かぶれの世界(新)

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ベトナム時代の装備で戦う米軍

2004-12-27 22:02:28 | 国際・政治
先週バグダット北部のモスルにある米軍基地内の爆発で20人余の死者が出、世界に衝撃を与えた。ファルージャ制圧後、反乱軍はモスルなど他の都市に飛散しテロを続けている。当初は基地外からのロケット弾がキャンプに命中したといわれていたが、後に米軍が雇った基地内労働者が自爆テロを起こしたと判明、労働者の採用手続き(vetting process)の妥当性について疑問が投げかけられた。しかし、他にも悩ましい問題がある。

この少し前にイラクを電撃訪問したラムズフェルド国防長官が多数の兵が参加する集会で、クェートからイラクに移動する「トラックは何故こんなに旧式で、兵士がゴミ捨て場をあさり鉄板を探し出して補強しなければならないのか」と厳しい質問を投げかけられ返事に窮した長官は「希望通りでなくとも軍隊は行かねばならない時は行かねばならない。」と答え、その画像が全世界に流され命を賭けて戦っている兵士やその家族に対して感性に欠けると波紋を呼んだ。長官の答えは決して常識はずれではないが、結果的にイラク戦争の危険性を肯定したことになり、ブッシュ政権にとっては痛手となった。

この経緯はNHKのTV放送でも詳しく報じられた。彼らは陸軍兵ではなく、州兵とその予備役である。ベトナム戦争時代と異なり現在は全て志願兵からなる。州兵の多くは除隊後の大学教育の奨学金を得る為、又、予備役手当て(月300ドル程度)を生活の足しにする為の手段となっていた。米国の友人の中にもそういうキャリアのものがいる。しかし、イラク戦争勃発し長期化の様相を示し始めた頃から事態は変わった。予備役は月々300ドルもらっていた為、図らずもイラクに送り込まれる運命になった。まさかこんな泥沼に入り込むとはブッシュ政権も軍も予想していなかったので十分な準備が出来ず、州兵は所属部隊にあるベトナム戦争時代の装備を持ってイラクに行くことになった。その結果、州兵の死亡率が高いとか、道路サイドに仕掛けられた爆弾での死亡が多い、モラルが低下しているとの報道がある。それが長官への質問が出た理由である。

12月20日号のタイムは如何に計画が狂ったのか詳しく報じている。 現在イラクに保有しているハンビー(humvee: ジープの後継、ランドクルーザのような形をした装甲車)のうち、5910台が完全装甲、9134台が補強、残り4345台は装甲なしの状態である。完全装甲車とは映画「ブラック・ホーク・ダウン」にもなったソマリア内戦での経験から見直され車内の兵を守る為の装甲が強化されたハンビーで1台18万ドル(約2000万円)する。 

軍は最初235台しかフル装備のハンビーを用意しなかった。ところがブッシュが昨年5月主要な戦闘は終結したと宣言した時から装甲車の需要が高まり、5ヵ月後に3100台、今年初めに4000台、ついに先月8105台と現地軍司令官は必要な台数を増やした。シンシナティにある製造会社は生産能力を戦争開始時の月30台から550台に上げたと先週発表した。

この例はバグダット陥落後の反乱がシナリオになかった事を良く説明している。ブッシュ政権はその次のステップとして1月の選挙後のシナリオをどう描くか悩みが大きい。ラムズフェルド国防長官の信頼が崩れかけようとしており、ライス国務長官の手腕が試されようとしている。その結果が出るのもそう先ではない。


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