東日本大震災が起こってほぼ1ヶ月経過した。最初は映像で見る津波の凄まじい破壊力に圧倒され、被災者の悲惨な状況とそれに立ち向かう姿に動かされ、世界の熱い支援の声に復興への期待の光が見えた。しかし、福島原発事故が深刻で周辺地域への影響が広がり、短期の収束が視野から消えた頃から政府や東電を批判する不協和音が大きくなった。
だが、私には時に報道が必ずしも実態と一致しないこともあるように感じる。1ヶ月たった今、これまで繰り返し報じられ「ある意味で共通の認識(もしくは繰り返される疑い)」について考察してみたい。
初動の遅れは避けられたか
先ず、地震発生直後の24時間に福島第一原発事故で何が起こったかだ。日本経済新聞(4/8)に危機管理を詳しく振り返った記事が掲載された。今日まで起こっている殆どの現象がこの24時間で決まった、その後の対応の巧拙は結果を大きく左右するものではない、と私は思う。
普段から批判的な日経の記事を読んでも、これは大事になると言う菅首相の直感は正しかったようで、パフォーマンスで初動を遅らせたという批判は当たらなかった。東電側に放射能の飛散を避けたいという目先の考えが行動を遅らせたのは理解できる。
だからといって、初期の対応がベストの場合でも燃料棒の溶融が避けられたか今後の検証を待ちたい。実際は、このとき発生した放射能の始末が今後も延々と続くことになる。いずれにしても菅首相の原発訪問で初動が遅れたと言う非難は的外れ、むしろ適切だったと私は思う。大括りでは事態の展開に政府・東電が圧倒されたと言う見出しは正しい。(私は報道も加えたい。)
避難区域指定は適切だったか
この後事態は急転して行き6時間後の半径3km圏、続いて10km圏、更に30km圏の避難が指示された。この間に1号機及び3号機の水素爆発が発生し国民に不安が広がっていった。こんな時米国政府は避難地域指定を50マイル(80km)にし、この差を巡り議論が起こった。
私はこの違いを初めて聞いたときありえることだと思った。今まで海外で暴動やテロなどが起こった時日本人の逃げ足は速いほうだし、外務省は万一のことを考えて渡航禁止を出す例を何度か見てきた。米国もその法則に従ったと言うことだ。だが、国内では逃げられない。ぎりぎりの判断が求められた。
米当局が判断できる情報が十分得られなかったので、最悪ケースを考慮して自国民に指示を出した(米原子力規制委員会の緊急対応策専門家が議会証言WSJ4/8)ことを非難できない。一部の記者はこれを理由に日本政府が不都合な情報を隠していると痛烈に批判した記事は一方的で、私には恣意的どころか悪意が感じられた。
日本政府は情報を隠しているか
混乱はしていた(特に当初は)が、隠してはいないというのが、私の印象だ。これ程の深刻な事故にもかかわらず、国民に放射能のパニックを起こさせずこの程度に収めているのは、むしろよくやっていると感じる。この点では、民放が抑制的な報道に努め協力したと評価する。翼賛的と非難する向きもあるが、私は一体となって国難に立ち向かう姿勢は評価したい。
その一方で、海外各国で原子力アレルギーが大きく、中には事実に反する情報で国民の不安を煽っているのは残念だ。日本政府も国内だけで精一杯だったのは事実だ。だからと言って嘘は言わないで欲しい。その後米国が50マイル避難区域発表後に非常に抑制的になったのは、日米及び海外諸国の不安を掻き立てないような配慮が上記の証言からも伺える。これが責任ある者の態度だ
日本は信用されていないか
今日の日本経済新聞は原発事故がなかなか収束しないので、日本を見る目が「称賛」から「不信・違和感」へ変わったと報じた。私は、これを書いた記者もしくは新聞社がイライラしてきて海外を引用して自己主張をする、所謂「恣意的な記事」であると感じた。私が見る限り事態を憂慮しても不信はないと感じる。
というのは、その根拠にされたのが数日前に報じられた「事前通告無しの低濃度の汚染水の放水」を韓国とロシアの外交当局が非難したということで、何も新たな事実が無かった。気持ちは分かるがこういうやり方は報道の見識を問わる。むしろ、日本紙の記事が引用されて海外に事実を正確に伝える努力をして欲しい。今回も少しも引用されていない(?)のは恥かしく思わないのか。本当に海外から支援を受けているか
今回米国を初め世界各国から支援を受け感謝している。バングラディッシュやアフリカの最貧国と言われる国からも義援金が届いていると言う。今日もまた世界各国で日本を支援する行事が行われている。それが草の根レベルで行われていると言うところが嬉しい。
だが、実は被害額に比べて義捐金額はそれほど多くはない。雑誌Time(4/11号)によると、世界的な災害の寄付の額は次のとおり。
総被害額 義援金
東日本大震災 $235B $704M (~3/29)
神戸大震災 $100B $14M
カトリーナ $81B $3.4B
チリ大地震 $30B $74M
インドネシア大地震 $15B $6.8B
ハイチ大地震 $14B $4.6B
【単位】 B:10億ドル M:100万ドル
なんと言っても世界レベルで見れば日本は金持ち国、自分のお金で復興できるだろうと見られていると記事は伝えている。もっとみっともなく泣き叫び官民ともに機能しなければ良かったか。それはプライドが許さない。それにしても神戸大震災の時は酷く少ない。勿論、金額の多寡で支援の心は測れないが。■