見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

秋篠寺の技芸天

2004-11-22 00:33:06 | 行ったもの(美術館・見仏)
○秋篠寺(奈良市秋篠町)

http://www1.sphere.ne.jp/naracity/j/kan_spot_data/w_si52.html

 久しぶりである。高校の修学旅行で1度、大学時代に1度、もしかするとその後は20年あまり来ていなかったかも知れない。実は去年の秋、大和西大寺の駅から、思い立って、地図もなしに、記憶と方角だけをたよりに秋篠寺に向かったのだが、結局、到達できずに日が暮れてしまった。

 今年はそのリベンジなので、きちんと観光地図で確認し、西大寺駅前からバスに乗った。秋篠寺の東門に着く。門の中は鬱蒼とした木立ちが続き、なかなか建物が見えない。こんな境内だったかしら?と古い記憶を手繰り寄せているうち、拝観受付に出る。森の中に浮かぶ島のように、ぽっかり開いた空間に、簡素な本堂が建っていた。

 すっきりした瓦屋根が美しくて、しばらく建物に見とれる。本堂の中も、装飾の少ない、簡素な造りで、技芸天は、端の方につつましく立っておられる。頭部は天平の乾漆だが、体部は鎌倉の寄木造りだそうだ。そうか。そう言われてみれば、頭部と体部には、かすかな違和感がある。不快なほどの違和感ではなくて、何か、異なる旋律が調和して奥深いハーモニーを作り上げているような。

 いろんなことを想像するな。たとえば、この美しい天平の頭部を渡されて、これに合う体躯を補作せよと命じられた鎌倉の仏師がいたとしたら。何のほとけかも分からない頭部に、やや首を傾げ、前傾した姿勢と自由なポーズを与え、「技芸天」の名を与えたのは彼の仏師だったかもしれない。なんてね。

 帰りは南門を出て、西大寺駅まで歩いて戻った。「歴史の道」という道標をたどっていくと、新興住宅地の間に細い道が残っていた。むかしは田んぼの間の畦道だったはず。観光客も住民も車を使うのだろう、歩いている人には会わなかったが、まだ道が残っていることが嬉しかった。
コメント
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