見もの・読みもの日記

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初期伊万里/サントリー美術館

2004-11-06 00:27:14 | 行ったもの(美術館・見仏)
○サントリー美術館『初期伊万里展-染付と色絵の誕生』

http://www.suntory.co.jp/sma/japanese/index.html

 今年は陶磁器をずいぶん見た。いい展覧会が多かったためだと思う。この「初期伊万里」は、これだけ単独の企画だったら、行かなかったかもしれないが、先立って、出光美術館の「古九谷」展を見て、「古九谷・古伊万里論争」があることなど、新知識を仕入れたばかりだったので、早々に足を運んでしまった。

 「初期伊万里」の中でも早期の、1610~1630年代の作品は、白磁に藍の染付がほとんどである。中国磁器の影響を強く受けたということだが、う~ん、中国磁器って、もっとシャープな文様が主じゃなかったかしら。初期伊万里を見て、素人にも分かる特徴は線のやわらかさである。

山水図は、遠近法が上手くないためか、雲や霧に隠れているはずの遠くの山が、山頂だけ、宙に漂っているように見える。ルドンとか、近代ヨーロッパの幻想絵画のようだ。植物も動物も、龍も獅子も、子供の悪戯書きみたいにたどたどしく、そこが魅力になっている。

 1630~1640年代になると、肩の力の抜けた味わいを保ちながら、デザインが洗練され、2つ以上の釉薬を組み合わせるなどの技法も用いられるようになる。

 そして1650年代になると、古九谷でいう「青手」作品が登場する。初心者の私は先後関係がよく分からないので、とりあえず図録を買って帰って、「古九谷」展の図録と並べてみた。そうすると、九谷の1号窯の開窯は1955年頃だという。ふーん、そうすると「古九谷」のほうがおそいのかな?

 デザインは「初期伊万里」展に出ている作品のほうが、やや「手が込んでいる」という印象を受けた。「古九谷」は、海老なら海老、瓜なら瓜という実体を、ガツンと即物的に描いている、その大胆さが魅力だが、「伊万里」の場合は、配色やデザインに対して意識的である(双蝶文とかね)。それから「伊万里」のほうが皿が深いように思った。いや~でも微細な差異だなあ。見分けがつかないものもあるし。そもそも見分ける必要もないのかしら?

 もともと私は仏像から古美術趣味に入り、仏画から一般絵画に開眼した。どうやら、今度は、陶磁器という新しい分野に踏み込みつつある。なお、この「初期伊万里」展の監修者のおひとりは、出光博物館の学芸員の荒川正明さんだった(「古九谷」展と同じ)。今後もしばらくお世話になりそうなので、お名前を覚えておこう。
コメント
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