一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第64期王位戦第2局

2023-07-14 23:44:06 | 男性棋戦
第64期王位戦第2局である。第1局は藤井聡太王位が勝った。番勝負はどれもそうだが、星2つ差をつけられると、負けているほうは相当苦しい。ましてや今シリーズ、相手は藤井七冠である。佐々木大地七段は本局、絶対に勝たねばならぬ一戦だった。
将棋は佐々木七段の先手で、相掛かりになった。佐々木七段の得意戦法で、これにすべてを賭ける。
序盤、佐々木七段が大長考に入る。これが微妙なところで、考えたからいい手が生じるわけでもない。むかしは加藤一二三九段が序盤で大長考をしたものだが、結果指す手は平凡なもので、ために終盤で時間がなくなり逆転負け、ということがよくあった。
本局は佐々木七段が2時間近い長考のすえ、果敢に銀を出た。藤井王位は桂を跳ね銀を呼び込み、敵陣に角を打つ。これで「馬」が約束された。
私などが角換わりの将棋を指すと、馬を作らせないよう細心の注意を払うものだが、達人の域になると、理外の理の形もあるらしい。ただ、この局面までの実戦例はあったようである。とすれば、どちらも自信のある局面だった、といえようか。
2日目、藤井王位は角を成り返った。現実的にはこの馬の存在が手厚く、後手の模様がよくなったようだ。
佐々木七段は端を攻めるが、2階から目薬のようで、ちょっと遠い。
対して藤井王位のそれは、敵玉めがけて的確である。序盤に作った馬が佐々木玉を迎撃する。藤井陣は序盤とほとんど変わってないのに、佐々木陣は崩壊寸前である。いわゆる「ひとり終盤」というやつだ。
いつも思うのだが、藤井王位の駒は、いつも120%の働きをしている。具体的には、駒の利きが最大限発揮されているのだ。だから同じ枚数の駒で戦っても、藤井王位が優勢になる。
最後は藤井王位がアタリの銀を躱したところで、佐々木七段が投了した。またも、自陣に目を向けての終局だった。
本局、藤井王位の完勝に近い快勝である。藤井王位が馬を作り模様がよくなってから、徐々に形勢が開くばかりだった。藤井王位の典型的な勝ちパターンである。
佐々木七段は「(銀出を)暴走してしまいました」と述懐した。序盤で良くしようとつんのめり、独善の読みも相まって、見切り発車のまま指し手を進めてしまったようだ。
これで棋聖戦は、藤井棋聖の2勝1敗、王位戦は藤井王位の2勝。ということは、佐々木七段がタイトルを奪取するには、棋聖戦を2戦2勝、王位戦を4勝1敗で乗り切らねばならない。
しかし本局の展開を見る限り、だいぶ厳しい。藤井王位を倒すには、初手からパーフェクトの手を続けないと勝てないことが分かる。どちらかひとつのタイトルを奪取するにしても、この苦行をあと何回かやらなければならないのだ。
無理だ。
藤井王位のタイトル2防衛が、事実上決まってしまった。
コメント (2)
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