一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

藤井竜王の対振り飛車戦

2022-02-23 14:00:54 | 将棋雑記
17日にアップした「対藤井竜王戦の番狂わせ3選」を調べたとき、3選のうちの2局が、対振り飛車戦だった。
そういえば、「藤井竜王は、対振り飛車に弱いのではないか」という噂があった。
藤井竜王は、相居飛車戦では玉を▲6八か△4二に据えることが多く、戦いに応じて玉を反対側へ逃げる。玉の自由度、懐が広いのである。
これが対振り飛車戦になると、玉を▲7八か△3二以遠にやることになり、振り飛車側は経験値の高い形で戦うことができる。これが、藤井竜王が対振り飛車戦を苦手とする要因に思えるのだ。
では実際に、藤井竜王の対振り飛車戦の戦績はどうなのか。ネットには幸い、藤井ファンによる、細かい成績が公開されている。これを大いに参考にさせていただき、集計してみた。

菅井竜也八段 5-2 ●中飛車、●中飛車、○中飛車、○中飛車、○四間飛車、○三間飛車、○四間飛車
久保利明九段 3-3 ●四間飛車、○中飛車、●四間飛車、●四間飛車、○四間飛車、○四間飛車
竹内雄悟五段 6-0 ○四間飛車、○中飛車、○三間飛車、○中飛車、○中飛車、○中飛車
北浜健介八段 5-0 ○中飛車、○中飛車、○中飛車、○中飛車、○中飛車
杉本昌隆八段 3-0 ○四間飛車、○四間飛車、○四間飛車
都成竜馬七段 3-0 ○中飛車、○中飛車、○中飛車
阪口悟六段 3-0 ○四間飛車、○中飛車、○中飛車
今泉健司五段 2-1 ●中飛車、○四間飛車、○三間飛車
宮本広志五段 3-0 ○四間飛車、○中飛車、○四間飛車
永瀬拓矢王座 1-1 ●四間飛車、○三間飛車
中田功八段 2-0 ○三間飛車、○三間飛車
大石直嗣七段 2-0 ○向かい飛車、○中飛車
西川和宏六段 2-0 ○中飛車、○三間飛車
中村亮介六段 2-0 ○四間飛車、○四間飛車
古森悠太五段 2-0 ○四間飛車、○四間飛車
羽生善治九段 1-0 ○三間飛車
南芳一九段 1-0 ○三間飛車
鈴木大介九段 1-0 ○四間飛車
佐藤天彦九段 1-0 ○中飛車
松尾歩八段 1-0 ○中飛車
阿久津主税八段 1-0 ○向かい飛車
糸谷哲郎八段 1-0 ○向かい飛車
有森浩三七段 1-0 ○向かい飛車
平藤真吾七段 1-0 ○四間飛車
豊川孝弘七段 1-0 ○向かい飛車
矢倉規広七段 1-0 ○四間飛車
窪田義行七段 1-0 ○四間飛車
村田顕弘六段 1-0 ○向かい飛車
増田康宏六段 1-0 ○中飛車
大橋貴洸六段 1-0 ○三間飛車
藤倉勇樹五段 1-0 ○三間飛車
門倉啓太五段 1-0 ○四間飛車
星野良生五段 1-0 ○中飛車
井出隼平五段 0-1 ●三間飛車
杉本和陽五段 1-0 ○三間飛車
出口若武五段 1-0 ○三間飛車
里見香奈女流五冠 1-0 ○中飛車

以上、37名に振り飛車を指されて、藤井竜王の65勝8敗。勝率は.890である。個別では5名にしか負けていない。意外に飛車を振った棋士が多いが、居飛車党の棋士が気分転換に振るケースもあるようだ。
藤井竜王の公式戦通算成績は、きょう現在316局で264勝52敗・勝率.835。ということは、相居飛車戦は199勝44敗・勝率.819。つまり相居飛車戦より対振り飛車戦のほうが、勝率が高いのだ。
戦型別の内訳は、対中飛車25勝3敗、四間飛車21勝4敗、三間飛車13勝1敗、向かい飛車6勝0敗である。
一見、四間飛車が善戦していそうだが、このうちの3勝は久保九段が挙げたものである。残りの1勝は、例の井出五段戦だ。
また中飛車の2勝も、菅井八段が挙げたもの。極論すれば、久保九段と菅井八段しか、藤井竜王に善戦していないのだ。
藤井竜王は昨年8月21日を最後に、対振り飛車戦を指していない。藤井竜王は対振り飛車のほうが強いという見解が広まり、飛車を振る棋士が減っているのかもしれない。
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2月11日から20日までの、当ブログへの訪問者数とページビュー数

