第3局は▲豊島将之七段VS△YSS。早くもプロ側はカド番だ。
将棋は横歩取りに進む。22手目△6二玉がYSSの誘いの隙?だったが、本当に隙になってしまったようだ。
▲3三角成~▲2一角と踏みこんで、豊島七段の快勝。豊島七段はラクをして勝ったようだが、そこに至るまで、血のにじむような努力があった。
第4局は△森下卓九段VS▲ツツカナ。下馬評で意外だったのが、森下九段の評価の低さだ。
私の記憶が確かならば、かつて森下九段は若手の頃、「公式戦で1,500勝する」と豪語した。私も森下九段がタイトルのひとつやふたつは獲り、A級の常連になると信じていた。
その後の森下九段の活躍はやや期待外れだったが、その実力は折り紙つきだ。今回の予想でも、3つ勝つうちのひとりに、森下九段が入っていた。
戦型は相矢倉。森下九段の得意戦法で、実際中盤までは森下九段が優位に進めていたと思う。
しかし72手目△4七金に、ツツカナの▲2八角が素晴らしい辛抱。また80手目△3八金に▲5七金が意表の手で、これで十分というコンピューターの異能感覚には、大いに唸らされた。
そして本局、私が最も感心したのは、85手目の▲7八玉である。
後手の端攻めから予め逃げ、自陣の金銀に近付く。さらに▲8八歩受けの余地も作り、まことに味のよい一手に見えた。
従来コンピューターはこの類の指し手が苦手だったのだ。それがいまはノータイムで指している感じだ。コンピューターの進歩に、改めて驚くのである。
以下はツツカナの勝ち。中盤すぎまでいい勝負だったが、最後はコンピューターが勝つ、という雰囲気があり、果たしてそうなった。
これでコンピューターの3勝1敗。またもコンピューターの勝ち越しが決まったのである。
最終第5局は▲屋敷伸之九段VS△Ponanza。消化試合になってしまったが、一局の注目度はほかの対局と変わらない。
将棋は横歩取りになった。60手目、Ponanza△1六香が異能の香。プロ棋士はほとんど考えない手であろう。そして66手目△1六金が力強い金出で、この手には凄まじい迫力を感じた。ガチン、と金属音がしたものである。以下△3四歩まで角が詰んでは、金がソッポにいったものの、十分に働いたといってよい。
そもそもこの金は、34手目に△4三金と出たときから異能だった。ここはふつう、△4三銀と立ちそうなものである。そこを金とは、どういう感覚なのだろう。
最後はPonanzaの勝ち。△1六香は結果的に7九まで横すべりし、大いに働いた。Ponanzaがここまで読んでいたとは思わないが、あまりにも人間離れした指し手に、畏怖の念を抱いたものだった。
ところで第4局の終了後だったか、森下九段が新たな提案をした。棋士の棋力を最大限に引き出すために、対局者の継ぎ盤での検討を提案したのである。
私たちの棋士に対する畏敬の念のひとつに、頭の中で駒をどんどん進めることにある。それなのに、対局盤の横?で、あーでもない、こーでもないと、棋士が駒を動かしている姿を見せられても、興醒めしてしまうのではないか。
そんなにしてまでコンピューターに勝って、棋士側に何の得があるのかと思う。失うもののほうが多すぎはしないか?
