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内政治の混乱を注目する余り、暫くオバマ大統領について書かなかった。昨年9月初め頃に支持率急降下の背景について書いたのが最後だ。皮肉にもその後支持率の急落傾向が止まり、直近の支持率も50%台(51.7%Pollstar.com4月8日時点)を保っている。
大統領の支持率はまだ上向いていない、しかしその間に彼の政治的立場は大きく変化したようだ。前回の記事では、支持率低下の原因は、オバマの公約で長年民主党の念願でもあった医療保険制度の改革が難航、妥協を重ね中途半端になり、どの層からも信頼を失ったと指摘した。
だが、オバマは外交日程を変更してまで最優先で取り組み、先月遂にこの医療保険制度改革法案を成立させた。歴代民主党大統領がなし得なかった改革を実現し、歴史に名を刻む偉大な大統領として記録されることになった。ちょっと早いが、就任1年余りで達成してしまった感がある。
雑誌Time(4/5)やファイナンシャルタイムス(訳日本経済新聞4/10)は、聞えの良い公約の演説は上手だが実行力はないという評価から、一転して困難を乗り越え理想を実現したタフな大統領と、欧米のメディアは評価を一転させたように見える。(私にはこっちの方が劇的に見えるが。)
妥 |
協の産物といわれる医療保険改革の評価は今後3年間に徐々に定まっていく。雇用者や保険料を負担する雇用者と中流階級、財政への影響などが具体的に現われてくるのはまだ先のことだ。これで評価が定まったわけではない。健康な若者がどの程度加入するかに新制度の成功がかかっていると高官の声を今朝のCNNは伝えている。
だが、とにもかくにも最大の懸案事項の法制化を終えたオバマは、秋の選挙に向かい民主党内の雰囲気を前向きに変え、今後オバマ大統領は立場を強めて着々と内政や外交に取り組むと見られている。既に、今週ロシアと新核軍縮条約に調印し、就任当時チェコで世界に向かって宣言したもう一つの重要政策課題の第一歩を踏み出した。
雇用の回復はまだ時間がかかりそうだが景気回復の見通しが立ち、今後はスピードを上げて矢継ぎ早に懸案事項に対応していくことが予想される。既に対中関係の改善に向けて動き出し、イラン・北朝鮮の核拡散防止、グローバル金融規制の強化などでも取り組みが強化される見込みだ。
蛇足だが、この記事を書くために読んだTimeによれば、今回の改革案は元々93年に共和党のドール大統領候補等が提案したものが原案で、それをヒラリーが大統領選の政策として取り上げ、回りまわってオバマの改革として名が残ったという。今回共和党は地獄に落ちるみたいに大反対をしたが今後言訳に窮するだろうという。日本でも同じ風景を良く見かける。
最後に私らしく皮肉で締める。対照的なのが、短期間に国民の支持を失った鳩山首相の立場で、あっという間に支持率が逆転した。強い政権基盤の無い政府を持つ国民はつくづく不幸だと思う。オバマは最初の目標を達したということで、今回でこのシリーズを終了する。■