2022-02-22 01:05:27 | プライベート
2月11日から20日までの、当ブログの訪問者数(UU)とページビュー(PV)を記しておこう。


2月11日(金・祝)「第25回 私が勝手に選ぶ、女流棋士ファンランキングトップ10」
1135UU、2065PV
3090156ブログ中291位

2月12日(土)「かりんの名手」
1302UU、2097PV
3090352ブログ中244位

2月13日(日)「最年長五冠」
1029UU、1799PV
3090498ブログ中342位

2月14日(月)「第80期C級1組順位戦10回戦の結果」
819UU、1408PV
3090621ブログ中409位

2月15日(火)「藤井竜王のマンガのような記録」
949UU、2185PV
3090738ブログ中290位

2月16日(水)「最近見た夢(2022-01-22、25、02-07、10、13、15、16)」
989UU、2109PV
3090938ブログ中286位

2月17日(木)「対藤井竜王戦の番狂わせ3選」
802UU、1449PV
3091080ブログ中413位

2月18日(金)「第47期棋王戦第1局」
994UU、1815PV
3091234ブログ中339位

2月19日(土)「羽生九段は今年度、勝ち越せるか②」
986UU、1759PV
3091365ブログ中395位

2月20日(日)「個性的な新人棋士」
874UU、1773PV
3091474ブログ中431位

10日間の平均は、987.9UU、1845.9PV。
藤井聡太竜王が王将を奪取して五冠王になったのが12日。当ブログでも、いちばんアクセス数が多かった。
読者にはどうでもいい、16日の「最近見た夢」に、989人もの訪問があった。貴重な時間を浪費させてしまい、申し訳なく思っている。
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覚醒・山口女流二段

2022-02-21 00:35:06 | 女流棋士
17日に指された第4期清麗戦・伊藤沙恵女流三段VS山口恵梨子女流二段戦で、山口女流二段が勝ったのにはビックリした。それも快勝である。
将棋は山口女流二段の先番で、初手▲2六歩。山口女流二段は振り飛車党だから珍しい。ただ最近は居飛車の勉強もしているらしく、これも当然の一手だったか。
山口女流二段は▲2五歩△3三角を決めて左美濃に組む。いっぽう伊藤女流三段はこの形を活かし、以下△4二銀とした。
伊藤女流三段は元来銀冠の採用率が高く、その形で勝率もよい。ただどちらの形も、私には損な形に見える。それなのに勝てる女流棋士がいないのが不思議で、みんな何を研究しているんだと訝ったものだ。
山口女流二段は7筋で得た1歩を2筋の継ぎ歩で使い、△2四角に▲4五歩(第1図)。私のモヤモヤした気持ちを払拭した手順で、見事に△3三角型を咎めていると思った。

▲4五歩を△同歩なら、▲6五歩△5五銀▲同銀△同歩▲同角で先手優勢。よって伊藤女流三段は△4六角と出たが、▲4八飛と切り返して先手好調だ。△1九角成と香は取られるが、攻め駒が4筋に集中し、香損など物の数ではない。
そのあとは「攻めるヤマトナデシコ」よろしく、バリバリ攻める。
そして第2図となった。

ここで1歩があれば▲4四歩と攻めを継続できるが、あいにく歩切れだ。
そこで山口女流二段は▲4四桂!(第3図) 歩の代わりに桂を打った。

これを△同金なら、▲5三銀△4三金▲3三桂成で先手勝ち。よって伊藤女流三段は△6一銀と受けたが、▲6二銀がまた詰めろだ。
以下も山口女流二段は細い攻めを繋ぎ、勝ち切ったのだった。
それまで山口女流二段は、伊藤女流三段に5戦全敗だった。その屈辱をまとめて払拭する、見事な快勝劇だった。
最近はユーチューバーとして頑張っている山口女流二段だが、ユーチューブをほとんど見ない私は、ここでの活動をほとんど評価しない。盤上での活躍がすべてである。
そこで山口女流二段の戦績を見ると、今年度は21勝9敗の好成績。しかも直近12局は11勝1敗と絶好調だ。山口女流二段はこの好調を維持し、ぜひともタイトル戦登場を実現してほしい。
コメント (2)
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個性的な新人棋士

2022-02-20 14:48:10 | 男性棋士
先週放送のNHK「将棋フォーカス」は、昨年10月デビューの横山友紀四段(22歳)、狩山幹生四段(20歳)の特集だった。
この新四段がどちらも面白い。すなわち、横山四段は
「粘っていると良くない癖が付いちゃうんで、あまり粘らないようにしている。勝負手ってあるじゃないですか。そういうのって道理から外れてるんで、負ける時はサッパリ負けるようにしてます」
狩山四段は
「将棋の本は読んだことがないですね。詰将棋は見るだけでもイヤですね。(対局で)自分から仕掛けることは絶対にしない。自分のスタイルだと思って割り切ってますね」
とコメントした。
まず横山四段の言。将棋って、不利になったら勝負手を放ち、粘って逆転を狙うものだと思う。それを否定したら、勝てる将棋が相当に限定されてしまうのではないか。
狩山四段もすごい。将棋の本を読んだことがない、詰将棋は嫌い、は煩雑を避けるため目をつぶるとして、「自分から仕掛けない」がちょっと考えられない。将棋は攻勢に出た方、勝率が高い。そこで相手の仕掛けを待っていたら作戦負けの守勢に陥り、これも勝率が低くなると思うのだ。
では具体的に、2人の将棋を見てみよう。
まず、横山四段はここまで公式戦を4局指し、2勝2敗。第1図はデビュー戦の第35期竜王戦6組・冨田誠也四段戦の投了図である。

