見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

清代出版うらばなし/紀暁嵐3

2005-07-24 00:48:31 | 見たもの(Webサイト・TV)
○48集電視連続劇 《鉄歯銅牙紀暁嵐3》

http://ent.sina.com.cn/v/f/jxl3/index.html

 清朝盛期を舞台にした古装劇。スカパーで日曜日の夜に2話ずつ放映されている。期待どおり面白いので、ビデオに録って、毎週2回ずつ見ているが、飽きない。

 7、8話でひとつのストーリーが完結する形式で、いま、第2単元に入った。第2単元では、当代の名士・紀暁嵐の贋者が現れ、出世のチャンスをうかがっている地方官たちの間をまわって、乾隆皇帝の御製詩集を出版するための出資を持ちかける。詩集に協力者として名前が入れば、皇帝の覚えもめでたいはず、と思って、詐欺師の罠にはまる官人たち。「これで貴方は”副編集”、あといくらいくら出せば”総編集”にもなれますよ」と囁かれ、嬉々として小切手を切ってしまう。

 うーむ。私は漢籍の目録の取り方を聞きかじったことがあるのだが、たとえ書物に「○○○編集」という人名が入っていても「実際に編集にかかわったと思えない人名は採用しない」というルールの裏には、こういう事情があったのか! 妙に納得。

 でも、日本では、こういうこと、無いんじゃないでしょうか。書物の編集者や監修者になることが名誉だという考え方、まして、その権利をお金で買おうという習慣は、あまり聞かないように思う。

 さて、本物の紀暁嵐は、皇帝の密命を受け、故郷・河間府の「密偵」にやってくる。知事の愈大人は、公金を横領してひそかに蓄財に励んでいる疑いがある。その証拠は、愈大人の書斎に無造作に積まれた古書の数々。紀暁嵐先生、今シリーズの相棒、聡明な陸姑娘を試してみる。「『儀礼』の最も高価な版本は?」「1つは厳州本、もう1つは景徳官本」「その2種類ともここにある」。さらに陸姑娘は、そこらの書物を手に取ってみて「これは唐代写本の説文解字!」「こっちは元相台岳氏本孝経!」と驚く。

 なんとまあ、娯楽時代劇にしては、ペダンティック(学術的に正しいかどうかは置いといて)じゃないか、と思った。どうなんでしょ? よく知らないけど、日本の時代劇、たとえば「水戸黄門」で、これは藤原定家の小倉色紙!こっちは公任筆の古今集!なんて場面はあるのかしら(日本の場合、「出版」が成立するのが遅いから、筆写者の有名度が尺度になってしまうんだな)。

 ちなみに「(元)相台岳氏」は中国の歴史上有数の蔵書家らしい(中国語Googleで調べてみました)。ドラマでは、このあと、墨、筆、紙などの文房四宝に話が及ぶのだが、それにしても、中国の歴史と文化が、いかに書物と切っても切れないかが垣間見えて面白かった。

■北京ニーハオ:紀暁嵐故居 有料に(2005年7月5日)
http://www.bjnihao.com/cjk/show.php3?id=912
次回、北京に行ったら、訪ねてみたいと思っているのだが、この夏、機会はあるかしら。

■紀曉嵐全傳(熾天使書城)(中国語)
http://www.angelibrary.com/real/1/index.html
ネットで読む小説サイト。中華圏ではすごく盛んらしい。そのうち読んでみようと思うので、ここに掲げておく。
コメント
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