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海証券市場の2月末の暴落に端を発した世界同時株安後、2ヶ月間続いた調整がほぼ終り、新たな傾向が見え始めた。一時債券市場に退避したリスクマネーが世界の株式市場に戻り始めた。しかし、同時株安前とは異なる国の株式市場に戻っている。
要約するとリスクマネーは各国市場を再評価し、新たなリスク配分で再投資された。投資先が調整された結果、BRICsに続いて成長が目覚しい途上国に厚く急上昇、それに欧州が続き堅調、米国は先行き不透明感でじり高、日本は売りが優勢で水面下でもがいている。
1)暴落の端緒になった上海A株とトルコ・インドネシア・メキシコ等BRICsに次ぐ発展途上国が暴落前より更に2桁以上(10-25%)株価が上昇した。
2)好調なドイツに牽引された欧州各国市場が暴落以前の株価を上回るペースで上昇を継続している。堅調な経済を背景に金利上昇とあいまってユーロが史上最高値を付けた。
3)米国経済は住宅市場停滞の影響を受け先行き不透明、かつイラク戦争で財政悪化・厭戦気分がブッシュ政権の信頼を損ない指導力低下を反映、ダウ平均が史上最高値を打ったとはいえ2-3%の上昇に留まっている。
4)日本だけは円安のフォローの風で輸出が好調にもかかわらず、主要30カ国で同時株安以前から株価が回復しない唯一の国となった。当面金利上げも予想されず円キャリートレードも続いている。
戦後最長の経済成長が続いているとされている日本だが、調整後のグローバル市場では評価が非常に低かった。好況とはいえ国内消費が弱く企業業績は輸出頼みで脆弱、個人投資家も積極的に国内市場に投資する環境にないのが一因になっている。
潜在的に最大のリスクは米国の信頼に陰りが感じられることだ。住宅不況に基づく経済の先行き不透明感に加え、イラク戦争が泥沼に入り戦費膨張・厭戦気分が広がってブッシュ政権の信頼が傷つき、ドル売りが始まると世界経済が混乱する可能性は高まりつつある。
そこまでは行かないにしても、万一米国の経済成長が停滞し世界経済の牽引役を果たせなくなった時、幾ら中国など成長途上国や欧州が元気でも世界経済を引っ張れるのか、多くのアナリストは問いかけ明確な答えを出せないでいる。それが分かる頃は手遅れになっているかもしれない。■