横山四段が▲4八金と馬を叱った手に、冨田四段は△6六馬と飛車を取る。ここで横山四段が馬を取り返さず、投了となった。
ここ、何はともあれ▲6六同角と取るだろう。そこで後手に何か決め手を指されて投了、というのが流れではないのか。
ずいぶん中途半端な投了で、もう少し指せそうな気もする。

第2図は第48期棋王戦の、古森悠太五段戦。△7六馬までで投了だが、これは先手が攻防ともに見込みなく、投了もやむを得ないと思う。
ただ横山四段の場合、「粘らない」のが身上だから、投了図よりも、それより前の局面で、粘れる手を見送った箇所があるのだろう。
続いて狩山四段の将棋。狩山四段はここまで5勝1敗と好成績。うち3局の仕掛けの局面を見てみよう。

第3図は第72期王将戦・小林裕士七段との一戦。後手番ながら△7五歩と先に攻められた。

第4図は第48期棋王戦・伊奈祐介七段との一戦。先手の狩山四段が自ら角を換わったが、△5五銀左と、先に駒をぶつけられた。

第5図は第35期竜王戦・古森五段との千日手指し直し局。
古森五段が△3六歩と仕掛け、▲同歩△5五歩▲同歩△同銀▲3五歩と、華々しい戦いに進行した。
いずれも、後手に先に仕掛けられている。それでも5勝1敗なのだからすごい。
いずれにしても私とは別世界の将棋観だが、よく考えてみると、私もふたりに似たところがないともいえない。
私も苦しい局面を長く指すのがイヤで、まあ粘りの手を指すこともあるが、こりゃダメだと思ったら、終盤の入口でも投げてしまう。
「仕掛け」もそうで、私も相手に仕掛けられることが多い。実は、仕掛け方がよく分からないのである。
AI全盛で指し手の個性が失われがちな昨今、独特の将棋観を持つ棋士が現れるのは大歓迎である。今後もお二人の将棋に注目していきたい。
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羽生九段は今年度、勝ち越せるか②

2022-02-19 01:49:36 | 将棋雑記
昨年9月18日、当ブログに「羽生九段は今年度、勝ち越せるか」という記事をアップした。そのとき予想した内容が、意外と現実に近くなっている。興味のある方はお読みください。
きょうはその記事の第2弾である。
あれから5ヶ月、羽生九段の今年度成績は、14勝19敗となった。16日の王位戦挑戦者決定リーグで久保利明九段に痛い逆転負けを喫し、借金はまたもや「5」となった。いよいよ勝ち越しに赤信号である。
では、今年度の残り確定対局を記そう。

●第35期竜王戦
ランキング戦1組2回戦 丸山忠久九段

●第80期A級順位戦
最終戦 広瀬章人八段

●第63期王位戦
挑戦者決定リーグ2回戦 池永天志五段
同3回戦 千葉幸生七段

●第70期王座戦
二次予選決勝 佐々木勇気七段or高野智史六段

●第71回NHK杯
準決勝 佐藤天彦九段or豊島将之九段

以上、6局は指せるのではないか。
竜王戦と王座戦は、勝っても次は、4月以降だろう。
王位戦リーグは、例年は3月末まで3局指すのが慣例なので、今年度もあと2局は指せる。
NHK杯は、勝てばもちろん決勝戦があるが、対局数は1つ増えるだけなのが痛い。
ともあれこの6局に全勝すれば、20勝19敗で勝ち越しになると同時に、通算1501勝を達成する。
各自の対戦成績も見てみよう。

対丸山九段……41勝20敗
対広瀬八段……21勝15敗
対池永五段……1勝1敗
対千葉七段……0勝0敗
対佐々木七段……1勝2敗
対高野六段……1勝0敗
対佐藤九段……10勝14敗
対豊島九段……19勝24敗

丸山九段には相性がよく、勝ちを期待できるが、あとは総じて苦戦している。広瀬八段には6つ勝ち越しているが、近年は徐々に差を詰められている。
結論としては、今年度の勝ち越しはもう無理。ということは、通算1500勝も次年度に持ち越しである。
まさにまさかの展開で、私としては羽生九段のA級陥落より、棋士生活37年目にして、10勝台での負け越しのほうがショッキングだ。
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