おととい藤井聡太竜王の記録を調べていて思ったのだが、藤井竜王はデビューしてから今日までの5年5ヶ月で、52敗しかしていなかった。
デビュー年から0敗、12敗、8敗、12敗、8敗、そして2021年度がここまで12敗である。ここ1、2年は上位者とのタイトル戦が絡んでいるのに、ほとんど敗数が増えていない。
羽生善治九段がかつて勝ちまくっていたとき、「負ける数はみんな同じですから」と謙遜していたが、藤井竜王は例外だ。「年度8敗」って、そんなことがあるのだろうか。
ただそんな藤井竜王にも、不覚の敗戦はあるはずだ。いわゆる「番狂わせ」の対局を3つ選んでみた。
・2017年9月2日 第7期加古川青流戦 ●井出隼平四段
・2017年9月22日 第26期銀河戦 ●上村亘四段
・2018年6月11日 第68回NHK杯 ●今泉健司四段
井出四段戦は、先手の井出四段が三間飛車に振った。藤井四段は左美濃に組み、キビキビとした中盤戦が展開された。しかし藤井四段が終盤で正着を逸し、井出四段が優勢。
第1図は藤井四段が△3三歩と銀を追った局面。しかし▲同銀成が当然の継続で、△同桂に▲3四歩で、先手の勝勢となった。以下、131手まで井出四段の勝ち。
藤井四段は前局の豊島将之八段戦に続いての敗戦で、すなわち、初の「連敗」となった。
上村四段戦は、先手藤井四段の横歩取り。華々しい戦いになり、藤井四段は飛車を吊り上げ、▲1五角の準王手飛車。しかし△2五飛打(第2図)が習いある受けだ。
以下▲同角△同飛に▲2八に受ける歩がなく、藤井四段は▲4五歩△3四金▲1一角成としたが、△2九飛成が大きく、上村四段が攻め勝った。
藤井四段は先手番で初の負けで、大きな話題になった。
今泉四段戦は、NHK杯で放送されたから、知っている人も多いはず。先手今泉四段の中飛車に、藤井七段は左美濃。お互いよく指し見応えのある中盤戦になった。
しかし終盤今泉四段が抜け出し、優勢。第3図は藤井七段が△3六銀とかぶせたところ。
ここで▲4六銀は△2六銀が嫌味と見たのか、今泉四段は▲3五銀と捨てた。以下△同玉▲4六銀△同馬▲同角成△同玉▲4二竜と、駒損ながらも玉を引っ張りだし、今泉四段の勝勢となった。以下、161手まで今泉四段のうれしい勝利となった。
井出現五段と上村現五段の将棋を選んだのは、本人には不本意だったかもしれないが、実はふたりには共通点がある。すなわち、井出五段は2016年度、上村五段は2013年度と、棋士1年目で、順位戦C級2組で降級点を取っているのだ。C級2組で降級点持ちの棋士が「29連勝男」の藤井四段に勝ったのだから、やはり「番狂わせ」と言っていいと思う。
また今泉現五段も奨励会を退会後、プロ編入試験を受けてプロになったわけで、典型的な叩き上げでといえる。その棋士が15歳の大型新人に勝ったのだから、これも大殊勲といってよい。
そしてこの3局に通ずるのが、どれも早指し戦だったということだ。
すなわち加古川青流戦は持ち時間1時間、銀河戦は15分+10分、NHK杯は10分+10分である。藤井竜王は、2日制持ち時間8時間は16勝1敗、持ち時間6時間の順位戦は48勝3敗で、ともに勝率9割を越えている。だが早指し戦になると読みの精度をわずかに欠き、勝率も低くなるようだ。
また、振り飛車の将棋が2局あることも興味深い。さすがの藤井竜王も対振り飛車では類型的な囲いにせざるを得ず、振り飛車党の手慣れた指し回しに手を焼いているのではないか。
