かぶれの世界(新)

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迫り来る中国株暴落の危機

2007-05-22 09:56:37 | 社会・経済

国の都合の悪いニュースが最近になって一般紙でも流れる頻度が増えてきたように感じる。朝日新聞など主要一般紙の一部では中国関連の報道を抑制してきたが、力不足ではあるものの以前に比べ汚職や人権侵害から食料汚染まで詳細を報じるようになった。

その中で最近中国の株式市場がバブル崩壊前の日本を彷彿させる危険を冒しているという報道が私には気になる。絶好調の中国経済がいつまで続くか、北京オリンピックまでとか上海万博までとかというのが昨年までの最大のテーマだった。

ところが今年2月に世界同時株安が勃発した頃から別のもっと近くの足元で落とし穴があるという恐れが出てきた。それは急激に膨張している中国の株式市場だ。昨日朝日新聞は明確に上海株式市場がバブルでありそれがいつはじけるか、或いは軟着陸可能かビル・エモット氏の評論を掲載していた。

株式市場に群がる中国市民

実態は高騰する中国株式市場の分け前に群がる投資家の初心者達が事業内容や業績も調べもしないで猛烈な勢いで株に投資をしている。年金生活者や学生などの低所得層が借金をして投資しているという。

2001年の投資ブームに比べ中国投資家の裾野が広がり、いまや証券会社などに個人が所有する投資口座が9000万を超えたという。当時に比べ借金できる資産があるだけ豊かになったとみなすことができる。時価総額が昨年から130%増え、香港市場を越えたという。

投資さえすれば儲かる状況下で、銀行融資が低利、それがダメなら農民に無担保高利で株式投資資金を貸し出す無許可の貸金業者まで現れた。携帯電話から株の売買やブロードバンドの普及で技術的に投資しやすい環境が出来、勤務中にオンライン取引するなど正に日本のバブル狂騒時代を彷彿させる。

対策に悩む中国政府

2001年と比べ株価が暴落すると中国の繁栄を支える数千万の都市部の中流階級が壊滅的な影響を受ける規模になった。中国政府はその危険性に十分気付いているとエモット氏は述べているが、エコノミスト誌はどうやって市場を冷却するか政府は自信を持てないでいると見ている。

中国政府、特に温家宝首相は経済成長を均衡させ持続性のあるものにする為、保健医療や教育などに振り向けるべきと訴えてきたが、現実には投資だけが増えている。数回の利上げも準備金積み増し要請後も何の効果も見られず、何が有効な手か迷っているという。

株高が新興中産階層を厚くさせ国営企業の民営化の推進力として頼りにする一方で、投機の抑制が効きすぎて市場を急激に冷却させると都市部の中産階級の財産が毀損され、その怒りが党に向かうのを恐れ適切な手が打たれず市場が暴走を続けているという構図だ。

しかし、この急成長は持続不可能である。きっかけは噂による株式暴落かもしれないし、米中貿易摩擦も考えられる。軟着陸する為には中国政府の「政治的合意」による政策変更(公共投資の増加など)が最も望ましいとエモット氏は指摘している。

暴落は避けられないか?

中国の初心者投資家の熱狂振りを見ると、噂が噂を呼んで市場が一気に動揺する可能性が高まっている。実際、227日に続き419日にも暴落の兆しが見えた時も、第1四半期のGDP成長率が予想を上回る11.1%との発表に、金融引き締めを予測して市場が動揺したという。

又、全ての中国企業の業績が良いわけでもない。514日のビジネスウィーク誌はパソコンから半導体、液晶までハイテック企業が世界市場で苦戦していると報じている。自前の技術がなく資本が不足している上に、政府の過剰介入が裏目に出て足を引っ張っている。株価は必ずしもこのような状況を反映したものにはなっていない。

中国の投資家もこのまま続くはずがないと思っているが、そう言いながら誰も賭けから降りない。日本のバブル時代の心理と同じだ。中国政府の政策も降圧剤とカンフル剤を同時に処方するものにならざるを得ないだろう。結局、まだ記憶に新しい「いつかきた道」を辿る可能性が高い。

幸い4月の上海市場下落時には世界市場は反応しなかった。もし中国のバブルがはじけたら最も影響を受けるのは日本だとエモット氏は指摘している。それはある意味楽観的に過ぎると思う、グローバリゼーションで世界中が密接に関係しあう今、影響は瞬く間に世界中に広がるだろう。

SARSが蔓延したとき北京は隠蔽し対応が遅れた。しかし市場暴落は一瞬にして世界に伝染する。グローバルな防疫体制の構築が重要だ。中国の問題だと高みの見物は出来ない。■

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