第69期王座戦で木村一基九段が挑戦者に名乗りを挙げたのはビックリした。挑戦者候補の渡辺明名人、豊島将之竜王、藤井聡太二冠が初戦や2戦目で姿を消したということもあるが、それでも当年48歳の木村九段の挑戦は殊勲だった。
当ブログでは2018年12月30日に、48歳以降でタイトル戦の挑戦者になったケースを羅列した。再掲すると、
大山康晴十五世名人……48歳から66歳まで12回
升田幸三実力制第四代名人……48歳から53歳まで3回
米長邦雄永世棋聖……49歳時に1回
森雞二九段……49歳時に1回
塚田正夫名誉十段……48歳時に1回
二上達也九段……48歳時に1回
の6名のみである。そこには中原誠十六世名人、谷川浩司九段、森内俊之九段、羽生善治九段の名がなく、高齢でのタイトル戦登場がいかに至難かを物語る。
今回の相手は永瀬拓矢王座で、対戦成績は3勝3敗2千日手の五分。ただ永瀬王座には若さがあり、その分だけ永瀬王座が有利と思っていた。
だが8月30日の竜王戦挑戦者決定戦で永瀬王座が藤井二冠に敗れ、やや予想が変わった。永瀬王座の落胆を加味し、私は王座の行方をまったくの五分にしたのだった。
そして五番勝負は1日に始まった。五番勝負は例年この日か2日に行われるのだが、永瀬王座は中1日である。否、移動日を入れれば休養日はなく、これは永瀬王座にとってタイトだった。もう少し余裕のあるスケジュールが組めなかったのかと思う。
将棋は角換わりで始まった。最近はAIでの研究が盛んで、角換わりの将棋が減少傾向にあるというが、絶滅はしない。
そしてその研究量を裏付けるように、両者、否永瀬王座の指し手が恐ろしく早かった。
75手まで進んで消費時間20分余りのハイスピード。そしてまだ永瀬王座の研究範囲らしい。なるほどこれで負かされたんじゃバカバカしく、角換わりが減少するわけだと思った。
この将棋も永瀬王座が有利となったが、そこで△9五歩(第1図)が玄妙な一手だった。
この△9五歩、たぶん大野八一雄七段もこう指す。私は七段との指導対局で、いつもこうした端攻めで誤魔化されてきたのだ。
だが本局は相手が永瀬王座である。堂々と▲9五同歩と取り面倒を見ると思ったのだが、永瀬王座は▲6二金。なるほどこれも着実な攻めだ。これで後手玉はどこにも動けず、息苦しい。
だが木村九段は5手後に△9一飛。これは大きな手で、空いた3一に玉の逃げ場ができた。
さらに数手後の△9九角(第2図)が、木村九段会心の一手だったようだ。
これを▲9九同玉は△9七歩成▲同桂△7七角の王手金取りで攻めが続く。というか後手が楽しい局面で、こうなったら木村九段は逃さない。
だが実戦もこう進めざるを得なかったようで、以下木村九段の勝利となった。
まさに一閃の△9九角で、私は1990年12月7日に指された、第4期竜王戦ランキング戦6組・佐藤秀司四段VS天野高志アマ名人戦の投了図を思い出した。
木村九段は幸先よい1勝となったが、やはり永瀬王座は2日前のショックが尾を引いていたと思う。仮に2日前に勝っていたら、今回の将棋もモノにしていたと思うのだ。
しかし考えてみたら、木村九段も昨年王位戦で、藤井二冠に痛い目に遭っていたのだ。
この王座戦に藤井二冠は関係ないのに、その影がチラチラ出てくる。藤井二冠、恐るべき存在感だと思う。
第2局は15日。これに永瀬王座は是が非でも勝たないと、いよいよ危ない。
当ブログでは2018年12月30日に、48歳以降でタイトル戦の挑戦者になったケースを羅列した。再掲すると、
大山康晴十五世名人……48歳から66歳まで12回
升田幸三実力制第四代名人……48歳から53歳まで3回
米長邦雄永世棋聖……49歳時に1回
森雞二九段……49歳時に1回
塚田正夫名誉十段……48歳時に1回
二上達也九段……48歳時に1回
の6名のみである。そこには中原誠十六世名人、谷川浩司九段、森内俊之九段、羽生善治九段の名がなく、高齢でのタイトル戦登場がいかに至難かを物語る。
今回の相手は永瀬拓矢王座で、対戦成績は3勝3敗2千日手の五分。ただ永瀬王座には若さがあり、その分だけ永瀬王座が有利と思っていた。
だが8月30日の竜王戦挑戦者決定戦で永瀬王座が藤井二冠に敗れ、やや予想が変わった。永瀬王座の落胆を加味し、私は王座の行方をまったくの五分にしたのだった。
そして五番勝負は1日に始まった。五番勝負は例年この日か2日に行われるのだが、永瀬王座は中1日である。否、移動日を入れれば休養日はなく、これは永瀬王座にとってタイトだった。もう少し余裕のあるスケジュールが組めなかったのかと思う。
将棋は角換わりで始まった。最近はAIでの研究が盛んで、角換わりの将棋が減少傾向にあるというが、絶滅はしない。
そしてその研究量を裏付けるように、両者、否永瀬王座の指し手が恐ろしく早かった。
75手まで進んで消費時間20分余りのハイスピード。そしてまだ永瀬王座の研究範囲らしい。なるほどこれで負かされたんじゃバカバカしく、角換わりが減少するわけだと思った。
この将棋も永瀬王座が有利となったが、そこで△9五歩(第1図)が玄妙な一手だった。
この△9五歩、たぶん大野八一雄七段もこう指す。私は七段との指導対局で、いつもこうした端攻めで誤魔化されてきたのだ。
だが本局は相手が永瀬王座である。堂々と▲9五同歩と取り面倒を見ると思ったのだが、永瀬王座は▲6二金。なるほどこれも着実な攻めだ。これで後手玉はどこにも動けず、息苦しい。
だが木村九段は5手後に△9一飛。これは大きな手で、空いた3一に玉の逃げ場ができた。
さらに数手後の△9九角(第2図)が、木村九段会心の一手だったようだ。
これを▲9九同玉は△9七歩成▲同桂△7七角の王手金取りで攻めが続く。というか後手が楽しい局面で、こうなったら木村九段は逃さない。
だが実戦もこう進めざるを得なかったようで、以下木村九段の勝利となった。
まさに一閃の△9九角で、私は1990年12月7日に指された、第4期竜王戦ランキング戦6組・佐藤秀司四段VS天野高志アマ名人戦の投了図を思い出した。
木村九段は幸先よい1勝となったが、やはり永瀬王座は2日前のショックが尾を引いていたと思う。仮に2日前に勝っていたら、今回の将棋もモノにしていたと思うのだ。
しかし考えてみたら、木村九段も昨年王位戦で、藤井二冠に痛い目に遭っていたのだ。
この王座戦に藤井二冠は関係ないのに、その影がチラチラ出てくる。藤井二冠、恐るべき存在感だと思う。
第2局は15日。これに永瀬王座は是が非でも勝たないと、いよいよ危ない。