一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第3回電王戦を振り返る(前編)

2014-04-19 12:00:55 | 将棋雑考
今さらという気もするが、先ごろ行われた、第3回電王戦を簡単に振り返ってみる。
前回の私の予想はコンピューターソフトの5勝0敗だったが、今回はプロ側の3勝2敗とした。
理由はもちろん、ルールの変更にある。それは、「出場ソフトが決定してからのアップデート禁止」「ソフトの事前貸し出し」「ハードの統一」など、ことごとく棋士に有利に働くものだったからである。
まず、「アップデートの禁止」。これがよく分からない。私などは了見が狭く、相手が子供であろうが女性であろうがいつも勝ちたいから、相手は弱いほうがいいと思う。大会などに参加したときも、なるべく弱い相手に当たりたいと思う。
でも棋士は違うだろう。先日のTBS系「情熱大陸」でも何人かの棋士が述べていたが、棋士はより強い相手との戦いを望むものではないのだろうか。
しかし電王戦ではアップデートを禁じた。この期間、棋士自身も勉強していくらか強くなるにも関わらず、ソフトにはそれを禁じた。
棋士はストイックに将棋に対峙しているが、こと電王戦に限っては、棋士の対局心理は私と同じ軟弱なものになってしまったようである(失礼)。
次に「ソフトの貸し出し」。これもよく分からない。棋士がソフトの実戦譜を研究するのはもちろん構わない。しかしコピー「そのもの」を使って研究するのはやりすぎと思う。これじゃあ相手の手の内が丸分かりではないか。
相手が誰であろうと、「かかってらっしゃい」と鷹揚に構えるのが、プロの矜持ではないだろうか。
「ハードの統一」も含め、とにかく今回は、ソフトが弱くなるよう弱くなるよう設定された感じだ。これではプロが勝ち越すだろう、いや勝ち越さなければならない、と思ったわけである。
こうして3月15日(土)、第3回電王戦は幕を開けた。
第1局は▲菅井竜也五段VS△習甦。通算勝率7割越え棋士の登場だから、この5局では勝ちを計算できる一番だったといってよい。
しかし結果は習甦の快勝。菅井五段の中飛車に、習甦は自然に対応し、目を瞠る好手を指すことなく?先手玉を仕留めてみせた。とくに終盤、自玉の不詰めを読み切り(当たり前だ)、△1三玉と逃げ越したあと、△6七歩成が大いに感心したところで、これで先手は受けなしなのかと目を疑ったものだった。
重複するが、菅井五段は勝率7割である。その彼がとくに見せ場を作ることもなく、ふつうに負けたのが信じられなかった。
習甦は指し手の方針がしっかりしており、終始手厚い指し回し。コンピューターソフトにありがちな「無味乾燥感」もなく、まるで人間が指しているようだった。
余談だが、先日植山悦行七段はこの将棋を評して、
「大沢さん、習甦の指し手は好きでしょ。大沢さんみたいな指し手だったもんね」
と言った。
第2局は△佐藤紳哉六段VS▲やねうら王。これは対局前、ソフトのバグ修正があったとかで一悶着あったのだが、棋士がそれほどまでに神経質になっているのかと、少し意外に思った。
戦型はやねうら王の四間飛車に、佐藤六段の居飛車穴熊。これは佐藤六段、ガッチリ穴熊に囲った時点で、勝ったと思ったのではないだろうか。
しかしそこからいろいろあり、結果的にはこれも、ソフトの快勝となった。
これはなかなかに衝撃的で、正調四間飛車に居飛車穴熊の対抗なら、ふつうは穴熊側がよしとしたものだ。これはアマプロ共通の認識である。だから振り飛車側は藤井システムや角交換四間飛車を駆使して穴熊に対抗しているのだ。
しかし今回振り飛車側は、ふつうに駒組をして、桂損までしたのに、勝ってしまった。
大山康晴十五世名人ではないが、相手が穴熊であろうと何だろうと、最後は強い者が勝つ、を教えられた一局だった。
(つづく)
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