いずれにしても、竜王と名人が藤井五冠にストレート負けした現在、誰が藤井五冠に勝ってもニュースとなる。
デビュー年から0敗、12敗、8敗、12敗、8敗、そして2021年度がここまで12敗である。ここ1、2年は上位者とのタイトル戦が絡んでいるのに、ほとんど敗数が増えていない。
羽生善治九段がかつて勝ちまくっていたとき、「負ける数はみんな同じですから」と謙遜していたが、藤井竜王は例外だ。「年度8敗」って、そんなことがあるのだろうか。
ただそんな藤井竜王にも、不覚の敗戦はあるはずだ。いわゆる「番狂わせ」の対局を3つ選んでみた。
・2017年9月2日 第7期加古川青流戦 ●井出隼平四段
・2017年9月22日 第26期銀河戦 ●上村亘四段
・2018年6月11日 第68回NHK杯 ●今泉健司四段
井出四段戦は、先手の井出四段が三間飛車に振った。藤井四段は左美濃に組み、キビキビとした中盤戦が展開された。しかし藤井四段が終盤で正着を逸し、井出四段が優勢。
第1図は藤井四段が△3三歩と銀を追った局面。しかし▲同銀成が当然の継続で、△同桂に▲3四歩で、先手の勝勢となった。以下、131手まで井出四段の勝ち。
藤井四段は前局の豊島将之八段戦に続いての敗戦で、すなわち、初の「連敗」となった。
上村四段戦は、先手藤井四段の横歩取り。華々しい戦いになり、藤井四段は飛車を吊り上げ、▲1五角の準王手飛車。しかし△2五飛打(第2図)が習いある受けだ。
以下▲同角△同飛に▲2八に受ける歩がなく、藤井四段は▲4五歩△3四金▲1一角成としたが、△2九飛成が大きく、上村四段が攻め勝った。
藤井四段は先手番で初の負けで、大きな話題になった。
今泉四段戦は、NHK杯で放送されたから、知っている人も多いはず。先手今泉四段の中飛車に、藤井七段は左美濃。お互いよく指し見応えのある中盤戦になった。
しかし終盤今泉四段が抜け出し、優勢。第3図は藤井七段が△3六銀とかぶせたところ。
ここで▲4六銀は△2六銀が嫌味と見たのか、今泉四段は▲3五銀と捨てた。以下△同玉▲4六銀△同馬▲同角成△同玉▲4二竜と、駒損ながらも玉を引っ張りだし、今泉四段の勝勢となった。以下、161手まで今泉四段のうれしい勝利となった。
井出現五段と上村現五段の将棋を選んだのは、本人には不本意だったかもしれないが、実はふたりには共通点がある。すなわち、井出五段は2016年度、上村五段は2013年度と、棋士1年目で、順位戦C級2組で降級点を取っているのだ。C級2組で降級点持ちの棋士が「29連勝男」の藤井四段に勝ったのだから、やはり「番狂わせ」と言っていいと思う。
また今泉現五段も奨励会を退会後、プロ編入試験を受けてプロになったわけで、典型的な叩き上げでといえる。その棋士が15歳の大型新人に勝ったのだから、これも大殊勲といってよい。
そしてこの3局に通ずるのが、どれも早指し戦だったということだ。
すなわち加古川青流戦は持ち時間1時間、銀河戦は15分+10分、NHK杯は10分+10分である。藤井竜王は、2日制持ち時間8時間は16勝1敗、持ち時間6時間の順位戦は48勝3敗で、ともに勝率9割を越えている。だが早指し戦になると読みの精度をわずかに欠き、勝率も低くなるようだ。
また、振り飛車の将棋が2局あることも興味深い。さすがの藤井竜王も対振り飛車では類型的な囲いにせざるを得ず、振り飛車党の手慣れた指し回しに手を焼いているのではないか。
いずれにしても、竜王と名人が藤井五冠にストレート負けした現在、誰が藤井五冠に勝ってもニュースとなる。