一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

夢の終わり

2024-05-21 22:41:35 | 将棋雑記
先日の第37期竜王戦で5組降級が決まった川上猛七段だが、引退の報はなかった。
考えてみたら、川上七段が昨年3月31日にフリークラス満了になったとき、竜王戦はとうに36期が始まっていた。よって、川上七段は第38期も参加できることになる。
そして川上七段は、第38期に4組に復帰しないと、アウトだ。

   ◇

さて、きょうは第37期竜王戦(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)ランキング戦6組決勝・藤本渚五段VS山下数毅奨励会三段戦がある。言うまでもなく、本局に山下三段が勝って優勝すると奨励会三段リーグの次点1となり、累計2で四段昇段の権利を得られる。ABEMAでは今回も中継があり、ありがたいことだった。
将棋は山下三段の先手で、相居飛車になった。その後角を換わったが、お互い角を打ち、じっくりした進行になる。ABEMAの形勢バーはわずかに山下三段よし。今回私は山下三段の応援なので、まずまずだ。
そのまま夕方になった。藤本五段は雁木。山下三段は金矢倉に銀が付き、美しい。形勢バーも「山下65:35藤本」で、優勢に近い有利だ。
しかし山下三段はせわしなく頭を動かし、落ち着きがない。
山下三段、ぶつかっていた6筋の歩を取る。これが若干疑問で、形勢が縮まった。藤本五段は桂で取るが、山下三段は銀を逃げる。すると藤本五段は8筋の歩を突く。以下継ぎ歩の形になったが、山下三段は相当迷いながら桂を取った。しかし藤本五段に8筋の歩を取りこまれ、これじゃあ桂得くらいじゃ合わない。
山下三段は飛車先に歩を打ったが、藤本五段は1枚金を剥がし、そのあとこの歩を取り、王手。あれだけ美しかった金矢倉がボロボロにされてしまった。この間、わずか10分程度ではなかったか。
いやいやいやいや、これが山下三段予定の進行とは思えない。なんで読み直さなかったのだろう。せめて銀を逃げるところで考え直せばまだまだだったが、この進行じゃダメである。私だったらバカバカしくて投げるところである。
本譜は山下三段が玉を引き、夕食休憩まで7、8分となったところで、藤本五段が夕食休憩を申し出た。
大山康晴十五世名人や中原誠十六世名人が得意にしていた手段で、ふだんはもっと早くから休憩に入るのだが、この夕休の間、不利な相手に局面を考えさせ、諦めさせるのである。
本局も、この時勝負が決した。再開後、山下三段も粘ったが、藤本五段は間違えない。19時29分、即詰みまで指して、山下三段が投了した。
本局、山下三段が勝っていれば、仮に四段昇段を選んでも、それが実現するのは10月1日からだった。
よって竜王戦決勝トーナメントでは「奨励会三段」の肩書で参戦することになり、また別の意味で、その戦いぶりが注目されるところだった。
しかし負けちゃったんじゃしょうがない。夢が、終わった。
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第82期名人戦第4局2日目

2024-05-20 22:38:16 | 男性棋戦
第82期名人戦第4局(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)2日目、豊島将之九段の封じ手は、桂を跳ねる手だった。こうやって遊び駒を活用するのがいいらしい。
ここからの手がまた難しいのだが、数手進み、なおも豊島九段が微差のリードを保っていた。
ABEMA2日目の聞き手のひとりは武富礼衣女流初段で、今回はひときわ乃木坂度が高い。解説者のひとりはABEMA準レギュラーの藤井猛九段で、いまは3時のおやつで藤井九段の好きなものを当てっこしている。ニヤニヤする藤井九段に、キャピキャピの武富女流初段。名人戦の激闘を演じている最中にのんびりしているが、四六時中将棋の解説をしていたら、視聴者も疲れてしまう。
ああそれにしても、武富女流初段が出演した天童人間将棋に行けなかったことが、いまさらながらに悔やまれた。
解説に戻り、豊島九段の手番で、藤井九段は自陣に飛車を打つ手を解説している。その変化のどれもが豊島九段よしになり、「評価値の差より、もっと大きいと思いますね」と藤井九段は断言する。
しかし豊島九段はなかなか指さない。果たして、豊島九段は別の手を指した。やがて形勢も五分五分になり、ああ、結局この将棋も藤井聡太名人が勝つんだなと思った。
ところがそれからしばらく経って、豊島九段に形勢の針が振れた。これは珍しい展開である。この将棋の急所は「4三」で、そこを数の攻めで攻めたのがよかったようだ。
局面は豊島九段勝勢。自玉は安全地帯に逃げ込んで、攻めに専念できる形。しかもその攻めも考えやすく、「この将棋は逆転しません」と藤井九段。
豊島九段、天王山の金をグイッと出る。この金は、飛車取りに打ったあの金だ。そして、この金出を見て、藤井名人が投了した。豊島九段は、2022年6月以来、ほぼ2年ぶりの藤井戦勝利。呪縛を解いた意味でも、この勝ちは大きかった。
しかし勝負事は本当に分からない。この第4局、私は藤井名人が当たり前のように勝つと思っていた。戦前は、そのくらいお互いの勢いが違っていたのである。
しかしこうなってみると、名人位の行方は相変わらず藤井名人寄りだが、藤井名人が叡王戦に専念できないのが痛いのだ。藤井名人の今年度は4勝3敗。数字だけ見れば平凡な成績で、藤井名人らしくない。藤井名人、実はけっこう正念場なのではあるまいか。
注目の第5局は、26日、27日。
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第82期名人戦第4局1日目

