hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

スティーブン・ミルハウザー『マーティン・ドレスラーの夢』を読む

2011年12月04日 | 読書2
スティーブン・ミルハウザー著、柴田元幸訳『マーティン・ドレスラーの夢』白水Uブックス171、 2008年8月白水社発行、を読んだ。

野原の高層ビルが次々と建っていく興隆期のニューヨークに生まれたマーティン・ドレスラーは若く才能溢れ、努力家でもあった。父親の葉巻販売店を手伝い、工夫を重ね売上を伸ばす。ホテルのベルボーイに採用され、夜昼2つの商売に精を出す。やがてホテルで出世を重ね、ホテル内に葉巻販売店を出店し、いくつもの仕事を成功に導く。
立身出世を重ねる中で、彼は何か満たされない思いを抱く。やがて自ら理想とする新しいホテルを作るまでになり、評判を呼ぶ。人々の期待を上回る従来にない革新的ホテルを次々と建てるが、やがてホテルというより街そのものといったものになり、・・・。



スティーブン・ミルハウザー Steven Millhauser
1943年ニューヨーク生れ。コロンビア大学卒。
1972年本書「エドウィン・マルハウス」でデビュー、フランスのメディシス賞(外国文学部門)受賞
1998年「ナイフ投げ師」でOヘンリー賞受賞
1996年『マーティン・ドレスラーの夢』でピューリッツァー賞受賞。

柴田元幸(しばた もとゆき)
1954年東京生まれ。東京大学教授、専攻現代アメリカ文学。翻訳者。訳書は、ポール・オースター、ミルハウザー、ダイベックの主要作品、レベッカ・ブラウン『体の贈り物』など多数。著書に『アメリカン・ナルシス』『それは私です』など。『生半可な学者』は講談社エッセイ賞を受賞。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

内容に興味を持てるかどうかは人によるが、ともかくよく書き込めている。なにしろピューリッツァー賞受賞作だ。

ニューヨークの興隆にあわせて主人公の出世ぶりが、ちょっと一本調子だが鮮やかだ。厚かましいところもなく、細かいところにも手を抜かず、周りの人にも配慮を欠かさない点は好感を呼ぶ主人公だ。

前半は立身出世物語で、自分で理想のホテルを建てるころから、話は幻想的になる。人々の期待通りの評判を呼ぶホテルを建て、次には期待を上回るホテル、そしてもはやホテルとは言えない夢想的、幻想的ホテルを建てて、ついにはっきりと姿を現した彼の夢を実現すると同時に・・・。ドレスラーのしつこい描写と共に、いつものパターンといえばいえるのだが。

ホテルに宿泊する夫人と娘2人との交流は私には今ひとつピンと来ない。必要性があったのだろうか。



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