かぶれの世界(新)

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寄付文化は変わったか

2011-04-24 22:41:07 | 社会・経済

昨年暮れの「タイガーマスク現象」と東日本大震災の被災者の復興支援は、日本には本来の意味での「寄付文化」がないという私の認識を見直すきっかけになったように感じる。以下のように以前の日本の寄付文化は欧米に比べると少し違うと思っていた。

国に住んだ経験から日本の寄付文化は少し違うと投稿(2003/11/4と2006/6/27)した。最初の記事では、日本の寄付行為は慈善団体より神社仏閣への賽銭に向かう、その目的は基本的に見栄やご利益を得るため、即ち自分のためで、キリスト教を背景にした利他的な欧米の慈善行為と異なると指摘した。私自身米国で働いた時、時給で働く社員が年末に1か月分近くの金額の寄付するのを初めて知って驚いたものだ。

その3年後に「寄付の文化(改)」を投稿した。というのは、当時世界一の大富豪だったウォーレン・バフェットが個人資産の85%に当たる370億ドルを、第二位の大富豪ビル・ゲーツ(マイクロソフト創設者)の慈善団体に寄付するニュースを見た時だった。一方で日本の富裕層の最大の関心事は「節税と相続」であるとのある金融機関の調査結果を見て感じるものがあった。

私はその表裏一体の関係として、何か問題があると国に解決させようとし、自助努力して解決していこうという姿勢が無くなった、いわば弱者の名を借りた「たかりの構造」が日本に広がり自助の精神が失われたことと関係するとの仮説を紹介した。寄付をためらわせる何かがあると。今読み直すと、こじつけだったかも知れない。

日本大震災でどれだけ寄付金が集まったのか、寄付をした人達の年齢分布などを調査したデータがない。だが、寄付よりもっと積極的な支援の形としてボランティア活動は記録され表に現われるので、調査分析すれば寄付文化の変化も読み取れるのではないかと推測する。

ボランティアは各自治体もしくはNPOに登録されているので、集計すれば正確なデータが得られるはずだ。報道によれば、今回若者に限らずあらゆる年代の人達が立ち上がりボランティア活動に広がりを感じる。会社勤めの人達が休みを取れる5月連休のボランティア募集をしたら、定員200人に対しあっという間に600人の申し込みがあり締め切ったのもその一例だろう。

日本の大富豪の孫氏が100億円の寄付、プロゴルファーの石川遼君が全賞金を寄付するなど、多くの著名人が寄付を申し出た。個人だけでなく会社・団体が寄付や無償の支援活動に動いた。彼らの行為は大々的に報道され良い手本になった。実際、それより前に多くの人達も立ち上がっていた。私が利己的だと思った日本の寄付文化が劇的に変化したように感じる。

本のボランティア活動が初めてスポットライトを浴びたのは阪神大震災だった。実はその直後に米国に赴任したので記憶は曖昧だが、当時多くは若者で全国から自然発生的に集まったという印象がある。今回はその後の経験を生かしシステマティックな活動をしているようだ。

阪神大震災をボランティア元年とすれば、それから16年経過し当時のボランティアは現在30-40代になるから年代の広がりは当然だろう。だがそれ以上に、冒頭に述べたようなボランティアの広がりの底流で日本の寄付文化が変わりつつあるように感じる。

16年前は新鮮な驚きだったボランティア活動は、今では孫氏や石川氏などの著名人が先頭を切って寄付を申し出て、国民全体の間で当たり前のことになった。逆に何もしなければ不作為を問われかねない雰囲気が出てきたと感じる。

特に若い人達に代表される持たざる者が支援に向かっているのが印象的だ。中生や高校生までボランティア活動に精を出し、大生はボランティア活動すると単位を取れる。それが好意的に全国に報じられ田舎まで届き化変化が起こる。タイガーマスク寄付が起こした雪崩現象のようで、何だかメディア主導のボランティア競争が起こったと感じた。決して悪いことではないのだが。

界的現象であるという側面が一方にあるのも事実だ。津波が東北の入り組んだリアス式海岸の小さな港町に襲いかかり、根こそぎ持っていく様子がリアルタイムで世界中に流され、その後も被災地のようすが刻々と伝えられた。

これ程の迫力のある映像を人類が同時に見たのは有史以来初めてのことだ。世界はこの絵を見て一瞬にして何が起こったか理解し、誰もが「深刻な人道危機」と思った。今日の国際社会は人道危機を座視しない(風見鶏、日本経済新聞4/24)。この映像を見て日本人も海外の人達も全く同じ理解をして行動を起こした、という側面もある。

つまり、宗教に関係なく人間なら誰でも同じように感じて行動を起こしたという事だ。言い換えると個人や国の貧富も支援の心には関係ない。日本からODA援助されている開発途上(5カ国)国が救助隊を派遣し、物的支援国のうち16カ国は途上国だったと上記事は伝えている。

その媒体となったのが映像の決定的な力であった。この映像を見て内外の老いも若きも、あらゆる世代が寄付をし、ボランティア活動に立ち上がった。映像が無ければ少なくとも支援の規模や早さがこれ程早い展開になったとは思えない。日本人が特別変わったと言うわけではなく、世界中の誰もが同じ反応をした。

ここまで書いてきて、総合すると日本の寄付文化は変わったと思うが、何故変わったのかどう変わったのか、正直言うと余り明確ではない。確かなのは、この変化はメディアを媒体としている。「匿名だけれども、行為自体は認識されたい」という心理があるように感じる。ケチをつけるつもりなどサラサラ無い、好ましい変化だ。具体的なデータが出た時点で再度議論したいテーマだ。■

蛇足ながら、上記の新聞に気になる記事(中外時評)があった。「1923年の関東大震災からわずか10日足らずで大量の救援物資を軍艦で運んできた米国が、1年も経たないうちに排日移民法を成立させ、日本人に衝撃を与えた」と歴史上の事実を報じている。これも一方の歴史だ。

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