかでした。)
・国宝3点そろい踏み
土偶で国宝に指定されている作品は全部で3点ありますが、その全てが史上初めて一堂に会しました。実際のところ、鑑賞の観点から言ってしまえば、国宝指定云々というのは殆ど無関係(つまり他の作品も同じように魅力的です。)ですが、こうした一期一会の機会を逃さない手はありません。

(国宝「縄文のビーナス」。正式のタイトルです。豊満な肉体美はむしろミロのそれよりも艶やかでした。)

(国宝「中空土偶」。内部が空洞のものとしては最大級の大きさを誇ります。なお北海道随一の国宝指定作だそうです。)

(国宝「合掌土偶」。まさに祈りの土偶ではないでしょうか。その真摯な姿には心打たれました。)
・縄文の造形とその魔力
今回の展示では土偶に合わせて、縄文期の土器類が十数点紹介されています。その大胆な意匠に、縄文ならではの荒々しい表現の方向性を感じ取れるのではないでしょうか。

(重文「深鉢形土器」と「土偶把手付深鉢形土器」。渦巻き状の紋様の中に人が登場しています。祭りの景色を表したのではないかとされているのだそうです。)

(「釣手土器」など。前面は顔なのでしょうか。三方向に空いた穴が特徴的でした。)
・土偶の変遷を辿る
単に著名な土偶が並んでいるだけではなりません。長い縄文時代を通して作られた土偶は、年代によって特徴を変化させていきました。展示ではその経過をキャプションを交えて比較的丹念に追っています。

(初期の土偶各種。発生期には主に女性のトルソーを表現したものが作られました。左の重文「十字形土偶」が身もだえて叫んでいる人に見えるのは私だけでしょうか。)

(一転して土偶の終焉期に見られる作品も展示されています。土偶はそれ自体の機能を失い、主に容器として用いられるようになりました。)
・マイベスト土偶
プレビュー時に東博研究員の方が「お気に入りの一点を挙げて見て欲しい。」と述べておられました。あなたの一点、そして私の一点を挙げながら、土偶について思いを馳せるのも良いかもしれません。ちなみに私の一番好きなのは「遮光器土偶」です。東博の常設でもほぼ常に出ているので新鮮味はありませんが、物心ついたころから土偶と言えばこの不気味な出立ちのイメージが頭の中に出来上がっていました。

(月並みですがまさに宇宙人のイメージそのものです。)

(背面。当初は狩猟民族の遮光器姿を模したとされていましたが、他に類例はなく、現在ではのその定説は否定されているそうです。)
なお本展はタイトルにもあるように、大英博物館で2009年9月から約2ヶ月間行われた「THE POWER OF DOGU」の帰国記念展です。当地では延べ78000名余の入場者がありましたが、その際の感想として、先史時代の多様な日本文化への関心と、言わば一つの現代アート的な造形の面白さを挙げる方が多かったそうです。土偶の神秘性は見る側の想像力を強く喚起します。老若男女楽しめる、言わば非常に間口の広い展覧会と言えるかもしれません。

(「有孔鍔付土器」。恍惚した女性を捉えたとのことですが、どことなくコミカルな部分もまた魅力的でした。)
主に近代以降、日本で発掘された土偶は約17000から18000体に及びます。その多くが粉々に砕かれて原型をとどめない中、補修したものを含め、厳選の60数点が満を持して東博に集合しました。

「重文「ハート形土偶」。土偶の熱い視線を受けると後ろ髪をひかれます。彼女らの眼力は強烈です。)
既に評判も上々なのか、会場はなかなか盛況と聞きました。

(ご来場をお待ちしております。)
2月21日まで開催されています。(年末年始休館:12/28-1/1)
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
「文化庁海外展 大英博物館帰国記念 国宝 土偶展」
2009/12/15-2010/2/21

東京国立博物館で開催中の「国宝 土偶展」のプレスプレビューに参加してきました。

(会場入口。DOGUの文字が目立っています。)
ずばり土偶展示の決定版となりうる展覧会です。その類い稀な魅力を前にすると、今更私の能書きを云々しても仕方ありませんが、以下に会場の風景を交じえて見どころを挙げてみました。ご参考いただければ幸いです。
・土偶インスタレーション
会場は本館の特別5室です。室内の様相はちょうど法隆寺宝物館の1階に似ています。照明の落とされた暗がりの中、360度の方向から見渡せるガラスケースにおさめられた土偶は、スポットライトの効果的な明かりを浴びて美しく輝いていました。その光景はまさに一つのインスタレーションと言えるのではないでしょうか。

