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ブプライム問題に端を発した世界連鎖信用不安は、その後3ヶ月間で日本一人負け状態に発展していると先月末「縮小する日本」と題して書き込んだ。
しかし一人負けではない、連れが出来たようだ。持ちこたえていると思われた米国経済がおかしくなってきた。先週シティバンクやメリルリンチ等大銀行からGE金融子会社までが巨額損失を計上し、サブプライム問題が何時までたっても先の見えない底なし沼であることが明らかになった。
サブプライム合計200億ドルのまだ半分は損失が表面化していない(NYtimes11/8)といわれ、この先誰が痛手を被るのか市場は疑心暗鬼に陥っている。当初ヘッジファンドだけかと思いきや大銀行に問題が波及し、米国経済は大事になっているという見方に変わった。
NY証券市場が暴落、ドル安が急速に進む一方で、原油価格が100ドルに迫りユーロが史上最高値を付けた。サブプライム問題が直ちに収束する見込みは無く来年に持ち越し、他の分野への影響が波及するのは必至となった。
ドル安は米国企業の業績向上に貢献しているがそれは一時的なもので、結局のところ通貨が下落すれば経済の評価が下がることであり、後に必ず弱気市場が来るのは歴史上の事実だとCNN Money(11/9)は予測している。既に投資家は弱気モードに入ったように見える。
投資するなら多国籍大企業か外国政府の国債が安全と同記事は勧めているが、この先どういう展開となるか予想が付かない。最早日米は魅力的な投資先とは見做されなくなった。来年1Qまでサブプライム関連の損失報告が続きそうだという予測が有力になってきた。
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軸通貨としてのドルの地位が揺らいできたと何度も警告されてきたが、米財政赤字を埋めてきた中国政府の外貨準備1.4兆ドルが投資先見直しの噂が出てきてついに現実味を帯びてきた。日中が対米貿易に依存している状況に変化はないが、別のところに変化が出てきた。
足元では日本の個人資産の海外流失は続いているが、一方で「米国離れ」が進んでいる。今朝の日本経済新聞によれば米国の債券を中心に運用している投信の純資産残高は1年前に比べ13%減の3.1兆円という。欧州や新興国に向っているからだ。
この流れの変化は世界的で、グローバル資金還流という視点から眺めると、グローバリゼーション下で米国一人勝ちと日欧の先進諸国が分け前を分かち合う構造が崩れつつある。資金の流れと集積が劇的に変化しているのだ。その変化のシナリオは大筋以下のように説明される。
端的に言うとグロ-バリゼーションが新たな段階に入り新興国経済が急成長、それに伴い原油需要が急増し価格が急騰、資金の流れが変わった。これが変化の本筋で、加速させたのがイラク戦争などの地政学的問題で、サブプライム焦げ付きをきっかけにしたドル安がより複雑にした。
ワシントンポスト紙(11/10)によると5年前に比べ消費者は1日当たり40-50億ドル余分に払い、今年だけで年間2兆ドルを石油会社と産油国に払っているという。そのうちの1/3の年間7000億ドルが産油国に流れ、世界の富の再配分が起こっている計算になる。
この富の再配分は産油国の選択肢をかつて無いほど広げ、世界各国に新しい風景が生まれていると報じている。
原油価格高騰はロシア財政を再建し露骨な資源外交で旧ソ連衛星国への影響力回復を目指すようになった。ベネズエラはオイルダラーを惜しみなく使い南米に反米クラブを構築している。イランの豊富なオイルマネーは核開発禁止を迫る欧米の制裁を恐れる必要が無くなった。
もっと危険な国も巨額なオイルマネーを手に入れている。ダルフール虐殺を非難する欧米の制裁も何のその、スーダンの首都は建設ブームで湧いているという。チャドはオイルマネーでせっせと武器購入に努めているという。
サウジアラビアやドバイのように国内投資に振り向け、石油事業に代わる産業の開発や都市開発に巨額投資を続けている国もある。しかし、ロシアを始め多くの国は大金を目の前にして恩恵を国民に行き渡らせる改革を先送りにしているという。
原油価格高騰は長期トレンドとしてこのまま続く可能性が高いと見られている。つまりBRICsを始めとする新興国の経済成長で自国市場が育ち、自律成長し始め原油需要は増える一方だからである。仮にこのまま100兆円近くの富の移転が毎年続いた時、10年後の世界はどうなっているだろうか。■