2024-05-19 00:36:04 | 男性棋戦
藤井聡太名人に豊島将之九段が挑戦する、第82期名人戦第4局である(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)。
ここまで藤井名人の3連勝。豊島九段はあとがないが、最近の豊島九段は、王位リーグ1勝4敗に代表されるように不調で、今年度は0勝6敗。本局もまったく、勝てる雰囲気がない。よって本局、藤井名人の防衛劇を淡々と見せつけられそうな気がした。
余談だが、もし藤井名人が何かのタイトル戦で0勝3敗になったとして、それでも私は藤井名人の防衛に乗る。藤井名人の強さは、そのくらいのものである。
対局場は大分県別府市。言わずとしれた日豊本線の主要駅である。同線は特急がバンバン走り使い勝手がよいが、実は1日に数本しかない普通列車に乗るのが、風情があってよい。藤井名人ならこのよさを分かってくれると思う。
豊島九段の先手で対局開始。角道を開け、藤井名人が飛車先の歩を突いたところで、豊島九段が端の歩を突いた。不急の手を指すことで、あえて後手番になる。私も用いたことがあるが、それが名人戦で現れるとは思わなかった。
ここで藤井名人は端の手を突く手もあったが、角道を開ける。やはり名人は、こうでなければならぬ。
そして豊島九段の作戦は、「横歩取らせ」だった。先日の王位リーグ・石井健太郎七段戦でも後手番でこの作戦だった。結果は敗れたが、豊島九段なりに何か手ごたえを掴んだかもしれない。
豊島九段、一手角を上がったのに、自ら角を換わった。3手目の端歩はともかく、これは完全な2手損で、その真意が分からぬ。ただ、こうした急戦調の将棋は、駒を動かさないほうがスキがない意味がある。
豊島九段、敵陣に角を打つ。藤井名人は角を合わせる。豊島九段がこの角を取ってしまうと、千日手の可能性すらある。
よって豊島九段は金のほうを取り、その金で敵飛を詰ました。藤井名人は飛車を切るしかないが、豊島九段は大駒を取り返した。
ここで藤井名人が飛車打ちの傷を消すべく8筋に歩を謝ったが、これは相当な葛藤があったのではなかろうか。
ここで駒割りを見ると、飛金と角銀の交換で、豊島九段がよい。藤井名人は馬を作っているが、前述の通り、8筋に歩を打っているのが痛い。総合して、ABEMA AIは、豊島九段微差でよし、の判断だった。私も、先手を持って指したいところである。私としては、序盤から藤井名人がリードを広げるもんだと思っていたから、この展開は意外だった。ま、これが将棋の面白さである。
39手目を豊島九段が封じた。私にはまったく指し手の予想がつかないが、ここまで豊島九段が健闘しているのは何より。2日目が楽しみだ。
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竜王戦で5組降級の川上七段はどうなる

