おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
夏休み中に『臨床ユング心理学入門』(山中康裕、PHP新書、絶版)を読んだので、「ユングからアドラーが見えてくる」シリーズの11回目(番外編)を書きたくなりました。
今までの10回は、2016年に書いていて、次のとおりです。
1回目 9月17日
2回目 9月18日
3回目 9月24日
4回目 9月27日
5回目 9月30日
6回目 10月1日
7回目 10月4日
8回目 10月5日
9回目 10月12日
10回目 10月21日
著者は執筆当時京都大学教授で精神科医の山中康裕氏。
河合隼雄先生との出会いによって「臨床ユング心理学」の世界を深めていったようです。
そこに至る臨床ユング心理学への道(序章)と共に、臨床ユング心理学の歴史(第1章)、ユング心理学の基礎(第2章)、ユングの個性化の過程(第4章)、臨床ユング心理学の実践(第5章)、臨床ユング心理学の未来(終章)の展開になっています。
ただ、臨床ユング心理学の実践(第5章)は、「別にユング心理学でもないだろう」という気がしないでもありませんが、「症例『尾原緋沙子』」は面白かったです。
この本の全体を紹介するつもりはありませんが、「コンプレックス」のことは、アドラー心理学で「劣等コンプレックス」として使われていますので、この本のP.60~63をもとに紹介させていただきます。
・コンプレックスという語を初めて用いたのはツィーエンという心理学者。
それをユングがフロイト(「エディプス・コンプレックス」として使った)とアドラー(「劣等コンプレックス」)の影響を受けながら自らの理論に取り込んで現在用いられるような意味になった。
・ユング心理学におけるコンプレックスは、正確には「感情に色づけられた心的複合体」と訳される。
ある概念を核にした、「好き」とか「嫌い」といったある1つの感情の価値によって吸い寄せられてつながっている観念の複合体のことを指している。
・アドラーの「劣等コンプレックス」(著者の表記では「劣等感コンプレックス」)とは、権力に対するマイナスの力で、自分より力を持つ者、自分より優れた者との関係が生じた時の「自分は劣っている」という感情体験の積み重ねによってどんどん膨らんでいき、その結果として神経症という事態が醸成されると考えた。
・しかし、アドラーは後に精神医学を離れ、この劣等コンプレックスの克服の方法を教育に求めるようになった。
この考えがコンプレックス=劣等コンプレックスというマイナスの印象の理解が広まった。
・ユングにおけるコンプレックスの概念の特徴は、コンプレックスそれ自体にはプラスの価値もマイナスの価値も付与されていないヴァリュー・フリーな概念で、コンプレックスをネガティブな意味から解放したのがユングである。
・しかし、そのコンプレックスは、特定の感情体験を繰り返すことによって、とどまることなく膨れ上がって、自我を脅かすくらいのエネルギーが集積してくると、自我は脆弱化し、そのまま神経症現象を引き起こすことになる。
いかがですか?
アドラー心理学の「劣等コンプレックス」、また、「コンプレックス」そのものがよくわかりませんか?
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