アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリング、コンサルティングを行っています。
アドラー心理学による勇気づけ一筋40年 「勇気の伝道師」   ヒューマン・ギルド岩井俊憲の公式ブログ



おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。

これも夏休み期間中に読んだ本。

『アドラーをじっくり読む』(岸見一郎、中公新書ラクレ、800円+税)

アドラーをじっくり読む
(中公新書ラクレ)
岸見 一郎
中央公論新社

私は岸見さんの単著が好きです。

対話本の『嫌われる勇気』や『幸せになる勇気』は対談者や編集プロデュ―サーによって、岸見さんの哲学者の魅力が引き出されるけれど、一方で「トラウマは、存在しない」(これはアドラー心理学の定説ではない)、「わたしにとってのアドラー心理学とは、ギリシア哲学と同一線上にある思想であり、哲学です」(これは、あくまでも岸見さんの個人的見解)とか、「共同の課題」のない「課題の分離」など、アドラー心理学が誤解されやすい勇み足が見られます。

単著の場合、岸見さんの言葉、あるいは執筆なので、自制心が働いているように思われます。

岸見さんの思いは、「まえがき―誤解だらけのアドラー心理学」で発揮されています。

「5つの誤解」について書いています。
ただ、「正しく理解するための方法」の2つについては、私には、上の「勇み足」と同じような感覚を生じました。
これで正しく理解できるとは思いません。

やや粗雑な部分も数か所ありました。
ただ、私のこだわり過ぎかもしれません。

・アドラーの妻がウィーン大学に留学していた(その事実はなく、実際はチューリッヒ大学に3学期間通っていた)。」
・『子どものライフスタイル』がウィーン時代に書かれた(実際は1930年にニューヨークで)。
・ナチズムの台頭と共に、ユダヤ人の迫害を恐れて1926年から27年の冬にかけてアメリカへの定期的な旅行を始め、次第に活動の拠点をアメリカに移していった(ヒトラーが政権を握ったのは1933年であって、1926年当時はドイツ国籍すら持っていなかった)。


ともあれ、何よりも私は、岸見さんがアドラーのほとんどの本を地道にアルテの市村社長とのコンビで世に出したことを高く評価しています。

この地道な努力がなければ、アドラー心理学の今日の隆盛を支えることができなかったと思っています。

その地道な努力の成果であるアドラー自身の本をじっくり読み解けるようになるように意図して書かれた本が、この『アドラーをじっくり読む』です。

しかし、厳密に書くと、個々の文献紹介ではありません。

ほとんど内容に触れられていない本もあれば、数か所で触れられている本もあります。

それは、どうでもいいことで、『アドラーをじっくり読む』は、アドラー自身の11冊の本に岸見さんがアドラーの言葉をもとに編集した2冊の本のガイドになるべき本です。

『アドラーをじっくり読む』をきっかけにアドラー自身の本を手に取る人が増えれば幸いです。

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