都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「清方ノスタルジア」 サントリー美術館
サントリー美術館(港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階)
「名品でたどる 鏑木清方の世界 清方ノスタルジア」
2009/11/18-2010/1/11
サントリー美術館で開催中の「清方ノスタルジア」へ行ってきました。
まず本展の概要、及び見どころです。
・浮世絵、また江戸情緒への関心など、清方の「古きよきものへの憧憬」に焦点を当てて回顧する。
・出品は約125点。ほぼ一度の展示替えを挟んで紹介。(前期:11/18-12/14、後期:12/16-2010/1/11)
・出品作のメインは鎌倉にある鏑木清方記念館の館蔵品。スペースの都合上、当地ではあまり多くの作品が展示されないため、それらをまとめて見る絶好の機会でもある。(出品リスト)
・サントリー美術館所蔵の浮世絵作他、屏風絵などを数点紹介。清方作とのコラボは成功しているとは言い難いが、展示の流れの良いアクセントにはなっていた。
決して凝った構成ではありませんが、折に触れて見ている清方の画業の全体像を追うのには卒がない企画だと言えるのかもしれません。比較的さらっと見終えてしまいましたが、以下、私の通った前期展示より印象に残った作品をいくつか挙げてみました。
「春雪」(サントリー美術館/通期)
ちらし表紙にも掲げられた、清方にしては比較的物静かな女性像。男性の着物を両手で捉え、憂い気味に見やる姿が描かれている。やや藤色が買った小袖の紫は、富士山の色からとっているのだそう。終戦直後の作品とのことで、帯の意匠の精緻な描き込みなど、戦時中、禁止されていたという美人画の復興にこめた清方の思いが汲み取れる力作ではないだろうか。
「妖魚」(福富太郎コレクション資料室/前期)
お馴染み「弐代目・青い日記帳」でも大推奨だった、清方の一種の「危な絵」とも言える作品。前期会期末の迫ったこの日にサントリーへ来たのも、ほぼこの一点を見たいがため。濡れた髪、不気味な微笑みに強烈なエロスを感じた。この目線の前に立つと身体が凍り付くような感覚さえ受ける。誘い込むようなポーズはむしろ危険だ。
「初夏の化粧」(名都美術館/前期)
胸元に着物をたぐり寄せ、うっとりとした表情で鏡を見やる女性が描かれている。後ろの燕子花は光琳よりも抱一を思わせる優美な表現だった。前期には抱一の画も出ていたそうだが、清方は何か彼へにシンパシーを感じていたのだろうか。(なお後期には抱一の画塾、雨華庵を描いた「雨華庵風流」の本画が出る予定。)
「明治風俗十二ヶ月(一月~六月)」(東京国立近代美術館/後期は七月~十二月)
春章の同名の作品に模した十二点の風俗画連作。ゆらりと水に流れる金魚を描いた六月が何とも涼し気。後期に出る後半部も是非見たい。
時に情緒にも流れ、また一面では人間の心理を冷酷な眼差しで捉える清方の至芸を堪能することが出来ました。
作品の大半の入れ替わった後期展示も始まりました。来年1月11日まで開催されています。
「名品でたどる 鏑木清方の世界 清方ノスタルジア」
2009/11/18-2010/1/11
サントリー美術館で開催中の「清方ノスタルジア」へ行ってきました。
まず本展の概要、及び見どころです。
・浮世絵、また江戸情緒への関心など、清方の「古きよきものへの憧憬」に焦点を当てて回顧する。
・出品は約125点。ほぼ一度の展示替えを挟んで紹介。(前期:11/18-12/14、後期:12/16-2010/1/11)
・出品作のメインは鎌倉にある鏑木清方記念館の館蔵品。スペースの都合上、当地ではあまり多くの作品が展示されないため、それらをまとめて見る絶好の機会でもある。(出品リスト)
・サントリー美術館所蔵の浮世絵作他、屏風絵などを数点紹介。清方作とのコラボは成功しているとは言い難いが、展示の流れの良いアクセントにはなっていた。
決して凝った構成ではありませんが、折に触れて見ている清方の画業の全体像を追うのには卒がない企画だと言えるのかもしれません。比較的さらっと見終えてしまいましたが、以下、私の通った前期展示より印象に残った作品をいくつか挙げてみました。
「春雪」(サントリー美術館/通期)
ちらし表紙にも掲げられた、清方にしては比較的物静かな女性像。男性の着物を両手で捉え、憂い気味に見やる姿が描かれている。やや藤色が買った小袖の紫は、富士山の色からとっているのだそう。終戦直後の作品とのことで、帯の意匠の精緻な描き込みなど、戦時中、禁止されていたという美人画の復興にこめた清方の思いが汲み取れる力作ではないだろうか。
「妖魚」(福富太郎コレクション資料室/前期)
お馴染み「弐代目・青い日記帳」でも大推奨だった、清方の一種の「危な絵」とも言える作品。前期会期末の迫ったこの日にサントリーへ来たのも、ほぼこの一点を見たいがため。濡れた髪、不気味な微笑みに強烈なエロスを感じた。この目線の前に立つと身体が凍り付くような感覚さえ受ける。誘い込むようなポーズはむしろ危険だ。
「初夏の化粧」(名都美術館/前期)
胸元に着物をたぐり寄せ、うっとりとした表情で鏡を見やる女性が描かれている。後ろの燕子花は光琳よりも抱一を思わせる優美な表現だった。前期には抱一の画も出ていたそうだが、清方は何か彼へにシンパシーを感じていたのだろうか。(なお後期には抱一の画塾、雨華庵を描いた「雨華庵風流」の本画が出る予定。)
「明治風俗十二ヶ月(一月~六月)」(東京国立近代美術館/後期は七月~十二月)
春章の同名の作品に模した十二点の風俗画連作。ゆらりと水に流れる金魚を描いた六月が何とも涼し気。後期に出る後半部も是非見たい。
時に情緒にも流れ、また一面では人間の心理を冷酷な眼差しで捉える清方の至芸を堪能することが出来ました。
作品の大半の入れ替わった後期展示も始まりました。来年1月11日まで開催されています。
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