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京都が23日に水道水の放射能を測定した結果、許容値を超える放射能汚染が検出され、乳児の粉ミルクや飲物に水道水を使わないよう呼びかけた。そのニュースを見て、東京は最悪パニック事態になるかもと私は恐れた。
私が見た限りテレビはパニックを起こさないよう、冷静にしかし事実を伝える報道に努めたと思う。それでも、夜の番組で売り場からミネラルウォーターが無くなった画面は十分衝撃的で、結果的には消費者に水をもっと買えと迫ることになるだろうと予測した。そして、予測通りになった。
巷間では事実をキチンと伝えよと言う声も強いが、事はそれほど簡単ではないことを如実に示した。「放射能」という言葉には元々アレルギーがあるし、一般の人に科学的な知識や規制値がどういうものか理解するのは難しい。放射能リスクの議論自体がタブーだった時代が長いことも影響している。今更議論しても状況はそれほど変わらない。今後もっと難しい対応に迫られるだろう。
ともあれ、翌日気になって都内に住む長男の嫁に水は大丈夫かと聞くと、8ヶ月の乳児には母乳をやっているので今のところ大丈夫だと返事が来た。ニュースで報じられた通りの冷静な判断だと感心した。その日の夜、家内からメールが来て四国から水を送ってやったらどうかと催促されたが、この日東京都は許容値以内に汚染が低下したと発表した、過剰反応せず様子を見ようと返事した。
一夜明け今朝方A証券から連絡を受けて聞くと、原発事故不安に対し市場は落ち着いた反応になり再び上昇傾向に戻した。街の様子を聞くと、Bストアーでは普通の安い水は全て売り切れだが高い水は棚に残っていると言う。本当にパニックになったら全て売り切れるはず、という彼の説明を聞き私も同意すると同時にホッとした。
だが、昼食の準備をしようと机を片付け始めた頃、長男から電話が入った。彼から電話が来る事は滅多に無い。何かあったなと思って構えると、田舎で水を仕入れて東京に送って欲しいという。2日前の嫁さんは冷静だったぞと答えると、その後友達から水や放射能を除去するフィルターなどを揃え、万全の構えで放射能汚染に備えていると聞き心の安定が崩れたようだ。
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児を抱える母親友達ネットワーク経由の話を聞いて、何も対策して無い自分に気づき居ても立ってもいられなくなったのだろう。「彼女の気持ちは分かる、心の問題」だなと聞くと、そうだという返事だった。それじゃ議論は無意味と判断して何とかすることにした。
昼食後、いつも買い物をするスーパーに行くと水は全く無かった。何時入ってくるか見通しが立たないと言う。お茶やジュース、スポーツ飲料は文字通り山積みされているというのに。次に行った農協系のスーパーでA証券氏が言ったと思われるやや高い水を見つけた。店員はこれしか残っていないと言う。何時からと聞けば、東京都の発表以来という返事。やっぱりな。
一箱買って宅急便センターに持ち込み手続きした。東京へは3―4日かかるという。10日前には1週間はかかると言っていたから少し改善したようだ。受け付けてくれた事務員に聞くと、他にも水を送る人はいるらしい。私の後に来た中年女性も荷物の中に水を入れて千葉に送ると答えていた。
最初冷静な反応をしていた嫁は友達を見て不安になった、普段「超」が付くくらい合理的な息子は彼女の不安を鎮めるために水を求め、そんな息子夫婦の求めとあれば孫のためと即対応する祖父。こうやって全国の店から水が無くなり、不安が伝染していく。私も加担した。■