ということで、今回の電王戦は、コンピューターの4勝1敗となった。今回の条件で4勝ならオンの字だろう。
さて私は以前から、コンピューターの棋力はプロ棋士を越えたと主張している。トップ棋士が出てくればコンピューターにはまだまだ負けない、と見る向きもあるが、トップ棋士と下位クラスの棋力差は、薄い薄い紙0.1枚であろう。それくらいなら、コンピューターが全て凌駕してしまうと思う。
コンピューターの進歩は凄まじい。これからその差は開く一方である。それを埋める簡単な方法は、やはり「駒落ち」であろう。
プロがコンピューターに駒を落とされるのは屈辱以外の何物でもないが、半世紀前の王将戦七番将棋や、戦前の公式戦では、プロ同士の駒落ち戦が行われていた。今回の戦績も、三番手直りに照らせば香落ちに該当する。
もし「第4回」があるならば、駒落ちの手合いは一考に値すると思う。
将棋は横歩取りに進む。22手目△6二玉がYSSの誘いの隙?だったが、本当に隙になってしまったようだ。
▲3三角成~▲2一角と踏みこんで、豊島七段の快勝。豊島七段はラクをして勝ったようだが、そこに至るまで、血のにじむような努力があった。
第4局は△森下卓九段VS▲ツツカナ。下馬評で意外だったのが、森下九段の評価の低さだ。
私の記憶が確かならば、かつて森下九段は若手の頃、「公式戦で1,500勝する」と豪語した。私も森下九段がタイトルのひとつやふたつは獲り、A級の常連になると信じていた。
その後の森下九段の活躍はやや期待外れだったが、その実力は折り紙つきだ。今回の予想でも、3つ勝つうちのひとりに、森下九段が入っていた。
戦型は相矢倉。森下九段の得意戦法で、実際中盤までは森下九段が優位に進めていたと思う。
しかし72手目△4七金に、ツツカナの▲2八角が素晴らしい辛抱。また80手目△3八金に▲5七金が意表の手で、これで十分というコンピューターの異能感覚には、大いに唸らされた。
そして本局、私が最も感心したのは、85手目の▲7八玉である。
後手の端攻めから予め逃げ、自陣の金銀に近付く。さらに▲8八歩受けの余地も作り、まことに味のよい一手に見えた。
従来コンピューターはこの類の指し手が苦手だったのだ。それがいまはノータイムで指している感じだ。コンピューターの進歩に、改めて驚くのである。
以下はツツカナの勝ち。中盤すぎまでいい勝負だったが、最後はコンピューターが勝つ、という雰囲気があり、果たしてそうなった。
これでコンピューターの3勝1敗。またもコンピューターの勝ち越しが決まったのである。
最終第5局は▲屋敷伸之九段VS△Ponanza。消化試合になってしまったが、一局の注目度はほかの対局と変わらない。
将棋は横歩取りになった。60手目、Ponanza△1六香が異能の香。プロ棋士はほとんど考えない手であろう。そして66手目△1六金が力強い金出で、この手には凄まじい迫力を感じた。ガチン、と金属音がしたものである。以下△3四歩まで角が詰んでは、金がソッポにいったものの、十分に働いたといってよい。
そもそもこの金は、34手目に△4三金と出たときから異能だった。ここはふつう、△4三銀と立ちそうなものである。そこを金とは、どういう感覚なのだろう。
最後はPonanzaの勝ち。△1六香は結果的に7九まで横すべりし、大いに働いた。Ponanzaがここまで読んでいたとは思わないが、あまりにも人間離れした指し手に、畏怖の念を抱いたものだった。
ところで第4局の終了後だったか、森下九段が新たな提案をした。棋士の棋力を最大限に引き出すために、対局者の継ぎ盤での検討を提案したのである。
私たちの棋士に対する畏敬の念のひとつに、頭の中で駒をどんどん進めることにある。それなのに、対局盤の横?で、あーでもない、こーでもないと、棋士が駒を動かしている姿を見せられても、興醒めしてしまうのではないか。
そんなにしてまでコンピューターに勝って、棋士側に何の得があるのかと思う。失うもののほうが多すぎはしないか?
ということで、今回の電王戦は、コンピューターの4勝1敗となった。今回の条件で4勝ならオンの字だろう。
さて私は以前から、コンピューターの棋力はプロ棋士を越えたと主張している。トップ棋士が出てくればコンピューターにはまだまだ負けない、と見る向きもあるが、トップ棋士と下位クラスの棋力差は、薄い薄い紙0.1枚であろう。それくらいなら、コンピューターが全て凌駕してしまうと思う。
コンピューターの進歩は凄まじい。これからその差は開く一方である。それを埋める簡単な方法は、やはり「駒落ち」であろう。
プロがコンピューターに駒を落とされるのは屈辱以外の何物でもないが、半世紀前の王将戦七番将棋や、戦前の公式戦では、プロ同士の駒落ち戦が行われていた。今回の戦績も、三番手直りに照らせば香落ちに該当する。
もし「第4回」があるならば、駒落ちの手合いは一考に値すると思う。