桐島洋子著『ほんとうに70代は面白い』(2014年12月17日海竜者発行)を読んだ。
2008年、2009年頃に各メディアに載った約45編を集めたエッセイ集だ。
「聡明な女は老いを楽しむ」
50歳で子育てを終えたとき「林住期」の旗を掲げてエンジンを切り、・・・カナダのバンクーバーに海と山と森を望む「林住庵」を設けて豊かな自然と親しみ・・・。
そして古希の祝いの席で宣言した。
「・・・七十代は再び家住期に軸足を戻してエンジンを再始動し、最期のご奉公と思って日本に向き直り、しっかり一働きします」
以下、自宅で開催する私塾「森羅塾」の話が続く。
「エイジングとは熟成すること」
心ある後輩の方々は、先輩を「お若い」ではなく「お綺麗」とか「お元気」とかいって褒めて下さいね。
一人暮らしの伯母が重症の脳梗塞で病院に運ばれた。駆けつけた桐島さんはものの見事に整理整頓された留守宅を見て胸を衝かれた。
遺言書はもちろんのこと、入院したら連絡する人と、死亡の場合だけ通知する人のリスト、各種支払いの明細、延命治療拒否の書類、献体登録書と死体引き取り先の電話番号まで記されている。
・・・
いささかの甘えもなく自力で人生を全うしようという覚悟はご立派としか言いようが無いが、ここまで伯母が強くならざるを得なかったことが何か哀しい。
「私は遠慮なくあなたたちの世話になるからね、覚悟しなさいよ」と、子供たちに言い渡しておこう。
「本物の贅沢」
バンクーバーでの生活の素晴らしさ。
「自分の身体にありがとう」 歩の心得、減量への道、正しい呼吸法、・・・
「足るを知る」 略
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
著者の合理的な考え方には、そうだ、そうだと賛成することが多い。割り切った考え方で、さっぱりしているのだが、知性も思いやりもあり、矜恃さえあると思える。オシャレでもあり、女性の一つの理想形とも思える。
なら、なぜこのエッセイ集は「三つ星」かというと、数年前に書いたと思われる古いものが多く、エッセイ集はどれもそうなのだが、本としてのまとまりがなく、ダブりも多いためだ。
私は桐島さんには幾度かお会いしたことがある。バンクーバーでお会いしてお菓子の家のような桐島宅を訪問したり、この本にも出てくる「古希の祝いのパーティ」に参加したりした。東京のオトナの寺子屋「森羅塾」にも一度お邪魔した。歳を感じさせない早足と早口には驚かされた。
「Capilano Golf Clubでパーティ」
桐島洋子(きりしま・ようこ)
1937年東京生まれ。作家。
1972年『淋しいアメリカ人』 大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
以来著作・テレビ・講演などで活躍しながら、かれん(モデル)、ノエル(エッセイスト)、ローランド(カメラマン)の3児を育て上げる。50代で子育てを了えてからは、“林住期”を宣言。仕事を絞り、年の数カ月はカナダで人生の成熟の秋を穏やかに愉しむ。
70代からは日本で、マスコミよりミニコミを選び、東京の自宅にオトナの寺子屋「森羅塾」を主催している。
その他、『マザー・グースと三匹の子豚たち<』『ガールイエスタデイ -わたしはこんな少女だった-』(絶版)『わたしが家族について語るなら』『バンクーバーに恋する』『林住期ノート』、『刻(とき)のしずく 続・林住期ノート』と、『林住期を愉しむ 水のように風のように』