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月初めに東京に戻ってくると市役所から無料健康診断の通知が届いていた。近所のかかりつけに行く積りだったが、家内の勧めで少し遠くの設備の整っている救急病院に行くことにした。その日は9月半ばといえども残暑が厳しく、暑さでうんざりしながら自転車で病院に向った。
血液採取・眼底検査・エコー・心電図から身長や体重まで一通り測定が終ると、看護婦さんの指示に従い廊下に出て血圧を測った。すると血圧が170以上もあり慌てた。こんなはずではと思い測り直す度に測定値が上がっていく。最初に測った低めの血圧を看護婦さんに申告して、2週間後の10月初め先生の所見を聞くことになった。
その日も暑かった。病院について血圧を測ったが前回と大差なかった。私の「3高問題(高尿酸・高脂血・高血圧)」がぶり返し退職時の値に戻っていた。3年間かけて苦労して構造改革した身体が台無しになった。先生の所見は「要治療」でかかり付けの医者に直ぐ行きなさいと言われた。
素人判断ながら原因は分かっていた。暑さだけが原因ではない。言い訳がましいが、夏に田舎で母の相手をし、農作業に励み、土地の行事に参加などで溜まったストレス解消を理由に、長い間控えていた肉やチーズなど脂分の多い食事の量が増え退職時の体重に戻ったのが原因に違いないと思った。
医者に通い、血圧と尿酸を下げる薬を処方され、死ぬまで毎日薬を飲む羽目になりたくなかった。もう一度生活習慣を改め体重を減らし、薬ナシで「3高問題」を何とか治めたかった。きつい運動を週3回、軽い歩行を週2-3回やっていたので、あとはもう一度食習慣を改善するしかない。
家内に頼んで肉食を減らし、野菜・果物を食べ、寝酒のアルコール量と脂成分の多いツマミを減らした。朝と昼のコーヒータイムのクッキーやケーキを減らし、なるべく果物を食べるようにした。しかし、どうにも口が寂しくて節制が続かない。と、思わぬ助けが入った。
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月中頃に八百屋に柿が並ぶようになった。種無し柿や渋抜きの平柿から始まり、次郎柿・富有柿と日々種類が増え安くなってきた。私は子供の頃から柿が好きで、お腹が空くと庭の木の柿をもいで食べた。少し硬めの富有柿を良く食べた。今も好みは変わっておらず、毎日のコーヒータイムは3個の柿に変わった。
暫らく経つと、小便の出が良くなった。身体から絞るように水分が出て行く気がする。全く科学的根拠が無いのだが、コーヒーより利尿効果が大きい気がする。ネットを調べたが柿が利尿効果がある、身体にいいなんていう記事は見つからなかった。
しかし、結果として体重が4kg減、血圧も徐々に下がり、軽症の高血圧領域まで下がった。実感としてはアルコールの量と頻度を減らしたことより、この「柿ダイエット」を始めた頃からの効果の方が大きかったような気がする。
今も二日に一度は八百屋に行き柿を買ってきて食べ続けている。お陰で行きつけの八百屋の威勢のいい姉さんと顔見知りになった。何時頃どういう品種が出て来るかとか、何処の産地の柿がいいかとか。彼女によると寒くなると富有柿は柔らかくなり売り物にならなくなるそうだ。もう直ぐだ。
とすると富有柿の季節が終ると次のダイエットは何にするか悩ましい。仮に「柿ダイエット」がうまく行ったとしても、「努力→改善→慢心→再発」のサイクルは私のDNAにもしっかり組み込まれている。薬を飲んで何も気にすることなく好きなものを食べ酒を飲むほうが賢いかも。■