(全景。ややゴージャスなムードが展示への期待感を高めます。特5ならではの演出です。)

(踊る土偶たち。ステップも軽やかでした。)
・国宝3点そろい踏み
土偶で国宝に指定されている作品は全部で3点ありますが、その全てが史上初めて一堂に会しました。実際のところ、鑑賞の観点から言ってしまえば、国宝指定云々というのは殆ど無関係(つまり他の作品も同じように魅力的です。)ですが、こうした一期一会の機会を逃さない手はありません。

(国宝「縄文のビーナス」。正式のタイトルです。豊満な肉体美はむしろミロのそれよりも艶やかでした。)

(国宝「中空土偶」。内部が空洞のものとしては最大級の大きさを誇ります。なお北海道随一の国宝指定作だそうです。)

(国宝「合掌土偶」。まさに祈りの土偶ではないでしょうか。その真摯な姿には心打たれました。)
・縄文の造形とその魔力
今回の展示では土偶に合わせて、縄文期の土器類が十数点紹介されています。その大胆な意匠に、縄文ならではの荒々しい表現の方向性を感じ取れるのではないでしょうか。

(重文「深鉢形土器」と「土偶把手付深鉢形土器」。渦巻き状の紋様の中に人が登場しています。祭りの景色を表したのではないかとされているのだそうです。)

(「釣手土器」など。前面は顔なのでしょうか。三方向に空いた穴が特徴的でした。)
・土偶の変遷を辿る
単に著名な土偶が並んでいるだけではなりません。長い縄文時代を通して作られた土偶は、年代によって特徴を変化させていきました。展示ではその経過をキャプションを交えて比較的丹念に追っています。

(初期の土偶各種。発生期には主に女性のトルソーを表現したものが作られました。左の重文「十字形土偶」が身もだえて叫んでいる人に見えるのは私だけでしょうか。)

(一転して土偶の終焉期に見られる作品も展示されています。土偶はそれ自体の機能を失い、主に容器として用いられるようになりました。)
・マイベスト土偶
プレビュー時に東博研究員の方が「お気に入りの一点を挙げて見て欲しい。」と述べておられました。あなたの一点、そして私の一点を挙げながら、土偶について思いを馳せるのも良いかもしれません。ちなみに私の一番好きなのは「遮光器土偶」です。東博の常設でもほぼ常に出ているので新鮮味はありませんが、物心ついたころから土偶と言えばこの不気味な出立ちのイメージが頭の中に出来上がっていました。

(月並みですがまさに宇宙人のイメージそのものです。)

(背面。当初は狩猟民族の遮光器姿を模したとされていましたが、他に類例はなく、現在ではのその定説は否定されているそうです。)
なお本展はタイトルにもあるように、大英博物館で2009年9月から約2ヶ月間行われた「THE POWER OF DOGU」の帰国記念展です。当地では延べ78000名余の入場者がありましたが、その際の感想として、先史時代の多様な日本文化への関心と、言わば一つの現代アート的な造形の面白さを挙げる方が多かったそうです。土偶の神秘性は見る側の想像力を強く喚起します。老若男女楽しめる、言わば非常に間口の広い展覧会と言えるかもしれません。

(「有孔鍔付土器」。恍惚した女性を捉えたとのことですが、どことなくコミカルな部分もまた魅力的でした。)
主に近代以降、日本で発掘された土偶は約17000から18000体に及びます。その多くが粉々に砕かれて原型をとどめない中、補修したものを含め、厳選の60数点が満を持して東博に集合しました。

「重文「ハート形土偶」。土偶の熱い視線を受けると後ろ髪をひかれます。彼女らの眼力は強烈です。)
既に評判も上々なのか、会場はなかなか盛況と聞きました。

(ご来場をお待ちしております。)
2月21日まで開催されています。(年末年始休館:12/28-1/1)
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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