2024-05-18 00:12:30 | 将棋雑考
17日、川上猛七段が第37期竜王戦4組の残留決定戦で青嶋未来六段に敗れ、5組降級が決定した。
竜王戦は風通しがいいので降級は仕方ないが、竜王戦Wikipediaを見ると、気になることが書いてあった。
その前に、基礎知識を確認しておく。引退が決定した棋士が竜王戦5組に在籍していた場合、そこから2期の参加延長となる。仮に4組在籍だった場合は、制限なしで参加できる。
川上七段は第35期に5組でスタートしたが、決勝まで進出し、4組に昇級した。ランキング戦では先崎学九段、森下卓九段、南芳一九段など、元A級を撃破しての決勝進出だったから、4組昇級の価値は十分あった。
しかしフリークラスのほうは2023年3月末日に10年満期となり、川上七段は竜王戦だけが参加できることになった。現役引退棋士が4組、という初のケースだった。
翌第36期はランキング戦4組1回戦、昇級者決定戦で負け、残留決定戦に回ったが、A級の中村太地八段に勝ち、奇跡の残留を決めたのだった。
だが川上七段は今期も4組の1回戦、昇級者決定戦と負け、そして今回、青嶋六段に屈したわけである。
これで5組に降級したわけだが、ふつうに考えれば、5組は2期在籍が可能だから、第38期、第39期も参加できると思う。
ところがWikipediaには、5組の2期在籍は、4組の在籍期間も含む、とあった。
とするならば、川上七段は第36期、第37期と4組に在籍したから、今回の降級で即、引退ということになってしまう。
本当だろうか?
主催者は、順位戦の結果だけで(現役)棋士生命が縮められるのをよしとせず、延命ルールを構築したのだと思う。
それが今回新たに見つかったルールでは、棋士生命をあえて短くしているかのようである。
もういっそのこと、竜王戦独自の降級点制度を作ったらどうだろうか。
川上七段の去就は、20日に分かる。
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第65期王位戦挑戦者決定リーグ最終局

2024-05-17 19:25:18 | 男性棋戦
いまさらだが、14日に行われた、第65期王位戦挑戦者決定リーグの最終戦を振り返ってみよう。
まず、4回戦までの星と、最終戦の相手を記してみる。

<紅組>
佐々木大地七段(3勝1敗)VS佐藤天彦九段(2勝2敗)
豊島将之九段(1勝3敗)VS石井健太郎七段(0勝4敗)
斎藤慎太郎八段(3勝1敗)VS藤本渚五段(3勝1敗)

<白組>
羽生善治九段(3勝1敗)VS飯島栄治八段(0勝4敗)
渡辺明九段(3勝1敗)VS木村一基九段(3勝1敗)
森内俊之九段(2勝2敗)VS西川和宏六段(1勝3敗)

