都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「DOMANI・明日展2009」 国立新美術館
国立新美術館(港区六本木7-22-2)
「DOMANI・明日展2009」
2009/12/12-2010/1/24
国立新美術館で開催中の「DOMANI・明日展2009」へ行ってきました。
新美術館で2度、それ以前の損保ジャパン時代を含めると、今年で12回を数えるに至った展示ですが、一応、DOMANIとは何ぞやということで、その概要を公式HPから転載しておきます。
「DOMANI・明日展」は、文化庁の在外研修制度(新進芸術家海外研修制度)により、海外派遣された若手芸術家の成果発表の場として1998年より毎年開催され、今年で12回を数えることになりました。(全文引用)
ようは文化庁の海外研修制度に参加した現代作家によるグループ展です。少し前に話題となった仕分け作業によって「予算要求の縮減」と判定(参考リンク art-it:文化行政の「事業仕分け」について)され、今後の動向に予断を許さない面もありますが、本年は以下の12名の作家が登場しました。
磯崎真理子(彫刻)、呉亜沙(洋画)、浅見貴子(絵画)、高野浩子(彫刻)、久保田繁雄(繊維造形)、栗本夏樹(漆造形)、伊庭靖子(絵画)、吉田暁子(現代美術)、吉仲正直(絵画)、三田村光土里(ビデオ&インスタレーション)、藤原彩人(彫刻)、安田佐智種(写真)
作家の年齢(1942年生まれの方から90年生まれの方まで。)もジャンルも入り乱れています。(各ブースにそれぞれ一作家ずつ紹介。)いつもの通り、全体としてどうかを云々する展示ではありませんので、以下に早速、私の印象に残った5名の作家を挙げてみました。
藤原彩人(彫刻)
失礼ながら名前を存じ上げなかったものの、今回一番興味深かったのが藤原彩人の壁画的彫刻群です。実際の人と作品の大きさと見比べて下さい。イギリスの陶を学んで制作されたという巨大な陶人形は、滑稽な表情をしながら壁に沿って舞っています。虚ろな目、半開きの緩んだ口元など、どことなく漂う虚無感もまた楽しめました。それにしてもこのスケール、新美ならではと言えないでしょうか。まさに圧巻です。
伊庭靖子(絵画)
視覚から触覚を呼び起こす伊庭の絵画群は、その共通する清潔感にも由来するのか、意外と新美のホワイトキューブに似合っていました。実物よりもはるかに触りたくなるリネン、そして鏡を通して見るかのような陶器の独特な歪んだ質感表現は、単にリアルな絵画を描くだけではない、伊庭ならではの繊細な美意識が伺い知れます。鎌倉の個展を思い出しました。
高野浩子(彫刻)
テラコッタの「女神」たちが静かに立ち並びます。瞑想するかのように目をとじ、何者にも遮られないオーラを発するその姿には、誰しもが心ひかれるのではないでしょうか。ただし率直なところ、この空間には今ひとつ合いません。次は原美や庭園美などの借景のある場所で見てみたいものです。
呉亜沙(洋画)
可愛らしいウサギなどでもお馴染みの呉の絵画も、今回は立体を含めての出品です。作家自身のプライベートな経験もこめられたウサギの物語は、それこそ飛び出す絵本をひもといていくかのように展開していました。一推しは、東京の景色を一望に、頭からカラフルな枝葉を生やした女の子の立つ「樹海」です。高層ビルの林立するリアルな光景とのギャップが印象に残りました。
吉田暁子(現代美術)
ともすると殺風景なこの展示室にあえて簡素なインスタレーションで切り込みます。赤い絨毯の上の割れた椅子(座ることは出来ません。)から広がる絵画のかけらは、天井の上にまで吹き上げられて、空間全体を包み込んでいました。見立ての妙にイメージも広がります。
今年は新美の大きなホワイトキューブをより効果的に用いた展示も目立っています。大掛かりなインスタレーションなど、天井高に制約もあった損保会場時代とはほぼ別物の展覧会と言っても良いかもしれません。
ミュージアムショップでは出品作家に関連するグッズも僅かながら販売されていました。ひいきのひた押しではありますが、伊庭さんのめがね拭き兼用のハンカチ(500円)はずばり「買い」です。
なお新美の展示WEBサイトはあまりにも素っ気なく、作家のプロフィールすらありません。情報は広報事務局による展覧会HPか、あまりつぶやかれませんがtwitterアカウントを参照した方が良さそうです。
「DOMANI・明日展2009」@Art Venture Office SHOU(グッズ情報、展示風景などあり。)
domani2009@twitter
来年1月24日まで開催されています。(割引引換券ダウンロード)
*要注意:2009/12/22より2010/1/5まで設備維持管理の為休館
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
