8月30日は第34期竜王戦挑戦者決定戦第2局・藤井聡太王位・棋聖VS永瀬拓矢王座戦が行われた。
ここまで藤井二冠の5勝、永瀬王座の1勝。誰が考えても第2局も藤井二冠持ちで、永瀬王座は、よほど会心の将棋を指さないと持って行かれると思った。
当日の昼はABEMAを見る余裕はなかったが、夕方にニュースを見ると、藤井二冠の優勢とのことだった。こうなるともう、藤井二冠の勝利濃厚である。
夜にABEMAを見ると、藤井二冠の明らかな1手勝ちの情勢だった。最後は永瀬王座が△5一飛と苦し紛れに受け、藤井二冠が▲3二金と綺麗に詰め上げた。
投了の4手前、桂を取る素朴な▲2一竜が好手だった。これは△3一金で竜が死ぬが、そこで▲4五桂が後手玉の脱出を防ぎつつ▲5三金を見せた決め手となった。
藤井二冠には「駒が目一杯働くピッタリの決め手」が多いが、藤井二冠の駒はいつも、性能以上の働きをしている。藤井二冠の駒のほうだけ、パワーアップしている感じなのである。これじゃあ連戦連勝するわけである。
あらためて、この将棋を振り返ってみる。藤井二冠の先手で始まった本局、相掛かりとなった。
20手目の△8六同飛に、▲7六歩と角道を開けたのが藤井二冠の序盤の勝負手。永瀬王座は当然△7六同飛と歩をいただく。そこで藤井二冠は▲8二歩と桂取りに打った。
研究熱心な両者のこと、当然この局面も研究範囲だっただろうが、藤井二冠のそれのほうが上回っている……と私は憶測した。
ハイライトは38手目の△1四角だったと思う。▲2五の飛車取りで、飛車が逃げれば△6九角成の銀取りでまた先手が取れる。
だが本譜、△1四角にふつうに▲6五飛と逃げられてみると、先手には▲8三角の狙いが残り、後手は却って忙しくなっている。永瀬王座期待の△6九角成も、▲7八銀△7九馬で馬の位置をズラされてみると、次に△8八馬と金得しても、馬が先手玉から遠のき、これ以後使えそうにない。
ただ永瀬王座からこの順に飛び込んだのだから、成算はあったと考えざるを得ない。
だがこのあとの指し手はほぼ一本道の進行で、後手に勝ち目はないのだった。若き日の米長邦雄永世棋聖が塚田正夫名誉十段と初対局したとき、「レールに乗せられたように、変化の余地なく負けた」と述懐したが、本局もそんな感じだった。
となると△1四角に疑問手の烙印を捺さざるを得ないが、相掛かり系の戦型で△1四角(▲9六角)と飛車取りに打つ手は、魅力的に映るのだ。
永瀬王座にも「△1四角を成立させたい」という願望が入り、ために読みの精度に狂いが生じた、とも考えられた。
総手数77手。戦型の性質から短手数での決着はあり得るが、あの永瀬王座が77手で散るのが信じられない。恐るべき藤井二冠の剛腕である。
そして藤井二冠は竜王戦参戦5年目にして、初の七番勝負登場である。竜王戦は名人戦と違い1年でも挑戦者になれるが、藤井二冠は毎年ランキング戦で昇級を重ね、ある意味順位戦と似たような経過で挑戦権を勝ち取った。それだけにいままでの消化不良を目一杯ぶつけてくると思う。
なお、第6期叡王戦の第5局が13日に行われるが、この対局の前まで、藤井二冠の勝利確率は60%と見ていた。だが今回の竜王戦の勝利で、80%に跳ね上がった。
そして永瀬王座のダメージは深刻である。これは1日からの王座防衛戦に影響してくると思う。この竜王戦の前までは、永瀬王座の防衛65%と見ていたが、今回の惨敗で、永瀬王座防衛50%、木村一基九段奪取50%とした。
