しかし、その直後にIBMがPC事業の売却を検討中で、有力な候補として中国のLenovo(連想集団)に10~20億ドルで売却することが報じられ衝撃が走った。同社のPC事業は総売上920億ドルの12%を占めるが1億ドルの損を出しており、HDD事業の日立への売却、進行中のPWC(Pricewater House)買収を含めサービス事業への傾斜の一環と捉え、市場は好感して株価が上昇した。
長らくPC事業に携って来た私にはショッキングなニュースであった。IBMは今日のPCの商品とビジネスモデルの原型を作り、当時まだ弱小企業であったマイクロソフトとインテルの技術と、結果的に後々自らの首を絞めることになる「Wintel」ビジネスモデルに正統性を与えた。IBMの撤退はPC事業がブランド、機能品質、サービス等の付加価値が差別化に繋がらなくなったことを意味する。私はPC普及の主要領域がBRICs になった今、「Wintel」ビジネスモデルですら聖域でなくなったと考えている。
アナリストの堀古英司氏が今回のインテルの中間業績報告を分析した結果、10月の業績悪化の報告からなんら改善しておらず、ただドル安の恩恵が織り込まれただけであると報告している。インテル売上げの72%(64億ドル)が海外売上げであり、連銀ドル指数の下降値(85:10月から78:12月に8.2%低下)を反映するとドルベースの売上げは5.2億ドル増えて今回発表の売上げ範囲に入る。同様に販売管理費が23億ドルであることから推定して26.8億ドルから29.6億ドルに利益が増えたと計算できる。
先月メリルリンチはインテルの投資判断を弱気に下げたが、今回の業績発表後も評価を戻していないのはこのような背景があったと見ている。 私にとってPCはまだまだ生々しすぎるテーマであり、特に日本市場については筆が進まない。日本市場は付加価値の高い商品を買ってくれ世界のどの地域よりも高い平均単価を維持しているが、インターネット販売比率が急増、単価下落が止まらず、IBMの撤退が象徴するように市場環境は激変している。市場変化は変えられないが、かつての私の同僚たちはこの難しい環境の中で頑張ってベストセラーを連発していることが私の救いである。