○小谷野敦『帰ってきたもてない男:女性嫌悪を超えて』(ちくま新書) 筑摩書房 2005.7
『負け犬』(続編)の後に『もてない男』(続編)というチョイスもどうかと思うが、実際、書店の棚で、両者が微妙な距離をおいて並んでいるのを見たときは苦笑してしまった。なんだかな、このニッポンの状況。
どうかと思うといえば、「もっともてなくなって再登場!」というオビの宣伝文句。だって小谷野さん、結婚なさったはずじゃ、と思ってページをめくってみたら、表紙の見返しの内容紹介に「ついに、あの男が帰ってきた! 一度は結婚し、裏切り者呼ばわりもされたが、今また、独り身になり、より弱気になって帰ってきた。」って...ひえ~そうだったのか!
実は最近、本書とは全く無関係に、職場で『もてない男』が話題になり、「読みたい」という同僚が現れたので、「あ、それなら貸してあげる」と請け合って、久しぶりに書棚から引っ張り出したばかりである。1999年1月刊行で、その年のうちに10万部を刷ったというが、私が持っているのは初刷である(ちょっと自慢)。あれから6年も経つかあ、と感慨深く思っていたところだ。
その後も小谷野氏の著書はいくつか読んでみた。『もてない男』に先行する著作で、具体的な文学作品を論じた『夏目漱石を江戸から読む』や『「男の恋」の文学史』は面白いと思ったけれど、その後の身辺エッセイやライト恋愛論の類は、あまりパッとするものがなくて、最近は読み控えていた。
というわけで、著者とは久しぶりの再会である。腹を括って『もてない男』の続編をうたっただけのことはあり、正編(?)に横溢していた「切れのよさ」を彷彿とさせて、うれしい。やっぱり、この手の本は、著者に身を切る覚悟がないと面白くない。本書には、テレクラ、出会い系サイト、そして結婚情報サービス(会社の実名入り)のリアルな体験談が綴られていて、非常に興味深かった。
著者も言うように、30代後半・未婚で書いた正編と、40代・離婚歴ありで書いている続編には、微妙なトーンの差がある。これは結婚経験の有無よりも、年齢の差から来ているように思う。自分のまわりに鑑みても、30代後半というのは、いまの日本(都会)では、ギリギリ「晩婚」を笑って語れるラインだが、さすがに40代に入ると、結婚するもしないも、もう個人の自由、という段階に入って、周囲の扱いもソフトになるので、本人もいくぶん楽になるのではないか、と思う。
著者はあいかわらず「才色兼備」の女性が好きだ、と言い放つのだが、これって、”負け犬”酒井順子さんの「つまらない男は嫌い」と、ちょうど対をなしているように感じた。
しかし、著者のように「もてない=恋愛(結婚)できない」ことにこだわる男性って、もはや少数派なんじゃないだろうか。著者ぐらいの怨念と執心があったら、そのエネルギーで1回くらいは結婚できそうなものだが、それもない(ように見える)男性のほうが、実際、私の周囲には多いのだけど。
『負け犬』(続編)の後に『もてない男』(続編)というチョイスもどうかと思うが、実際、書店の棚で、両者が微妙な距離をおいて並んでいるのを見たときは苦笑してしまった。なんだかな、このニッポンの状況。
どうかと思うといえば、「もっともてなくなって再登場!」というオビの宣伝文句。だって小谷野さん、結婚なさったはずじゃ、と思ってページをめくってみたら、表紙の見返しの内容紹介に「ついに、あの男が帰ってきた! 一度は結婚し、裏切り者呼ばわりもされたが、今また、独り身になり、より弱気になって帰ってきた。」って...ひえ~そうだったのか!
実は最近、本書とは全く無関係に、職場で『もてない男』が話題になり、「読みたい」という同僚が現れたので、「あ、それなら貸してあげる」と請け合って、久しぶりに書棚から引っ張り出したばかりである。1999年1月刊行で、その年のうちに10万部を刷ったというが、私が持っているのは初刷である(ちょっと自慢)。あれから6年も経つかあ、と感慨深く思っていたところだ。
その後も小谷野氏の著書はいくつか読んでみた。『もてない男』に先行する著作で、具体的な文学作品を論じた『夏目漱石を江戸から読む』や『「男の恋」の文学史』は面白いと思ったけれど、その後の身辺エッセイやライト恋愛論の類は、あまりパッとするものがなくて、最近は読み控えていた。
というわけで、著者とは久しぶりの再会である。腹を括って『もてない男』の続編をうたっただけのことはあり、正編(?)に横溢していた「切れのよさ」を彷彿とさせて、うれしい。やっぱり、この手の本は、著者に身を切る覚悟がないと面白くない。本書には、テレクラ、出会い系サイト、そして結婚情報サービス(会社の実名入り)のリアルな体験談が綴られていて、非常に興味深かった。
著者も言うように、30代後半・未婚で書いた正編と、40代・離婚歴ありで書いている続編には、微妙なトーンの差がある。これは結婚経験の有無よりも、年齢の差から来ているように思う。自分のまわりに鑑みても、30代後半というのは、いまの日本(都会)では、ギリギリ「晩婚」を笑って語れるラインだが、さすがに40代に入ると、結婚するもしないも、もう個人の自由、という段階に入って、周囲の扱いもソフトになるので、本人もいくぶん楽になるのではないか、と思う。
著者はあいかわらず「才色兼備」の女性が好きだ、と言い放つのだが、これって、”負け犬”酒井順子さんの「つまらない男は嫌い」と、ちょうど対をなしているように感じた。
しかし、著者のように「もてない=恋愛(結婚)できない」ことにこだわる男性って、もはや少数派なんじゃないだろうか。著者ぐらいの怨念と執心があったら、そのエネルギーで1回くらいは結婚できそうなものだが、それもない(ように見える)男性のほうが、実際、私の周囲には多いのだけど。