そして1日、第69期王座戦第1局が始まったのである……。
ここまで藤井二冠の5勝、永瀬王座の1勝。誰が考えても第2局も藤井二冠持ちで、永瀬王座は、よほど会心の将棋を指さないと持って行かれると思った。
当日の昼はABEMAを見る余裕はなかったが、夕方にニュースを見ると、藤井二冠の優勢とのことだった。こうなるともう、藤井二冠の勝利濃厚である。
夜にABEMAを見ると、藤井二冠の明らかな1手勝ちの情勢だった。最後は永瀬王座が△5一飛と苦し紛れに受け、藤井二冠が▲3二金と綺麗に詰め上げた。
投了の4手前、桂を取る素朴な▲2一竜が好手だった。これは△3一金で竜が死ぬが、そこで▲4五桂が後手玉の脱出を防ぎつつ▲5三金を見せた決め手となった。
藤井二冠には「駒が目一杯働くピッタリの決め手」が多いが、藤井二冠の駒はいつも、性能以上の働きをしている。藤井二冠の駒のほうだけ、パワーアップしている感じなのである。これじゃあ連戦連勝するわけである。
あらためて、この将棋を振り返ってみる。藤井二冠の先手で始まった本局、相掛かりとなった。
20手目の△8六同飛に、▲7六歩と角道を開けたのが藤井二冠の序盤の勝負手。永瀬王座は当然△7六同飛と歩をいただく。そこで藤井二冠は▲8二歩と桂取りに打った。
研究熱心な両者のこと、当然この局面も研究範囲だっただろうが、藤井二冠のそれのほうが上回っている……と私は憶測した。
ハイライトは38手目の△1四角だったと思う。▲2五の飛車取りで、飛車が逃げれば△6九角成の銀取りでまた先手が取れる。
だが本譜、△1四角にふつうに▲6五飛と逃げられてみると、先手には▲8三角の狙いが残り、後手は却って忙しくなっている。永瀬王座期待の△6九角成も、▲7八銀△7九馬で馬の位置をズラされてみると、次に△8八馬と金得しても、馬が先手玉から遠のき、これ以後使えそうにない。
ただ永瀬王座からこの順に飛び込んだのだから、成算はあったと考えざるを得ない。
だがこのあとの指し手はほぼ一本道の進行で、後手に勝ち目はないのだった。若き日の米長邦雄永世棋聖が塚田正夫名誉十段と初対局したとき、「レールに乗せられたように、変化の余地なく負けた」と述懐したが、本局もそんな感じだった。
となると△1四角に疑問手の烙印を捺さざるを得ないが、相掛かり系の戦型で△1四角(▲9六角)と飛車取りに打つ手は、魅力的に映るのだ。
永瀬王座にも「△1四角を成立させたい」という願望が入り、ために読みの精度に狂いが生じた、とも考えられた。
総手数77手。戦型の性質から短手数での決着はあり得るが、あの永瀬王座が77手で散るのが信じられない。恐るべき藤井二冠の剛腕である。
そして藤井二冠は竜王戦参戦5年目にして、初の七番勝負登場である。竜王戦は名人戦と違い1年でも挑戦者になれるが、藤井二冠は毎年ランキング戦で昇級を重ね、ある意味順位戦と似たような経過で挑戦権を勝ち取った。それだけにいままでの消化不良を目一杯ぶつけてくると思う。
なお、第6期叡王戦の第5局が13日に行われるが、この対局の前まで、藤井二冠の勝利確率は60%と見ていた。だが今回の竜王戦の勝利で、80%に跳ね上がった。
そして永瀬王座のダメージは深刻である。これは1日からの王座防衛戦に影響してくると思う。この竜王戦の前までは、永瀬王座の防衛65%と見ていたが、今回の惨敗で、永瀬王座防衛50%、木村一基九段奪取50%とした。
そして1日、第69期王座戦第1局が始まったのである……。