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格差問題のすれ違い議論

2007-05-04 21:37:27 | 国際・政治

議論が上滑りする格差問題

依然として格差の議論が続いている。「格差」という言葉は連日どこかのメディアで必ず見かける。「品格」が何にでも引用され安っぽい印象を与えたと同じく「格差」も陳腐化してきた。民主党はメディアでの扇情的な扱いを見て格差問題を参院選の主要争点にすることを決めたようだ。

しかし、どうも問題の全体像を把握しておらず、議論が上滑りしているように私には見える。ワーキングプアとか貧困層、弱者を一括りで格差と捕らえて議論するのは無理がある。格差問題が貧困層の増大なのか、格差拡大なのか、富裕層への富の集中なのか都合よく使い分けられ定義が明確でない。以下に典型的な例を示す。

1)老人の医療費負担増の問題では、実は日本の老人世代は世界で最も裕福でこの10年を振り返っても最も資産を増やした人達である。増税は現役世代の負担を増やし、保険料アップは次の世代に負担を先送りするが、何故か老人世代の資産を利用した自己解決は議論されない。

2)史上最長の経済成長でも労働分配率が向上しないのは、グローバル市場に共通な傾向で日本だけ逃れることは出来ない。日本企業の利益の殆どは世界市場からで、実態は世界中で従業員が働いている世界企業であるという認識がない。

3)格差問題は配分という相対的な議論だけでなく、同時に最低生活ラインがどこなのか絶対値で考える必要がある。相対的な議論はやりすぎると悪平等になる。今後も優秀な経営者や技術者がイチローや松坂のように世界に出て行き活躍すればグローバル・クラスの収入を得る。それで相対的な収入の格差は益々開いたと問題にするのは筋違いである。

民間の血の出るような構造改革と中国等海外への生産移行による低価格輸入品の増加によりデフレ基調が続いてきた。先に紹介したようにユニクロから始まり100円ショップまで低価格輸入品が完全に市民権を得た。残るは官僚の利権に係わる高コスト構造が最大のテーマである。

格差問題の切り口を見直せ

都知事選で格差問題は東京では争点にならない、都民の大多数は心理的に勝者だと考えており、配分よりもパイを大きくするほうに関心があるはずと予測した。東京は地方自治というより国政の前衛であるという性格が益々強くなっている。格差問題の提起の仕方が適切ではなかった。

私はメディアや野党の格差問題の切り口に前々から疑問を持っていた。困窮者の悲惨な状況を闇雲に取り上げ、その原因を安易に構造改革に求める姿勢が多数の共感を得られないからだ。少なくとも政治的な争点が具体的な行動を生む建設的な議論になっていない。選挙民は冷静に判断したと思う。

庶民が最も強く反応するのは格差問題ではなく、不正や腐敗に対してである。庶民自身が必死で頑張って生きている人達であり、困窮者に同情はしても彼等が十分自助努力しているのか疑いを持っている。言い換えると不正追求と改革は全体の問題として票になるが、格差は全体で共有されず票にならないのである。即ち、最終的にアクションに繋がらないからである。

格差問題を年齢とか収入・資産で分類し老人と若者の世代間の対立と見做せば、老人人口が多い上に投票率が高く、端から勝負は決まっている。世代でなく収入で分類すると格差を説明できるが解決は困難だ。これについて鈴木貴博氏が興味ある分析をされている記事を最近見つけた。

格差の敵は中流層か?

それによると、日本の最低税率10%が適用される層が何と81%もいるのだそうだ。即ち、日本の中流層は貧困層のための最低税率の恩恵を受けている。確定申告される方なら良くご存知の各種所得控除のお陰で、税金の累進性が全く機能していない。これが中流層の既得権益になっていると鈴木氏は説いている。

先の定率減税廃止時のテレビ評論家諸氏が一斉に増税と大騒ぎした。鈴木氏の指摘のように税制の面から格差に対応しようとすれば貧困層下位2030%の税率を下げ、それ以上の中流層の税率を高めることになり大反対にあうだろう。格差問題を何処で線引きするかそれ程簡単ではなさそうだ。

つまり、税制においては中流層と貧困層は利益が相反しており、政治家は大票田の中流層の反発の危険を冒して税制に手を付ける可能性は極めて少ないということである。統一地方選の結果を見ても私は格差問題が選挙結果を左右したとは思えない。

現在議論されていることが格差を生み固定化させるとは思えない。欠けているのは世界で何が起こっているか原因分析と理解だと私は考える。この格差問題を生む世界経済的な仕組みの変化については構造的な救済が可能か次回議論したい。

現状では格差問題を主要な争点にするより、貧困層のみにフォーカスしその救済策を議論すべきである。同時にグローバル市場で如何に勝者を増やすか、その報酬の大きさに驚かずパイを大きくする為に何をするか議論すべきだ。それが最大の票田である中流層の支持を繋ぎとめ、グローバリゼーション下で我国が主要なプレイヤーであり続ける唯一の道である。■

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