小沢民主党代表辞任と亀田騒動に隠れているが、このところ日本列島は食品業界の不祥事が相次いでいる。150年以上続く老舗赤福から創業30年余りの食品会社まで、北から南まで不祥事が連日報じられている。
報道を追って行くとまるで判を押したように同じパターンで進行する。一体何が起こっているのか、背景に共通する問題があるのか、ゼネコンとか官製談合とは何が異なるのか、今までの報道から底流を探ってみた。
不祥事に共通する3つのパターン
(1)最初はダメージを最小限に留めようとし問題の範囲を狭めて発表し、その後次から次へと不正が暴露もしくは当局から指摘され、最後にトップ自ら不正に関っていた会社ぐるみの不正だったことが明らかになり、会社の存続に関る大不祥事に発展する。メディア対応の未熟さが目立つ。
(2)摘発されているのは食品業界でも中小規模の所謂地場産業が殆どで、創業者一族の経営である。社員は創業者に頭が上がらず、長いものに巻かれ自分で判断できず、会社思いの言い訳をした。小額の節約(不正)を行い、結果営業停止に追い込まれ巨額の損失を出し倒産の危機に陥るケースが見受けられた。
(3)これら不正は1980年前後から始まったものが多いように感じる。この頃日本人の心を変えるような何かが起こったのだろうか。70年代の2度のオイルショックを乗り越えるための原価低減の一環で実施した一時の不正が徐々に拡大し日常化したのか、その経緯に興味がある。
止め役の不在
創業者家族経営の中小企業の場合は、トップの目が現場まで届き人的資源も限られているので、組織で仕事をしないケースが圧倒的に多い。従ってトップが不正を指示した場合中間管理職がブレーキ役になるのは難しかったのではないだろうか。
トップを諌めた場合、直ちに人事で報復されるリスクを犯せない。それだけの人材を育てる仕組みも会社の規模的には中々難しいと思われる。一方で、匿名の密告を含めた内部告発の時代になり、不祥事を社内に閉じ込める仕組みが機能しなくなった。
官僚・大企業の不祥事
官僚や大企業の不祥事は所属する組織を守るための不正が特徴である。自分の懐に1銭も入らない不祥事は非常に日本的な現象である。彼らは所属する部門の業績の為に不良を隠蔽し、データを改ざんした。法改正の結果個人の犠牲だけでは済まず、企業にとっても談合が割りのあわないビジネスになり、状況は変化し始めた。
一方、官僚は老後の生活の為の横領とでも呼ぶべき公金無駄使いの仕組みを作り、発覚時の責任逃れのロジックを巧妙に組み込んだ。だが、長年の悪しき慣行で感覚が鈍り、度の過ぎた巨大無駄使いシステムが国の財政を揺るがす化物になり、ついに自壊の道を歩み始めた。
全てに共通する底流
昔は良かった式の安易な発想はすべきでない。官製談合などの不祥事も今急に起こったわけではなく、長年続いてきた悪しき慣行が今露見しているのである。内部告発をエンカレッジする法改正、組織に対する忠誠心の低下、匿名での告発手段の出現等々が内部告発を後押しした。
中小の食品業界の不祥事の中に同情すべき点がなくもない。かつては賞味期限表示などなかった。消費者が五感を働かして食するなり廃棄するなりした。腐ったものを食べればお腹が痛くなる、それは消費者の判断に任された。制度が変わった時、昔からの知恵で何十年もやってきて安全と思われる製法を続けた商品もあるようだ。現代は簡単に食べ物を捨てるすぎる時代になった。
この見方が正しければ同じ問題を抱える中小の食品企業はまだまだ多いと思われる。これからもこの手の不祥事の摘発が暫らく続くと思われる。大前研一氏は戦後教育と親に共通する問題と指摘している。端からインチキしたものなど論外だが、それだけと言い放てるか私は疑問だ。■