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Lenovo, IBMPC買収の別の意味

2004-12-09 13:37:18 | 国際・政治
IBMはPC事業を中国のトップPCサプライヤーLenovo(聯想集団有限公司)に17.5億ドルで売却することが決定した。 中国人民の驚きと誇りの表情が昨日のTVで放送されているのを見て感慨深いものがあった。バブル時代初期あるいはもう少し前だったかと思うが、日本がアメリカの象徴を買い始めた時のことを思い出す。その後何か変だなと思いながら何年も迷走したのだが。しかし、この買収は色々な可能性を秘めた興味深いものである。

運命論的に言うと1981年IBMがPC事業に参入した時、今日の売却のレイルをIBM自身が敷いた。IBMの参入は玩具と見做されていたPCにお墨付きを与え企業が購入するきっかけとなった。IBMのPCアーキテクチャーはIntelのCPUとMicrosoftのOSをベースにして世界標準となり、誰でも容易にPC事業に参入できるビジネスモデルを作り上げた。IBMは参入を急ぐあまり付加価値の殆どをMicrosoftとIntelに与えた。結果として当時まだ弱小企業だった両社に力を与え、「ムーアの法則」を開発戦略に絶妙に組み込んだ鉄壁の「Wintel」ビジネスモデルが出来上がった。80年代は業界リーダとしてIBMブランドの付加価値を売りに出来たが、IBMといえどもこの余りにうまく出来たビジネスモデルの下から抜け出せず衰退が続き、サービス事業へ構造改革したIBMの撤退は時間の問題だった。

Lenovoは中国市場において常にシェアトップであったが、市場成長につれサービス戦略に優れるDellがシェアを上げ、ノートブックPCではIBMの急成長を横目にジリ貧状態にあった。報道によると買収後IBMのPC関係従業員約1万人と組織はそのまま新会社に移行するということで、Lenovoが欲しかったブランド、技術、品質管理、サービス、世界企業顧客などが手に入るようである。両社の文化の違いを克服し、夫々の特徴が生かした事業運営ができればこの買収は成功するであろう。

実は、私はこのニュースを知った時から別の視点で注目していた。それはIBMが所有する膨大な知的財産である。IBMは先進的な特許情報管理で知的財産を守りつつ、世界中の有力IT企業とクロスライセンス契約を結びトータルとして特許の有効活用を図る姿勢を貫いてきたと私は思う。私自身、個別案件でIBM特許を脅威に感じたことがあり、逆に直接このクロスライセンス契約の恩恵を被った事が何度かある。一方、中国企業は概して知的財産に対する認識が薄く(時に国家ぐるみで)、国内市場はさておき今後海外進出時の障害になることは間違いないと思っていた。報道では定かでないが買収の形態から推測するに、PC関連の特許は全て新会社に移行されるはずで、Lenovoは一気に免罪符を得たと思われる。国内市場では海外企業を含む競合に対し優位に立ち、海外市場では日本を含む海外企業とも対等な立場での知的財産に関する交渉が可能になったと考える。WTO加盟後知的財産権の保護強化を推進しなければならない立場にある中国政府の良い例になるはずである。知的財産の重石が取れることは新会社の運営にとって計り知れない効果をもたらす。1-2年後にはこの知的財産を見直し防御だけでなく攻撃的な戦略に転換する事もありうると考えられる。LenovoとIBMの合体が低価格PCの世界展開とだけ見ると誤る。今後の契約の詳細と新会社の動きを見守りたい。


コメント (3)
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