おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
私が20年前に監訳した、アドラーの通訳を務めた精神科医のW.B.ウルフ著の『どうすれば幸福になれるか 上』(一光社、1,500円+税)の第1章は、いきなり「人は人生に対する基本的態度として3つの選択肢を持っている」から始まり、次の3つを紹介します。
1.植物のカブの哲学で生きる方法
2.人生を1つのビジネスと考えて生きる方法
3.芸術家のアプローチ方法
第1の「植物のカブ」は、日本語に馴染まないので、私は「根無し草」として捉えた方がわかりやすいと思います。
この場合の人生の中身は、生まれる、飲み食う、眠る、成熟する、友だちになる、年を重ねる、死ぬといった単純なことばかりで、目的もなく、ただこの世の問題に邪魔されずに満足して過ごす、人間として最低レベルで生育する哲学です。
第2の「人生をビジネスと考えて生きる方法」は、成功した人たちの多くに見られる生き方で、人生をビジネスと割り切って考え、それに基づいて行動や態度を決めていく生き方です。
このタイプの人たちがいつも最初に発する質問は「どんな利益が得られるか?」で、新しい経験に対しては「これは自分にとってどれだけ価値があるか?』をまず考えます。
彼らの人生哲学は、基本的にアグレッシブな競争と個人の能率を重視するため「力は正義なり」の信念と結びつきます。
ウルフは、1931年に書いたこの本で「人間の生活にこのシステムが適用されると、障害者や不具者が生まれ、依存関係もでき上がる。犯罪、堕落、精神障害を引き起こし、その損害は勝者にも敗者にも同じようにのしかかる」と警告しています。
そして、1.の「カブ人間」と共に「ビジネス的生き方」を次のように断罪しています。
「人ととして幸せになろうとするなら、カブ人間のような穏やかな目で人生を眺めていてはいけない。もちろん、アグレッシブで利己的なビジネスマンの貪欲な目でも駄目だ」
カブ人間のような穏やかな目でもなく、アグレッシブで利己的なビジネスマンの貪欲な目でもない芸術家のアプローチ方法については、次回に私見も交えながらお伝えします。
<お目休めコーナー> (18)
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