「DOMANI・明日展2009」
2009/12/12-2010/1/24
国立新美術館で開催中の「DOMANI・明日展2009」へ行ってきました。
新美術館で2度、それ以前の損保ジャパン時代を含めると、今年で12回を数えるに至った展示ですが、一応、DOMANIとは何ぞやということで、その概要を公式HPから転載しておきます。
「DOMANI・明日展」は、文化庁の在外研修制度(新進芸術家海外研修制度)により、海外派遣された若手芸術家の成果発表の場として1998年より毎年開催され、今年で12回を数えることになりました。(全文引用)
ようは文化庁の海外研修制度に参加した現代作家によるグループ展です。少し前に話題となった仕分け作業によって「予算要求の縮減」と判定(参考リンク art-it:文化行政の「事業仕分け」について)され、今後の動向に予断を許さない面もありますが、本年は以下の12名の作家が登場しました。
磯崎真理子(彫刻)、呉亜沙(洋画)、浅見貴子(絵画)、高野浩子(彫刻)、久保田繁雄(繊維造形)、栗本夏樹(漆造形)、伊庭靖子(絵画)、吉田暁子(現代美術)、吉仲正直(絵画)、三田村光土里(ビデオ&インスタレーション)、藤原彩人(彫刻)、安田佐智種(写真)
作家の年齢(1942年生まれの方から90年生まれの方まで。)もジャンルも入り乱れています。(各ブースにそれぞれ一作家ずつ紹介。)いつもの通り、全体としてどうかを云々する展示ではありませんので、以下に早速、私の印象に残った5名の作家を挙げてみました。
藤原彩人(彫刻)
失礼ながら名前を存じ上げなかったものの、今回一番興味深かったのが藤原彩人の壁画的彫刻群です。実際の人と作品の大きさと見比べて下さい。イギリスの陶を学んで制作されたという巨大な陶人形は、滑稽な表情をしながら壁に沿って舞っています。虚ろな目、半開きの緩んだ口元など、どことなく漂う虚無感もまた楽しめました。それにしてもこのスケール、新美ならではと言えないでしょうか。まさに圧巻です。
伊庭靖子(絵画)
視覚から触覚を呼び起こす伊庭の絵画群は、その共通する清潔感にも由来するのか、意外と新美のホワイトキューブに似合っていました。実物よりもはるかに触りたくなるリネン、そして鏡を通して見るかのような陶器の独特な歪んだ質感表現は、単にリアルな絵画を描くだけではない、伊庭ならではの繊細な美意識が伺い知れます。鎌倉の個展を思い出しました。
高野浩子(彫刻)
テラコッタの「女神」たちが静かに立ち並びます。瞑想するかのように目をとじ、何者にも遮られないオーラを発するその姿には、誰しもが心ひかれるのではないでしょうか。ただし率直なところ、この空間には今ひとつ合いません。次は原美や庭園美などの借景のある場所で見てみたいものです。
呉亜沙(洋画)
可愛らしいウサギなどでもお馴染みの呉の絵画も、今回は立体を含めての出品です。作家自身のプライベートな経験もこめられたウサギの物語は、それこそ飛び出す絵本をひもといていくかのように展開していました。一推しは、東京の景色を一望に、頭からカラフルな枝葉を生やした女の子の立つ「樹海」です。高層ビルの林立するリアルな光景とのギャップが印象に残りました。
吉田暁子(現代美術)
ともすると殺風景なこの展示室にあえて簡素なインスタレーションで切り込みます。赤い絨毯の上の割れた椅子(座ることは出来ません。)から広がる絵画のかけらは、天井の上にまで吹き上げられて、空間全体を包み込んでいました。見立ての妙にイメージも広がります。
今年は新美の大きなホワイトキューブをより効果的に用いた展示も目立っています。大掛かりなインスタレーションなど、天井高に制約もあった損保会場時代とはほぼ別物の展覧会と言っても良いかもしれません。
ミュージアムショップでは出品作家に関連するグッズも僅かながら販売されていました。ひいきのひた押しではありますが、伊庭さんのめがね拭き兼用のハンカチ(500円)はずばり「買い」です。
なお新美の展示WEBサイトはあまりにも素っ気なく、作家のプロフィールすらありません。情報は広報事務局による展覧会HPか、あまりつぶやかれませんがtwitterアカウントを参照した方が良さそうです。
「DOMANI・明日展2009」@Art Venture Office SHOU(グッズ情報、展示風景などあり。)
domani2009@twitter
来年1月24日まで開催されています。(割引引換券ダウンロード)
*要注意:2009/12/22より2010/1/5まで設備維持管理の為休館
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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