知念実希人著『屋上のテロリスト』(光文社文庫ち5-2、2017年4月20日光文社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
一九四五年八月十五日、ポツダム宣言を受諾しなかった日本はその後、東西に分断された。そして七十数年後の今。「バイトする気ない?」学校の屋上で出会った不思議な少女・沙希の誘いに応え契約を結んだ彰人は、少女の仕組んだ壮大なテロ計画に巻き込まれていく! 鮮やかな展開、待ち受ける衝撃と感動のラスト。世界をひっくり返す、超傑作エンターテインメント!
太平洋戦争後、日本は、東京を首都とする西日本共和国と、仙台を首都とする東日本連邦皇国に分断された。西日本側の群馬、埼玉、東京と、東日本側の福島、栃木、茨城、千葉の間に数百キロにも及ぶコンクリート製の巨大な壁が建設され、その高さは5~20メートルに及んでいた。
終戦直前に新潟に原子爆弾が落とされ、新潟県の国境には壁は築かれず、日本国家友好会館、通称『関所』があった。
酒井彰人(あきと):主人公。西日本の高校生。両親が死んで、たがが外れ、「死」に恋している。校舎の屋上から飛び降りようとするときに、沙希から危険をものともしない人を求めていたと、バイトに誘われる。沙希は仕事が終わったら報酬として私があなたを殺してあげると拳銃を見せた。
佐々木沙希(さき):彰人と同じ高校に通う不登校児。テロリスト。美人。西日本の巨大企業群・四葉グループ会長。執事は佐藤。
西日本共和国:奇跡的経済発展を遂げた。アメリカからの最新装備を持つ。
カリスマ性ある二階堂大統領。狸おやじの国務長官・曽根。真面目な国防長官・郡司。優秀な首席補佐官・岡田。
山辺:東への強硬策を主張するデモを組織するNPO代表
森岡秀昭:母を殺され東側に恨みを抱き、山辺に従う。祖父は花火師の源二。
東日本連邦皇国:社会主義国家となり時代に取り残される。ロシア・中国からの型落ち装備。
最高指導者・芳賀日本社会労働党書記長。陸軍トップ・久保元帥。特殊攻撃部隊(EASAT)隊長・用賀少佐。
本作品は文庫書下ろし。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
ヤングアダルト風で、ともかく面白く読める。
当初から沙希は悪人として描かれていないので、テロリストといっても目的も手段も、少なくとも悪辣なものではないことは想定できてしまう。しかし、彼女は一体具体的にどんな計画を企てているのか? なぜ東側に協力しているのか? 疑問は膨らみ、引き込まれていく。
沙希の困難と思える計画は、次々成功し、心地よいほどの快進撃だ。登場人物も裏もなくわかりやすく、ご都合主義で軽快に進む。あえてノリノリで漫画を読んでいる気分となって、変に疑問を持たなければ、ご機嫌に読める。もちろん、それでも最後はハラハラさせてくれるし、まあまあ面白く気楽に読めた。
蛞蝓(ナメクジ)