見もの・読みもの日記

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建築の中国/JA

2004-11-05 08:43:23 | 読んだもの(書籍)
○雑誌「JA」Autumn, 2004『Works of Japanese Architects in China - 中国に建つ日本人建築家の作品』

 「中国の建築」というより、「建築の中国」。いっそ、そう呼びたくなるくらい、中国では建設ラッシュが続いている。なぜ建築ラッシュが続くのか、その裏にある中国の経済状況、歴史文化的背景については、本書の冒頭で、数名の専門家が分析を行っている。

 素人が今の中国に行って驚くのは、SF映画の中で見たような、巨大で未来的なフォルムの建築が、実体化していることの凄さである。省都クラスの地方都市なら、必ずと言っていいほど、奇想の博覧会のような建築現場に突き当たる。時には聳え立つ世界樹のような、時にはひしゃげた宇宙船のような...とにかく何でもありなのだ。君たち、四千年の伝統にトリビュートする気持ちはないのか!?と、愛国者さながら(?)憤激を禁じえないこともある。

 しかし、実は近年、中国のモニュメンタルな建築は、ほとんどが国際コンペによって設計者を決めており、日本人建築家の作品も相当数入っているという。初耳だった。

 本書によれば、国家の威信がかかる(のではないかと思う)北京のオリンピック公園計画、あるいは、国会図書館関西館も顔負けのデジタル国家図書館、蘇州市水族館、天津博物館、北京市金融街中心区など、全て日本人建築家の作品なのだ。文革時代の混乱が尾を引いて、いま、働き盛りの建築家が育っていないという理由はある。しかし、この中国建築市場の開放性は驚くべきものではないか。

 一方で、中国は、国内の建築家の育成にも力を注いでいる。その代表格が、清華大学、同済大学など、建築学科を持つ有名大学で、それぞれ大学に設計院を持ち、建築学科と一体となって設計活動を行っているという。

 建築家の千田満氏は、これと比較して、日本の国立大学の惨澹たる現状を憂い、「キャンパス整備をそれぞれの大学で自立的に行えなくて、競争力がもてるだろうか」「日本は85%公共施設の発注を設計入札で行っている。お金の多寡で設計者を選んでいる国はまったく創造性を喚起しない」と断じている。この意見、聴くべきであろう。

コメント
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