それぞれ勝敗予想をすると、紅組の佐々木VS佐藤戦は、いい勝負。
豊島VS石井戦は、豊島九段が最近元気がないので、石井七段が勝つと思う。
斎藤VS藤本戦もいい勝負。ただ、今回は斎藤VS藤本の勝者が、そのまま挑戦者決定戦を指すことになる気がした。
白組は、羽生VS飯島戦は、羽生九段が勝つだろう。
渡辺VS木村戦はいい勝負。
森内VS西川戦は、森内九段が勝つだろう。
となれば羽生九段はプレーオフを指さなければならないが、渡辺九段と木村九段、どちらと指すにしても再び勝つと思った。
当日はABEMAで羽生VS飯島戦があるとの告知を見て、楽しみにしていた。
ところが対局開始時にABEMAを見ると、斎藤VS藤本戦をやっていた。??
……上述の通り、斎藤VS藤本戦は3勝同士の一戦だから注目度は高い。 しかし、マニア垂涎のカードは羽生VS飯島戦である。羽生九段のプレーオフ進出なるかという注目度はもちろん、ここまで全敗の飯島八段が、レジェンド相手にどんな将棋を指すか、興味があった。
ところがABEMAは、それを直前で?変更した。ABEMAはまだ、将棋ファンの観戦心理を心得てないなと思う。
もっとも主催者は、各カードを無料中継してくれていた。私は連盟の中継アプリに加入していないので、この措置はうれしかった。
さて6局の戦型をざっと書くと、紅組の佐々木VS佐藤戦は、佐藤九段の三間飛車に、佐々木七段の右四間飛車。豊島VS石井戦は、角換わり相早繰り銀。斎藤VS藤本戦は、矢倉VS雁木。
白組に移り、羽生VS飯島戦は、羽生九段の横歩取り。渡辺VS木村戦は急戦矢倉。森内VS西川戦は、西川六段の三間飛車に、森内九段が居飛車穴熊を採った。
将棋はどれもいい勝負だったが、やはりABEMA中継がある斎藤VS藤本戦を見てしまう。藤本五段は雁木なのに玉が5八で、先の竜王戦1組・VS佐藤康光九段戦のような布陣だ。
対して斎藤八段は菊水矢倉に組み、攻めと守りがキッチリしている。昨今は角を換わらなくても玉をガッチリ囲わないのがトレンドのようだが、昭和生まれの私としては、玉はしっかり囲ってほしいわけである。だから今回は、斎藤八段を応援することになった。
金銀3枚の守りに、攻めは飛角銀桂。どんなにAIが進化しようとも、この摂理は永遠に変わらないのではと思う。
藤本五段は9筋から端攻めに出たが、斎藤八段がうまくいなして優勢。斎藤八段は名人戦2年連続挑戦の記録を持っている。昨年度はそのA級から降級してしまったが、本局はじっくりと落ち着いていて、そのころの強さが戻った気がした。
佐々木VS佐藤戦は、対抗形らしい攻め合い。とうていAIの研究の及ぶところではなく、やはり将棋はこうでなくては面白くない。
それにしても佐藤九段は、振り飛車に転じてから将棋に元気が出てきたように思う(気のせい)。
豊島VS石井戦は、石井七段が単騎の桂跳ねをしたが、これに豊島九段が桂を生け捕るべく銀を引いたのが序盤の勝負手。石井七段は攻め続けるよりなくなったが、このシャニムニ攻めが存外うるさく、そのまま攻め倒しそうな勢いである。
白組に目を転じると、羽生VS飯島戦は、羽生九段が順調にリードを拡げている感じ。
渡辺VS木村戦は、双方の銀が前線に進出して、駅馬車定跡を思い起こさせる。いまは後手の渡辺九段が先攻して、指しやすいか。
森内VS西川戦は、森内九段が盤石の指し回しで、優勢。全盛時の強さが戻ってきたかのようだ。
6局ともすべて面白く、河口俊彦八段が対局日誌の取材をしていたら、どんな切り口にしただろう。いまは河口八段の代わりになる人がいない。残念である。
王位戦は持ち時間が4時間なので、そろそろ決着がつく。
19時10分、まず石井七段が勝ち名乗り。攻めが綺麗に決まったあと守りに入る緩急自在の指し回しで、豊島九段が戦意を喪失して投了した。豊島九段、名人戦第4局を前に、光明が見えない。
その2分後、佐藤九段が勝ち。これで紅組は、斎藤VS藤本の勝者が挑戦者決定戦に進出することになった。
19時21分、渡辺九段が勝ち名乗り。終始うまく攻めて、快勝だった。
その11分後、森内九段勝ち。完璧な指し回しで、西川六段の攻めを切らした。
さらにその2分後、藤本五段が投了。斎藤八段の紅組優勝が決まった。
さあ、残るは羽生VS飯島戦である。形勢は相変わらず羽生九段がよく、現在はザッと銀得である。しかし飯島八段も馬を2枚作って粘っている。
羽生九段、飛を捨てて飯島玉に必至を掛けた。でもなんだか無理やり寄せに行ったようで、もう少し安全な寄せ方はなかったのかと思う。いやむろん、これで羽生玉が詰まなければよい。だけど、本当に詰まないのか?
飯島八段、天王山から飛車打ちの王手。飛車は敵陣から打つものと思っていたから、驚いた。
だがこの飛車を取れば詰むようで、羽生九段は玉を逃げる。と、飯島八段はさらに金捨て。20時33分、ここで羽生九段が投了したから驚いた。即詰みなのだ。
すなわち、この金は玉で取るよりないが、続いて竜で王手されたとき、合駒が悪い。持駒の金、桂、どれを合いしても、綺麗に詰んでしまう。それには2七の歩が一役買っていて、まさかこの歩が詰みに働いてくるとは思わなんだ。まさに勝ち将棋鬼のごとしである。
いやはや、飯島八段、劣勢の将棋を逆転勝ち。これで羽生九段との対戦成績は3勝3敗になったそうで、とんだハブキラーがいたものだ。飯島八段は、強いんだか弱いんだか、分からない。
ということで、最終的な結果は

<紅組>
優勝=斎藤慎太郎八段 4勝1敗
残留=佐々木大地七段 3勝2敗
佐藤天彦九段 3勝2敗
藤本渚五段 3勝2敗
豊島将之九段 1勝4敗
石井健太郎七段 1勝4敗

<白組>
優勝=渡辺明九段 4勝1敗
残留=羽生善治九段 3勝2敗
木村一基九段 3勝2敗
森内俊之九段 3勝2敗
飯島栄治八段 1勝4敗
西川和宏六段 1勝4敗

となった。紅白とも、まさかのプレーオフなしで、スンナリ決着した。これはやっぱり、羽生九段が負けたことが大きい。羽生九段のあんな逆転負けは、初めて見た気がする。これを加齢からくる衰えと見るべきなのか、会長職による疲れと見るべきなのか。今後の推移を見守りたいところである。
挑戦者決定戦は30日。どちらが挑戦者になってもよい。
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